勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─ 作:一般指揮官
…R-18も書いてみたいとは思うのですが…オリ主のムーア大尉が硬派すぎまして…「そういう色っぽい展開」が想像出来ませんので書けないというセルフ矛盾…
日の出と共に目を覚ましたメティス分隊の面々が起き上がるのを横目にムーアは夜間の歩哨で使用し、そのままヘルメットへ着けっぱなしだった暗視眼鏡を取り外した。
それを背嚢の中へ収め、何気なく顎へ手を伸ばして擦ると手の平に伸び始めのザラザラとした髭の感触を捉える。顎髭だけでなく口周りも似たようなモノだ。
電気シェーバーも持って来てはいるが、彼はどちらかと言えばカミソリ派である。水の確保が難しい乾燥地帯、或いは水が凍り付く寒冷地帯では電気シェーバーの方が役立つのだろうが幸いにもまだそれほど伸びてはいないようだ。
任務が長引くようであれば使おうと考えつつ彼は朝食のカロリーバーの包装を破いて咀嚼を始めるが──単純に髭を剃る過程が面倒臭いというだけの無精であるのは言うまでもない。
「──この橋…全員で渡れるの?」
不安げなアニスの声が崖の縁で響いたのは野営地から出発して1時間が経った頃だ。
野営地を発ち、30分も経たずに接近するラプチャー数機を捉えたウンファが携えた狙撃銃で的確に
それは構わないのだが、シフティーのナビゲーションに従って進んだその先で見付けてしまった橋──完成した当初は太い鉄筋やそれを覆うコンクリート等の資材で造られ、しっかりとした構造だったのだろう。しかし経年劣化によって表面の大部分が剥離し、内部の鉄筋が露わとなっている。
〈…えっと…一応、データ上では20年前に造られた橋となっていて、貨物車両の主な移動路として利用されていたそうです〉
「…20年前…」
〈はい。…ニケ9機と指揮官の体重を考えますと…ちょっと危なそうですから、分けて渡ることをお勧めします〉
「…確かに劣化はしているが車両が通過していたんだろう?間違いなく
風雨に晒されながら20年もまともな整備もなしだ。むしろ良く持ち堪えているのだろう。
それはそうと、彼はシフティーからの勧めを聞いて思わず彼女達へ視線を向けた。
仮に、
「個体毎の差はありますが、一般的には──」
「待ってぇ!それは言わなくても良いと思うな〜!」
「…まぁ無理に言わなくても構わんが…」
律儀に答えようとするラピをエマが慌てて止める。それを眺めるムーアもこれ以上は聞かない方が得策であろうと察した。北部での任務の際、シフティーに注意されていたことを思い出したのだ。
やはり質量的には彼女達の中で長身のエマが一番──などと彼が考えていた矢先、マクスウェルが声を上げた。
「先に渡って。アブソルートとカウンターズの皆さん」
「…そこは先に渡るものじゃないのか?」
やけに柔らかい声音で彼女が先を促すのもあってか、何かしらの思惑でもあるのかと不信感が芽生えたムーアが口を動かす。
「行けと言ったら行け!ごたごた言うな!言う通りに──」
「…俺はキミの部下じゃないが?」
「…それもそうか」
ドレイクがマクスウェルに同調し、命令口調のまま先へ進むよう強制するのだが、彼の低い声音と溜め息で紡がれた正論に納得する様子を見せた。
「そう言わずにさ、先に行ってくれない?」
苦笑しながらマクスウェルが尚も促すが、舌打ちを一発響かせたウンファが渋る理由を答える。
「尾行なんかする奴等を後ろに残したくない」
「しない、と信じたいが
ニケがニケを、そして人間を攻撃することは
特に顕著な不信感を醸し出すウンファとマクスウェルの間で睨み合いが発生しかけていると察したのか、小柄な人影が──メティス分隊のリーダーであるラプラスが割って入って来るや否やムーアとウンファを見上げた。
「──ストップ!そこまでだ!私達が先に渡ろう!ヒーローなら当然、力なき者達のために先頭に立って危険に立ち向かうべきなのだ!」
その言に身長差があるムーアとウンファ、両分隊を率いる立場の双方が顔を見合わせる。
互いの視線は「まぁそれなら構わないだろう」と物語っていた。
「…分かった。じゃあ私達が先に渡るよ。その代わり──」
溜め息と共に頷くマクスウェルだが、そのターコイズブルーの瞳がムーアを貫いた。
「──ムーア大尉と一緒にね」
「は?なんで?」
「師匠も?」
マクスウェルの放った
「……
「察しが良くて助かるよぉ。──だってあなた達が私達を裏切るかもしれないでしょう?」
こちらも同じなのだ、と言わんばかりの態度でマクスウェルがアニスやネオン、そしてアブソルートの面々へ視線を向ける。
名指しされたムーアは、それも道理か、と一定の理解を示しつつ煙草を銜えてオイルライターの火を点けた。
「…わ、私達はそんな卑怯なことは…しないわ」
「うんうん。ベスティーは絶対そんなことしないよね。でも──そうじゃない子もいるから」
頬を膨らませ、心外を表現するベスティーをマクスウェルは微笑ましく頷いて肯定するが、ややあってウンファへ視線を向ける。お前に言っているのだ、と言外に語られた彼女が舌打ちを響かせた。
「…分かった。俺も一緒に渡ろう」
「──反対です」
銜えた煙草から紫煙を燻らせる彼が頷いて同行を承諾するも、直ぐにラピが紅い瞳で見上げつつ異を唱える。
「…大丈夫だ。おそらく…彼女達も
「ですが…いえ、分かりました。では私も同行します」
「…保険が増えるが…構わないな?」
「はいはい。どうせ3人でも4人でも一緒でしょう?」
御勝手に、とマクスウェルが頷いた。
彼とラピがメティス分隊に同行して橋を渡ることが決まるとカウンターズの残った2名が不安げな様子を見せる。
「…大丈夫かな?」
「念のため。でも大丈夫でしょう」
「…あの様子だ。後ろめたい何かをするつもりは毛頭ないんだろう」
「師匠、気を付けて下さいね」
「──さぁ、涙ぐましいお別れはそこまでにして…行こうか?」
分隊で固まって話し合う彼等へ歩み寄ったマクスウェルがおもむろにムーアの左腕へ自身の右腕を絡ませたかと思えば、無理矢理に彼女達から引き離した。
「…俺を盾にせんでも…彼女達は後ろから撃つことはないぞ」
「念の為だよ。…あ、それとムーア大尉が高いところが怖いかなぁ、と思って腕を組んであげてるだけ」
「…必要ないから離してくれ」
生憎とムーアは高所恐怖症ではない。腕を組んで来るマクスウェルを振り払い、銜えた煙草を左手の指先で挟んで口元から取り除くと吸い込んだ紫煙を吐き出した。
橋の全長は1kmほどだろうか。良くもまぁラプチャーが跋扈する地上へこれだけの架橋をしたものだ、と彼は感心してしまう。
橋の上から下を覗き込むと──
「…落ちたら流石に死ぬな」
高所恐怖症の類ではないが、足が竦む高さ、とはこのことを言うのだろう。
紫煙を吐き出し、横風にそれが煽られて持ち去られる中、彼は短くなった煙草をしっかり携帯灰皿へ投げ込んで再び進み始めた。
道中は全く問題なかった。それこそ不気味な程に。或いはその不気味さは──これから起こるアクシデントの予兆だったのかもしれない。
「──良し、渡り切ったね」
橋をメティス分隊の3名、そして彼とラピが渡り終えたことを認めたマクスウェルがひとつ頷いて対岸で見守っていた彼女達へ向けて大きく手を振る。渡るように促す合図だったのだろう。
アブソルートやカウンターズもその合図を視認して橋を渡ろうとした時のことだ。
「──うむ!?この気配は…!」
「──ん?──対空戦闘!!」
ラプラスが上空へ視線を向けるのと同時にムーアも空を仰ぎ見る。
細かい砂の粒子が舞い上がっているからか黄色くも見える空に
となれば──飛行型のラプチャーである。
携えた突撃銃の安全装置を外し、彼は空へ向けて何発か発砲した。
明らかに射程外である。対空射撃が目的ではなく、橋を渡ろうとしていた彼女達へ警告を発して戻るよう促す為の発砲だ。
おそらくは目が良いウンファが気付いたのだろう。1/4も渡り切っていなかったのもあり、全員を連れて対岸へ戻って行く姿が遠目からも窺える。
「──ここは
青藍の瞳を輝かせ、敵機を捕捉したラプラスが
仮面が彼女の顔を覆い、身体の至る所へ青い装甲が貼り付いた。手には小柄な身体には似合わない大振りの──おそらくは
「──そこだ!!」
雷の稲光のような放電が宙へ幾筋も浮かび上がる中、ラプチャーに向けられた砲口から金色の閃光が一直線に放たれた。
その一閃は的確に接近しつつあった敵機を逃さずに撃墜し、閃光で消失しなかったラプチャーの残骸が黒煙の尾を引きながら墜落してくる光景がムーアの視界へ入る。
「…敵機撃墜を確認──ん?」
撃墜された敵機の残骸が向かう行き先、それは今しがた渡って来たばかりの橋である。
その残骸が黒煙の尾を引きつつ見事に橋へ激突した瞬間──爆発が起きた。
──ラプチャーの武装が残骸として落下して来たのかも知れない。
などと冷静にムーアが考えていた矢先、経年劣化で傷んだコンクリートの表面へ大きな亀裂が走り、続けて橋全体が大きく
そこからはあっという間である。橋桁が受けた衝撃に耐え兼ねてひしゃげる。崩落を始める橋桁に続き、橋そのものも轟音を立てつつ崖下へ消えて行ったのだ。
「……」
「……」
ムーアとラピが眼前の光景を──双方とも珍しいことに唖然としてか無言のまま見詰める真横ではマクスウェルが両手で髪を掻き毟りつつラプラスへ怒鳴り声を張り上げている。
「あなた!頭おかしいんじゃないの!?」
「わ、わざとじゃない!」
「素晴らしい!ヘレティックの破片は我々の物という宣戦布告だな!?やはりリーダー!お前を認める!!」
メティス分隊が揃って喧しいが、彼は怒るべきか嘆くべきか判断に迷ってしまう。取り敢えず煙草を銜え、オイルライターの火を点けて一服だ。まずは落ち着くことが先決であるらしい。
「…ラピも吸うか?」
「…いいえ。私は結構です」
「…そうか…」
「…はい…」
精神安定剤の代わりに他愛もない話を振って落ち着こうとしているあたり、ムーアも想定外の
「…もう…!これ…どうしてくれるの…!8kmも回り道をしないと合流出来ないんだよ!?」
マクスウェルには気の毒なことだが、ムーアも手助け出来るような状態ではない。
とはいえ確実なのは──過ぎてしまったことはどうしようもない、という点だろうか。
「シフティー!あっちに連絡して!不純な意図は全くないって!事故だって!」
〈そうしたいんですが…あの…通信回線が指揮官の周りに限定されていて…あちら側に連絡する手段がありません〉
紫煙を燻らせながら彼はポーチのひとつから双眼鏡を取り出すと対岸へ対物レンズを向ける。両分隊とも先程の崩落には巻き込まれておらず、欠員の発生はないようだ。
「…あぁ…だいぶ怒ってるな…」
双眼鏡の視界に映り込む両分隊の彼女達がそれぞれの性格を表すように思い思いの怒りの表現をしているのが良く見えた。
その中で最も過激派なのは──ウンファだろう。その場へ片膝を突き、狙撃銃を構えたかと思えば、引き金を引いて発砲した様子が垣間見える。
間近で弾頭が通過した風切り音が、やや遅れて銃声が響く。
横目を向けると、どうやら彼女はラプラスを狙ったらしい。金髪が何本か宙を舞っていた。
おそらく抗議の意味を込めてだったのだろうが──随分と過激な抗議もあったものだ。不用意に銃声を響かせるのもどうかと思うも、つい先程にとてつもなく
再び双眼鏡を覗き込む彼は彼女達が叫んでいる口の動きに注目した。声こそ聞こえないが、口を開閉する動きや様子で何を言っているかは判別が付くようだ。
「…フザケルナ…ドウシテクレンノ…バカ…もっと過激なことも言ってるな」
「ふふっ…そうか!ははは!愚かな奴等め!ヘレティックの破片は我等、メティスの物だ!!」
「挑発しないで馬──」
「──あ、ヤバい」
ムーアが背後へ向かって駆け出すと同時にラピも続いた。
岩の物陰へ二人が飛び込んだ瞬間、メティス分隊の目と鼻の先でベスティーが発砲した多目的榴弾が炸裂する。
これには
「…こっちに俺達がいると忘れてないか…?」
「…それはないと思うのですが…」
飛び込んだ拍子にズレたヘルメットを被り直しながら彼は物陰から出るとラピへ尋ねる。彼女も自信なさげではあったが。
「こ、これは事故だった!誰も悪くない!」
「あなたが一番悪いんだよ!!」
「…敵機の残骸が橋を直撃するとは誰も想像出来なかったからな。これは……まぁ…仕方ない」
一応は彼もラプラスを弁護するのだが、その口調は残念ながら自信なさげである。
しかし起きてしまった
──攻撃中止。
──事故。
──目的地デ集結。
通信が不可能ならば昔ながらの遣り方が一番だ。
覚えて間もない彼女達が用いるハンドサインだが、教えてくれた基地要員の量産型ニケ達へは後日に改めて礼をしなければならない、と彼は思い至りながら信号を送り終える。
スコープを覗き込んでいるウンファ以外の面々も眼球に盛り込まれた望遠機能を利用して信号を受け取ったらしい。
アニスとネオンが了解の意味を示す親指を立てるハンドサイン──いわゆるサムズアップで応えた。
「…良し、移動しようか」
「…ありがとう…助かったよ」
「気にするな。…いや、少しは気にして欲しいかもしれんな…まぁいい。──シフティー、ナビを頼む」
ハウジングの奥からオペレーターの了解が返ってきた。メティス分隊と行動を共にすることに一抹の不安はあるが、そうも言っていられない。
双眼鏡をポーチへ仕舞って彼はもう一度、対岸へ視線を向ける。遠目にあってシルエットしか見えないが、アニスらしき人影が手を大きく振っているように見えた。ムーアも左手を振り返してから先へと進み始めたメティス分隊に続いた。
…こうなったら課金しかないかな……やるとしても給料日になりそう…(独り言(なにかあった
それはそうとチャプター14を突破なさった指揮官の皆様も多くなって参りましたね。ムーア大尉があのチャプターでどのような対応をするかは……まぁその内にでも分かると思いますので…グロ注意にはなるのは