勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─   作:一般指揮官

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喧嘩、指導、写真

 

 

 

「──聞いてくれよ兄貴!シュガーの奴、一人でバイクで逃げやがったんだぜ!しかもトンネルで爆発が起きて大変な時に!」

 

「……俺が聞いてた話と違うな」

 

「…は?」

 

「プリムが寝てしまった、とシュガーは言っていた」

 

「はぁ!?テメェ、マジでそう言ったのかよ!?」

 

 前哨基地へ彼が帰って来て3日目。指揮官室には珍しい客達の姿があった。カフェ・スウィーティー分隊のシュガーとミルクである。リーダーのプリムについては前哨基地店へ置いてきたとのことだ。

 

「──ブラックタイフーンに救出機能はないの」

 

「…二人ぐらい乗せられる機能はあったんじゃねぇか?」

 

「──それは可能だわ」

 

「じゃあなんで乗せなかったんだよ!?」

 

「──忙しかったのよ」

 

「ぬがああああ!!!」

 

 シュガーの飄々とした物言い──ああ言えばこう言う、としか表現できないそれへ業を煮やしたミルクが黒髪を掻き毟る。

 

 それを応接用のソファへ腰掛けて眺める彼は随分と回復して来たらしい。顔色も良く、点滴のチューブは既に右腕には繋がっていなかった。纏う服も普段と同じ、戦闘服のパンツに半袖の黒いシャツだ。

 

「…一応、確認するんだが…キミ達は俺の見舞いに来てくれたんだよな?いや、コントを見せてくれるというなら話は別だが」

 

「心外ね、パートナー。──ミルクが勝手に(じゃ)れて来るだけよ」

 

「兄貴…喧嘩売ってんのか?」

 

「…この状態で喧嘩を売る度胸は生憎とないぞ。──まぁ、負けるつもりは毛頭ないが」

 

「おう、表に出ろよ。何回か勝ったぐらいで調子に乗りやがって」

 

「……もう一度、聞くが…本当に見舞いに来てくれたんだよな?」

 

 見舞いの意味がいつの間にか変わっていたのだろうか、と彼は不安を覚えるが──まずそれはないだろう。まぁ喧嘩腰のミルクへ相応に応じてしまったムーアも悪いのだが。

 

 とはいえ、シュガーは彼の様子に内心で安堵した。最後にムーアを見たのは輸送機の機内へ虫の息で搬送される姿である。随分と元気になったモノだ。

 

 ()()()()()()()()疑わしい程に。

 

「…喧嘩は満足に動けるようになってからだ。この有り様の俺と喧嘩して勝っても嬉しくはないだろう?」

 

「…まぁ、そうだけどよ…」

 

「…ナイフファイトもついでに教える。それで勘弁してくれ」

 

「お?マジ?絶対、忘れんなよ!?トレーニングナイフ、用意してっからな!?」

 

「あぁ、約束だ」 

 

「──ダメですよ指揮官」

 

 指揮官室の扉が開いたかと思えば、続いて耳の保養となる優しげな声が彼を穏やかな口調のまま注意する。

 

 青と白を基調にした服を纏った()()()()だ。彼女は両手で持ったトレイへ薬と水が注がれたグラスを乗せて運んで来るなり、ムーアの眼前にあるローテーブルの机上へそれを置いた。

 

「ニケを相手に喧嘩だなんて…怪我が治ったとしても絶対にダメです」

 

「…割と善戦すると思うぞ?」

 

「ダ・メ・で・す。──さぁ、お薬の時間です」

 

 ──甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのは有り難いのだが。

 

 ()()()()()だったが、分隊へ帰って来たマリアンへ対して、若干、過保護が過ぎるのではないか、とムーアは評価を出している。勿論、有り難い限りなのだが──もしやこれが彼女の素なのではないかと彼は考えてしまう。

 

 初任務の際にラプチャーへ発砲し、撃破した後、怒鳴られた記憶が蘇り──然もありなんと言った考えが浮かんだのか彼は苦笑を漏らす。

 

「…どうかなさいましたか?」

 

「いや、なんでもない。──キミに怒鳴られた時のことを思い出していただけだ」

 

「あ、あれは…!指揮官が急に…!そ、それに指揮官も私に怒鳴りました!」

 

「…俺が?…あぁ…ラピが俺に新米だのなんだの言って来て、それにムカついたマリアンが言い返した時か。…謝っただろう?」

 

「そ、そうですけど…!」

 

 ──痴話喧嘩でも見せられているのだろうか。

 

 ムーアとマリアンが交互に言い返す度、視線を二人へ順繰りに向けるシュガーとミルクは思わず埒もないことを考えてしまった。

 

 頬を軽く膨らませながら反論の材料を探すマリアン──総力戦へ参加するに際して提供されたヘレティックの情報とはだいぶ異なる雰囲気だ。とはいえ()()()()()()()()。その事実だけあれば、以前の禍根があろうとなかろうと彼女達は満足である。

 

「──論点をズラさないで下さい!兎に角、ニケと喧嘩なんて絶対に認めません!」

 

「…いや、そんなつもりは…ただの思い出し笑いだったんだが…」

 

 何故そうも頑なに認めてくれないのか。彼は疑問を抱きつつも用意された錠剤を水と共に嚥下する。

 

 点滴の世話からは解放されたが、暫くは投薬が続く。これも中々に面倒臭いのだ。

 

 決まった時間に決まった種類と量を。言うのは簡単だが、これを習慣とするのは苦労するものである。

 

「──パートナー。痴話喧嘩するなら私達はお邪魔だろうから…」

 

「いや、申し訳ない。客人の前で不躾だったな」

 

「いいのよ。そろそろ帰ろうと思っていたから」

 

 ソファに隣り合って腰掛けるシュガーとミルクが腰を上げると、彼も緩慢な動きではあるが立ち上がった。

 

「そうか…大してお構いも出来ず申し訳ない」

 

「いいって。兄貴の顔見れただけで満足だよ。──詳しいことはメッセージで…」

 

「──ダメです!」

 

「…マリアン。一応、言っておくと…ミルクと俺の言う()()は殴り合いとかではなくて…どちらかと言えば…」

 

「トレーニング、が正しいかしら?」

 

「「それ」」

 

 黒髪を持った青年と童顔のニケが同時に頷く。最も正しい表現はおそらくそれであろう。

 

「…トレーニング、ですか?」

 

「主に近接格闘術だが…」

 

「スゲェんだぜ!私とか量産型のニケをぶん投げんだから!」

 

「リハビリも兼ねて身体の動きを戻しておかんと、いざと言う時に困るからな。だから頼む」

 

 頼み込む彼の姿を見たマリアンは前哨基地へ配属──いや、分隊へ帰って来た当日のことを思い出した。

 

 

 

 

「──ここがマリアンの部屋。必要な物があったら言ってね」

 

「ありがとうございます」

 

 傷が開いたかもしれない、と冷や汗を掻きながら口にしたムーアを彼女達は指揮官室へ戻した。実際、僅かだが血が滲み始めていた為、しっかりと処置を済ませ、急遽だがネオンへ看病を任せてからマリアンはアニスに司令部庁舎と隣接した宿舎へ案内された。

 

 彼女へ宛てがわれる居室は広くもなければ狭くもないそれだが、少なくとも困る程ではないだろう。

 

「規則とかは色々あるけど…前哨基地(ここ)には私達の他にも量産型ニケ(スタッフ)の皆もいるから、分からないことがあったら誰か捕まえて聞いた方が早いし、説明は追々にしよっか」

 

「分かりました」

 

「マリアンは基本的に分隊で行動する訳だけど──あ、ラピ。リーダーとして何か言うことない?」

 

 宿舎の廊下に姿を現したカウンターズ分隊リーダーを認めたアニスが声を掛ける。彼女は何をしているのか、と問い掛けそうになったが、その場の雰囲気から宿舎の案内だろうと察しが付いた。

 

「私からは特にないわ。…マリアン、帰って来て嬉しい。指揮官も喜んでいらっしゃるわ」

 

「ラピ、ありがとうございます。また宜しくお願いします」

 

「えぇ。──あぁ、忘れてた。貴女の携帯端末よ」

 

「ありがとうございます」

 

 黒いジャケットのポケットからラピが真新しい携帯端末を取り出し、それをマリアンへ手渡す。以前まで使っていたモデルは異なるが、それほど機能に変化はないだろう。両手でそれを受け取った彼女は改めて礼を告げた。

 

「私の方でblablaのインストールやグループチャットルームへの招待は済ませたわ」

 

「時々、指揮官様もグルチャに入ってくるから気軽に話して良いよ」

 

「指揮官も?」

 

「そうそう。──あ、そうだ。指揮官様で思い出した。注意事項がいくつかあるの。ちょっと待ってね。ファイルを送るから」

 

 アニスが自身の携帯端末を取り出し、ラピが設定を済ませたのに合わせて彼女も登録を行ったマリアンとの個人間チャットへファイルを送信する。

 

 直ぐに着信のバイブレーションがマリアンの携帯端末を震わせる。暗証番号は後で設定しなければならないが、まずは送信されてきたファイルとやらを彼女は開く。

 

 

【指揮官様に関する注意事項】

 

 

 ──これは?

 

 開いたファイルへ銘打たれ、真っ先に認めた文字の羅列にマリアンは首を傾げる。

 

 とはいえ、何かしらの決まり事があるのだろう。彼との付き合いの長さは──これを考えると彼女の胸の中が締め付けられるが、いずれにせよ読んでおかなければならない。

 

 疑問は放置したマリアンは細い指先で液晶画面に映ったファイルをスクロールした。

 

 

 

【その1:目を離すと危険。何かしらの理由を付けて監視すること】

 

 

 

「──って、なんですかこれは!?」

 

「…何って…そのまま?」

 

 歩き始めたばかりの幼子か認知症の老人へ対する扱いじみてはいないだろうか。率直な感想が芽吹いたマリアンが思わずアニスへ尋ねると、逆に不思議そうな様子で返される始末である。

 

「その内、マリアンも分かると思うけど…指揮官様、ちょっと目を離したら()()()()()()()()()だから……」

 

「…あ、あっさり…?」

 

「そう、()()()()

 

 念の為に尋ね返すと、アニスが頷きを返す。念には念を入れたマリアンは分隊のリーダーであるラピへ視線を向けるが──

 

「……ノーコメント」

 

 それはつまり認めている、という意味に他ならない。

 

「…()()あったの」

 

「…そうね」

 

 はぁ、と大きな溜め息がラピとアニスの双方から漏れ聞こえた。

 

 昨夜、M.M.Rでヘレティックであった期間中に彼女自身がどのような行動をしていたか──記憶は曖昧で霞が掛かっている有り様だが、説明を受けたマリアンは酷く狼狽えた。

 

 彼や眼前の彼女達と交戦した結果、ムーアの左腕を搭乗していた機体が放った光線で灼き尽くした──記憶は無いが、説明をした眼鏡を掛けた研究員が嘘を吐く筈もない。

 

 その一連の出来事が、この決まり事の原因となっているのではないか──そう考えたマリアンは表情を曇らせ、手にした携帯端末が潰れるのではないかと思う程、力を込めてしまう。こうでもしないと震えそうになる手を止められないのだ。

 

「……大丈夫?」

 

「…ごめんなさい…」

 

「いいのよ」

 

 ラピの気遣いは決してヘレティックであった頃の行動にいまだ動揺を隠せないマリアンへ対してのそれではないだろう。

 

 それは分かっているが、彼女はどうしても──千の言葉を尽くしても許されないことも理解しているが、どうしても謝罪を口にしたかった。願わくば彼へ対しても。

 

 

 

 

 

【その2:指揮官室のシャワーを借りに行く時は20:00〜21:00の1時間は避けること。絶対に!】

 

 

 

 

 

「──えっと…シャワー?」

 

「あ、うん。宿舎のシャワーなんだけど水しか出ないの」

 

「指揮官にも見て頂いたけど…ボイラーが不調の原因はいまだ不明なのよ」

 

「…それが…何故、指揮官室の?」

 

「温水が出るのが指揮官様の所だけだから」

 

 当然だろう、と言わんばかりにアニスが呆れた眼差しをマリアンへ向ける。何故、呆れられているのかは分からないが──それよりも重要なことがあった。

 

「──ちょっと待って下さい。まさか…貴女達…指揮官がいる部屋でシャワーを…!?」

 

「え、うん?ネオンもだけど…ラピも時々使うよね?指揮官様が警衛に出てる時とか」

 

「……………ノーコメント」

 

 今度はノーコメントを発するまでの沈黙が長かった。沈黙は肯定なのだから素直に認めれば良いものを。

 

「…し、信じられません…!そ、そんな破廉恥な…!まさか指揮官と一緒にシャワーを…!」

 

「──浴びる訳ないでしょう!?マリアン、どんな想像してるの!?」

 

 色素の薄い頬を紅潮させ、動揺もあってか真紅の瞳から放たれる視線を右往左往させるマリアンの脳内では──先日の作戦に露わとなった筋肉質で屈強な肉体(上半身だけ)が再生される。

 

 あの太く雄々しい腕に抱かれたらきっと振り解けまい。温水が降り注ぐシャワー室の中で背後から優しく抱擁され、耳元であの低い声音のまま──

 

「──い、いけません!分隊の風紀が乱れます!」

 

「だからどんな想像してるの!?あなた、そんなキャラだったっけ!?」

 

 想像力豊かなのだろうか。銀色に変わった髪を振り乱しながら頭を左右へ振って脳内に浮かんだ()()()かつ()()な妄想を追い出す作業に彼女は追われてしまう。

 

「そ、それで…何を注意しなければならないのですか?」

 

「あ、うん。…この時間帯に指揮官様もシャワーを浴びるから気を付けて、って話。…うっかり指揮官室に入ると……その……」

 

 アニスが口籠る。どう説明したものか。情景を思い出し──同時に一糸纏わぬ肉体を惜しげもなく晒す彼の湯上がり直後の裸体すらも彼女は思い出してしまった途端、アニスが瞬間湯沸かし器の如く頬を紅潮させる。

 

「…そ、その…指揮官様の…対艦ライフル…」

 

「…指揮官の…え?」

 

「ア、()()は見たくないでしょ!?そういうこと!この話は終わり!!」

 

 口籠りながらも一応は説明を済ませたアニスは次の項目へ進むよう促した。

 

 アニスの説明から概ねを察せられたマリアンは知識として有している男女の身体の違い──その中でも顕著な部位に思い至る。

 

「…つ、つまり…指揮官の…」

 

「…いわゆる男性──」

 

わーわー!!

 

「…アニスは…見たん…ですね?」

 

()()()()()だけ!思い出させないでよ!」

 

 こんな真っ昼間から指揮官とはいえ、彼の特定の部位について話すのは些か宜しくはないだろう。とはいえ彼女達も他意はない筈なのだ。

 

 

 

 

【その3:息を吸うように何処かでニケを誑しているが、これについては諦めること】

 

 

 

 

「…誑し…?」

 

「…無自覚に他のニケ()達の指揮官像を破壊して回ってるから…」

 

「そう、なのですか…?」

 

「指揮官御本人に悪気はないのよ。……たぶんね」

 

 行動を共にする機会が多いカウンターズの面々は慣れたが、特に前哨基地で勤務している量産型ニケ(スタッフ)達は最早、他の指揮官の下で働くことは不可能だろう。間違いなく無意識に彼と比較し、士気の低下を招くに違いない。

 

 非常に由々しき問題だが──改善しようとすると記憶消去ぐらいしか手段がない。お陰で諦める他ないのだ。

 

「時々、指揮官様が量産型ニケ(スタッフ)の娘達と一緒に訓練したり、走ったりしてるけど…慣れてね」

 

「…休憩時間に自販機の周りでジャンケン(RPS)に負けた指揮官が全員に飲み物を奢っていても慣れてちょうだい」

 

 基本的に彼はジャンケンが弱いのだ。その癖、時々の休憩時間に周りを誘ってジュージャン(賭け事)を始めるのだから質が悪い。

 

 揃ってラピとアニスが溜め息を吐き出す。彼女達もその光景を何度となく見て来たのだろうとマリアンは察せられた。

 

 決して見苦しい場面ではないのだろうが、やはり()()()という立場の人間がしてはならない行動にも思えるも──本人に是正を促しても聞き届けられないのは目に見えている。故に諦める、しかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「──……ハァ……」

 

 その後も続いたラピやアニスによる【指揮官様に関する注意事項】の説明指導。

 

 鮮明に思い出した光景──時折、彼女達が溜め息を漏らす様子も思い出したマリアンも溜め息を吐き出す。 

 

 どうやら彼女達が言っていたのは()()も含まれるらしい。

 

 指揮権を有していない他分隊のニケから随分とフランクに接せられている姿に思う所がない訳ではないが──

 

「…分かりました。トレーニングだと言うなら認めます。ただし──」

 

「…防具を着けろ、か?」

 

「今まで着けたことなんか無いぜ?」

 

 今のは聞き流そう。NIMPHが無くなった脳へ痛みが走りそうだ。

 

「…それはそれで問題ですが…そうではありません。私も見学させて下さい」

 

 目を離した隙に()()()()()()()。確信を持っている彼女達だ。それもあってあのような事項が綴られたのだろう。復帰して間もない身なので彼女は()()()の言い付けに従う他ないのだ。

 

「まぁ良いけどさ。兄貴、動けるようになったら連絡くれよ?待ってるからな?」

 

「分かった。トレーニングナイフも用意しておいてくれ」

 

「じゃあねパートナー。お大事に」

 

 見舞い──にしては少しばかり騒がしかったが、カフェ・スウィーティー分隊の二人が指揮官室を後にする。それを見送った彼は再びソファへ腰掛けると、我慢していた煙草を戦闘服のポケットから取り出して一本を銜えた。

 

 オイルライターで煙草へ火を点けようとした時──ヴーという鈍いバイブレーションの振動がポケットの中から伝わる。

 

 引き抜いた携帯端末のロックを解除したムーアが着信を確かめると──眉間へ皺を寄せた。

 

「…どうかなさいましたか?」

 

「…いや、ちょっとな。……これは……うん」

 

 おもむろに彼は纏っていた半袖の黒いシャツを脱ぐ。惜しげもなく露になった肌──いきなりの行動にマリアンは頬を紅潮させ、見ないように顔を背ける。

 

 しかし──気になってしまう。真紅の瞳をチラチラと彼へ向けては逞しい厚い胸板や八つに割れた腹筋、左腕に彫られた狼の黒いトライバルタトゥー(刺青)を良く観察してしまう程度には目を奪われてしまっていた。

 

 思わずゴクンと生唾を飲み込む。

 

「…マリアン。済まないんだが…」

 

「は、はい!?お、お身体でも拭きましょうか!?」

 

「…そうではなくて、いや有り難くはあるんだが……写真を撮ってくれないか?」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

「──()()()()()を送って来るんだアイツは」

 

 荒野で白銀の髪が砂の粒子を孕んだ風に弄ばれる中、長大な狙撃銃を携える少女の姿をしたニケが呆れ混じりの呟きを漏らす。

 

 片手には古びた携帯端末が握られ、そのヒビ割れた液晶画面には上体の肌を晒しながら銜え煙草の彼の写真が映し出されている。

 

 

 

ムーア《ちゃんと生きてるから心配するな》

 

 

 

 そのようなメッセージも添えられて送信された写真には、手術の痕跡が色濃く写り込んでいる。

 

 

 

 ──任せろって!信じて任せろって言ったわよね!?──

 

 

 

 激昂した彼の部下──アニスから殴られた時の痛みを彼女は思い出す。結果として約束を破ってしまった。卑怯だが、その詫びを今更ながら、しかもメッセージで送ったが彼は全く気にしていない様子が伺えた。

 

 とはいえ、義理堅い彼女である。その程度で気が晴れる訳がない。

 

 

 

 

スノーホワイト《今回は済まなかった。何かあれば呼んで欲しい。協力させて貰う》

 

 

 

 

 まだ電波が届く内に彼女はメッセージを追加で打ち込んで彼に送信すると、携帯端末を懐へ仕舞い込んだ。

 

「……ラプンツェルが前に筋肉がどうのこうのと言っていたな……」

 

 そういう性癖(フェチ)でもあるのか、と仲間の一人へ思いを馳せる。

 

 

 喜ぶかどうかは分からないが──気が向いたら受け取った写真でも送ろうと考えながら彼女は荒野を進み始めた。

 

 

 




メインストーリーでもスノーホワイトが直接詫びに来る場面がなかった為、メッセージでのやり取りにしました。初のやり取りがこれで良いのか?


?「──この方はまさか…!?こ、この腹筋は…間違いありません…はぁ、はぁ…♡い、いけません…こんな妄想……!!無理矢理押し倒されて──の後に──されて──だなんて…!!」
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