「おれはルフィ…またの名を海賊王ゴール・D・ロジャーだ!」   作:青森の桜前線

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第二話 「船長ぉ!!??」

 海賊が来た。

その知らせが酒場に響き渡るのと同時に、その場にいた人々はざわめき始める。この世界にとって最悪の知らせのひとつに海賊の襲来がある。略奪、破壊、人殺し…、彼らが上陸した土地は地獄と化す。当然皆そのようになるとの認識があるのか、半狂乱状態で蜘蛛の子を散らすように逃げていき、酒場にはおれとマキノを残すのみとなった。おれはそれでも黙々とマキノお手製のチキンライスを食べていたが、不意にカウンターから飛び出してきたマキノに手を引っ張られる。

 

「に、逃げるわよっ!ルフィ!」

 

「え、でもよマキノ、おれまだメシくってんだ」

 

「いいからッ!」

 

 そうやって無理矢理に引っ張られながらマキノとともに酒場を出ようとする。しかしその瞬間、おれたちの前に誰かが立ちはだかった。

黒いバンダナを目深く被り、腰にはピストルを差した日焼けした男。海賊である。

 

「ッ!?」

 

 マキノはあまりに突然の出来事に顔が強張り俺を引っ張る手が震える。そして、本当はその場を逃げ出したいのだろうが、隣に俺がいることで努めて気丈に振る舞い、目の前の男に問いかけた。

 

「…何の、ご用件でしょうか…?」

 

 明らかに声が震えている。見るからに焦った手つきでおれを自身の後ろへと、庇うように移動させると、次のように続けた。

 

「ここは酒場です。お酒なら沢山…ありますから、どうか命だけは助けて下さい…っ!」

 

 そろそろ限界だろう。そう思ったおれはマキノを守るためにその男を打ちのめそうとしたが、…それが実行されることはなかった。

 

「お嬢さん…?何を勘違いしてるか知らねぇが、俺は酒を買いに来ただけだぜ?ほら、ちゃんと金も持ってる。別に危害なんて加えたりしねぇよ」

 

 男は抱えている小袋の中身の金貨を見せて、敵意はないことをこちらに示してくる。それを受けて未だ警戒は解いていないが、それでも先ほどよりかは態度を軟化させたマキノが、おれを連れて後ずさりながらカウンターへと引っ込んでいった。そして、男はカウンターの上に金貨を広げて、これで買える分を頼むとひと言。マキノは無言のまま酒を用意すると、後は酒場の隅で壁を背にしながら立っていた。

 

「わりぃな、邪魔した。…酒ありがとよ」

 

 男はそれだけ言うと大量の酒を抱えて出ていった。

 

一気に緊張の糸が切れる。マキノは膝から崩れ落ちて肩で息をする。おれは、やっと終わったかとばかりに元いた座席に座ると、冷めたチキンライスをまたバクバクと食べ始めた。その様子を横目にマキノはまた呆れ顔をする。本当にこの子は…という感じか。仕方がないだろう、おれは腹が減ってるんだ。しばらくマキノのなすがまましてやっただけ感謝しろ、と瞳で訴えかけた。

 

 

「大丈夫かっ!?マキノ!ルフィ!」

 

 ようやくマキノが落ち着き、村人たちがてんやわんやして散らかしていった店内を片付けているとひとりの老人が駆け込んでいた。特徴的な眼鏡に特徴的な帽子、彼こそがこのフーシャ村の村長“ウープ・スラップ”である。血相を変えて飛び込んできたかと思うと、息が上がっているのか両肩を大きく上下させながらこちらへと近寄ってきた。

 

「無事か!?怪我は!」

 

「ええ、村長さん。私もルフィも大丈夫です。」

 

「本当かっ!それは良かった!」

 

 その後村長から詳しく話を聞くと、海賊たちは数人上陸するだけに留まり、残りの者たちは船にて待機していたそうだ。そして上陸してきた者たちも、略奪はおろか普通に食料品などを買い物して帰って行ったらしい。何とも平和的な連中である。…こちら側を油断させるための策略である可能性もあるが、今は何とも言い難いだろう。現状奴らは、

 

「ピースメインってところか…」

 

 古い言い回しである。モーガニアとピースメイン。

そう小さく呟くと、村長が反応してくる。

 

「…随分と古い言葉を知っとるんじゃな、ルフィ。」

 

「おれはしょうらい海にでるんだ。それくらい知っとかなきゃだめだろ?」

 

 …何だか納得してないって顔だな。もういいだろ、ちょっと口が滑っただけだ。ほらほら、おれは年相応の食べ盛りの少年ですよ。そうわざとらしく皿の上の残りのチキンライスを豪快にかっこむと、隣のコップに入ったジュースで流し込む。その様子を見て村長は出かけた言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 

 1週間後、また同じ海賊が来た。今回も酒と食料品を買い込み、何もせずに去っていった。それからまた1週間、1週間と、毎週のように海賊たちはこの村を訪れてきた。なんだ、この村は奴らの補給拠点てか?そうは言っても、彼らの落としていく金銭は村人たちにとって有難いもので、次第に彼らを邪険に扱う者も少なくなっていった。マキノに至っては海賊が来る日の朝になると鼻歌まで歌っていやがらようになった。おいおい、流石に気を許し過ぎじゃないのか。そんな風に思っていると、遂に運命の日が訪れた。

 

 最初の到来から1ヶ月。海賊たちは母船ごと村の埠頭につけ、総出で上陸し始めた。これには気を許し始めていた村人たちも驚き、村長を始めとして皆で武器を持って彼らと相対した。時間は昼前の爽やかな午前、フーシャ村の小さな港には緊張が走っていた。

 

「かっ!海賊どもよ!一体この村に何をしに来た!?」

 

 村長が声を上げる。それに対して海賊たちの中心にいた赤髪の男が答える。……ん、赤髪?

 

おれはマキノと一緒にそのやり取りを、現場から少し離れたところで見ていたのだが、遠目にもその姿には見覚えがあった。いや、面影があったのだ。

 

 見るからに屈強そうな船員たちに囲まれた赤髪の男は、彼らよりも少し小柄に見えた。見えたというだけで、決して彼の背が小さいわけではない。おそらく2メートルくらいだろう。飄々とした表情に黒いマントを羽織る。左目には3本の切り傷、腰にはサーベルをぶら下げていた。そして何よりも、彼の頭には懐かしの麦わら帽子(・・・・・)が、その場の殺伐とした状況の中で凪いでいた。

 

「いや、急にすまない。今日は無礼講でね、酒盛りをしたいんだが酒場を貸してはくれないか?」

 

 爽やかな笑顔でその男…シャンクスは村長にそうお願いをする。村長は、そうは言っても警戒は解けないといった様子で、その発言に対してうんともすんとも言えないようであった。それを見かねたシャンクスがひとつ提案をする。

 

「…俺たちが海賊だから信用できないってのはわかる、だからこうしよう。俺たちはここで武器を全部置いていく、持っていくのは金だけだ。…これでどうだろうか?」

 

「………ウウム。まあ…それであればよいだろう。アンタらには村に金を落としてもらった恩もある。1日くらいは大目に見よう…」

 

「おっ、これはありがたい!…いいかお前たち!武器は全部置いていくぞ!分かったか!」

 

「「「おおう!!」」」

 

 

 堅気に手をださねぇか…。立派に海賊してんじゃねぇか、シャンクス。

 

 

 

 

 

 

 

「「「ギャハハハっっ!!!」」」

 

 何とも下品な笑い方である。だが、それが耳に心地よい。懐かしい海の香りをさせながら、海賊たちは顔を赤くして陽気に笑う。肉に齧り付き、酒を呷り、馬鹿みてぇな話をして、馬鹿みてぇな理由で喧嘩する。それを馬鹿みてぇな顔で笑いながら眺める周りの仲間たち。…本当にいい海賊団だ。

 

おれは、その宴会真っ只中の酒場に単身乗り込んだ。

 

「マキノ!ハラがへった!メシをくれ!!」

 

 そう声高々に申したおれを見て、海賊たちは一瞬固まる。その合間を縫うようにしておれはいつものカウンターの席に座ると、そこにはマキノの驚愕した顔があった。

 

「ルフィッ!?」

 

「…ギャハハ!!なんだこのガキはっ!」

「ハラが減ったって…俺たちのことがみえてねぇのかぁ!」

「大した、肝の座ったガキだな…。」

 

 マキノの叫びを皮切りに、海賊たちはさぞおおウケのご様子で一層ご機嫌になった。彼らにつられて笑い、おれのふたつ隣に座る赤髪の船長さんも、目を輝かせて高らかにこう言った。

 

「くはははっ!そうか、坊主にとっては飯の時間か!こりゃいけねぇマキノさん、早いとこ作ってやってくれ!」

 

 そうすると、マキノは尚も困惑した様子で俺のメシを作るべく厨房へと引っ込んでいく。その場には赤髪海賊団とおれだけになった。

 

 

 

「坊主、お前面白いな。名は?」

 

「…それよりも行けたのか?お前自身の船で、“この海の最果ての島に”。」

 

 

 空気が凍りつく。空間が止まる。

 

「………は?…ああそうか。おい、坊主。俺たちがいくら海賊だからって、誰でもワンピースを見つけてるわけじゃないんだぜ?それに、俺たちは見た通りのお気楽海賊。酒飲んで歌って踊って…そんな連中だよ。」

 

 おれは言葉を続ける。

 

「…おれたちが最後の航海から戻ったあの日、お前に真実を伝えたあの日。お前には辛いことだったかもしれねぇが、それでも。人には知らなくちゃいけねぇことがある、知る義務がある。お前はそれと、向き合うべきだ…シャンクス。」

 

 おれがシャンクスと言った途端。急に騒いでいた海賊たちが嘘のように静かになる。静寂の中を蛇が這い寄るようにこちら側に向けられた感情は、殺気であった。

 

「おい」

 

 シャンクスの覇気が全身を襲う。

 

「何者だ?お前…ッ」

 

ギラつく瞳を光らせて、今にも噛み付かんとするシャンクスに対して、おれはあっけらかんとした笑顔でこう言った。

 

「おれだ!ロジャーだっ!!久しぶりだなぁ!シャンクス!!」

 

 

 

「は…???」

 

「「「は…???」」」

 

 

「 ニィ…!!」(両腕ガバっ!)

 

 

「はあああっ!?ロジャー船長ぉぉ!!??」

「「「お頭のお頭ぁぁぁ!!!???」」」

 

 男たちの絶叫によって、文字通り酒場が揺れた。一部の海賊たちは泡を吹いて倒れ、ヤソップは混乱してどこかへ走り去り、ルウは持っていた肉を落とし、ベックマンの額からは汗が止まらなかった。その騒ぎを聞きつけてマキノが走ってきたが、さっきのはウチの船員たちによるサプライズでしたーと、絶対無理のある誤魔化し方をし、彼女をなんとか厨房へと押し戻した。その間、おれは終始笑っていた。

 











ジツハ フィルムレッドミテナイナンテ クチガサケテモイエナイッピ
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