「おれはルフィ…またの名を海賊王ゴール・D・ロジャーだ!」   作:青森の桜前線

3 / 4

※この先“ONE PIECE FILM RED”のネタバレがあります。ご注意ください。




第三話 星辰が揃う夜

「…だったら何だ、お前たちの喧嘩のひとつでもあげてみるか?北極が寒いか南極が寒いか…、アッハッハ!本当にしょうもないことで喧嘩してたなぁ!お前らは!」

 

 おれの衝撃発言から少し経って赤髪海賊団の面子たちが冷静になりだす。いやいやお前がロジャーなんて信じるわけないだろ、証拠はあるのか証拠は!となっていたので、昔話をちょろっとしていたのだが、次第に船長であるシャンクスの顔が青くなっていくのを見て、船員たちは「マジなんだ…」と心の中でそう思った。

 

「……本当にロジャー船長なのか…?10年前のあの日に死んだんじゃ…」

 

「ああ、正真正銘おれだが、どうやらこの体に生まれ変わっちまったらしい。まったくっ笑える話だよなぁ!あっはっは!」

 

「「「いや、笑えねーよ」」」

 

 船員たちの息のあったツッコミが炸裂する。先程までのどんちゃん騒ぎはどこへやら。海賊たちは戦々恐々としながらも、憧れの眼差しをおれに向けてきた。そして口々に、海賊王と皆が呟き始める。

 

「あっあの海賊王が目の前に…!」

「本物なのか…」

「お頭のお頭だから…“大頭”ってところか」

「…何したり顔で言ってんだヤソップ」

 

 

「…そう言うなお前たち。確かにおれは海賊王だったのかもしれねぇが、それはもう過去の話。今はお前たちの時代だろう?だから…、おれの名前は“モンキー・D・ルフィ”だ!お前たちもそう呼んでくれ!」

 

 すっかり大男たちの中心になった少年がそう呼びかけると、彼らは顔をニヤつかせる。海賊王という称号を鼻にかけることをせず、自分たちの時代だと言ってくれた。言葉の裏を返せば、海賊王が自分たちに期待をしてると言っているようなものだった。これに気分を良くしない海賊はいない。

すると、しばらく考え込んでいた様子のシャンクスがおれに質問を投げかけてきた。

 

「船長は、その少年“ルフィ”として生きるつもりなのか…?この世界を」

 

「ああ…!元を正せばおれは本来あの時に死んでいた、言うなれば過去の存在なんだ。それにガープの奴の反応といい、おれがロジャーだってことを大っぴらにしちまったら面倒くせぇだろ?おれは自由に生きたいんだよ」

 

「それは、“海賊王”を目指すという「違うっ!!」…っ!」

 

 おれは椅子の上で立ち上がる。

 

 

「海賊王なんざぁ世界が勝手に付けた称号だ、お前や他の奴がなればいい。…おれはよぉ!世界で一番自由な男になるんだ!そんでもって世界をひっくり返してやる(・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

 男たちは目撃する。過去彼がなぜ海賊王となれたのか、その理由を。目をキラキラさせて、見た目相応にはしゃぐ。

 

「……レイリーはああ言ってくれたが、あいつとの約束はまだ果たされてねぇんだよ。だから、おれはワンピースを見つけてやるっ!今度こそ、世界をひっくり返して…レイリーやかつての仲間たち、そしてシャンクス!お前たちが笑えるように!今度こそおれは生きてぇッ!!」

 

 

 

「…くはははっ。船長、ワンピースを見つけるって…そりゃ海賊王なることと同じだよ。」

 

「む、そうなのか…?だったら、それはそれでいいか。あっはっは!」

 

 自分の発言の矛盾を指摘され、尚も高らかに笑うかつての船長の姿を見て、シャンクスはあることを話し始める。

 

「…ありがとう、船長。実は俺もそのことで話があってだな…。ここじゃ誰に聞かれてるか分からないし、俺たちの船に来ないか?」

 

「いいぜ…!なんなら今から行くか?」

 

「いや…今から急にいなくなると、マキノさんや村の人たちが変な勘違いしちまう。…夜、村の港に小船を一隻泊めておく。皆が寝静まったら沖合にある俺たちの船“レッド・フォース号”に来てくれ。」

 

「ああわかった!」

「お待たせ、ルフィ」

 

 おれが返事するのと同時に、美味そうなシーフード炒飯が盛られた皿を持ったマキノが厨房から出てくる。向き合っていたおれとシャンクスはテーブルに向き直り、片や酒を呷り片やスプーンを握りしめる。スプーンをテーブルにがんがんと当てるおれを見てマキノは、はいはいといった様子で出来上がった料理をテーブルに置く。それにおれがバクつくのと同時に、酒場は先ほどの賑やかさを取り戻した。

 

 

 

 

 

 夜。フーシャ村。夜風が肌に心地よい。

おれは家を出て村人に気配を悟られないように、気を付けながら港まで移動する。そこにはシャンクスの話し通りに小舟が一隻、月明かりに照らされて海面に浮かんでいた。おれがそれに跳び乗ると、櫂も漕いでいないのに海岸から離れ始め、沖合の母船に向かって進みだした。それを不思議に思って周りを見渡してみると、舟の後ろでバタ足をしている猿がいた。

 

「…おい、お前寒くないのか?」

 

「キーっ!!」

 

 うんうん…、逆に冷たくて気持ちいい…だとぉ?わっは!たくましいやつだ!……なに!手で漕ぐよりも速く進めるだと!?面白いやってみやがれ!

 

その猿は大きく頷くと、船首が高く上がって水飛沫が後方に爆裂する。瞬間に強風を感じたかと思ったら、目の前には木の板が視界いっぱいに広がっていた。

 

「は…?」

 

 ハッとして振り返る。遠くにはさっきまでいたフーシャ村が映っていた。そして、目の前に広がっていたのは巨大な帆船“レッド・フォース号“の側面部だったのだ。余りのことに呆気に取られていると、頭上から声が聞こえてきた。

 

「…ねぇシャンクス!来たよ」

「おっそうか。おーい、船長!こっちだ!今、ロープを下ろすよ」

 

 月下に揺らめく儚げな瞳を携えて、その少女はシャンクスの隣に立っていた。男どもばかりの海賊船に女の子?確かにおれもトキや日和を乗せていたことはあったが、それはおでんの妻と娘であったからして…と、んんん?ま…まさか!?

 おれは垂れてきたロープを掴むのと同時に、こちらを覗き見ているシャンクスに向かって叫んだ。

 

「そいつはお前の子か!シャンクス!」

 

「…ああ!ウタのことについても紹介したいんだ!早く上がってきてくれよ船長」

 

 あの鼻垂れにガキができていたとは…。おれですらまだガキの面、拝めてねぇつうのに…。て、あ

 

「エースっ!…か、アンっ!…クソッおれとしたことがうっかりしてやがったぜ」

 

 まさか人の子ども見て思い出すとは、おれもつくづく最低な親だ。だが、ガープに聞こうにもアイツあれから帰ってきてないんだよな。どんだけ放任主義なんだよ。

 

「…兎に角、今自分を責めても仕方がないか」

 

 おれは、自分がどれだけ自分本位的に生きてきたのかを思い知った。

 

 

 

「紹介するよ、ウタだ。ウチの海賊団の音楽家をやってもらってる。」

 

「よろしく。…シャンクスから色々聞いたけど、君海賊王ゴールド・ロジャーなんだって?でも、今の名前はルフィ。ややこしいね」

 

「それはおれが一番実感してる。…シャンクス、お前にもガキができるようになったか。わっは!すっかりおれも爺さんだな!」

 

「…実は船長。ウタは俺の実の子じゃないんだ、赤ん坊の頃に拾ってな。今じゃこの船の皆んなが家族のように可愛がってる」

 

 ほう…?するとあれか、お前みたいなもんかシャンクス。赤ん坊の頃から育ててきたんだ、2人の関係は本当の親子のようだろう。いや、ようではなく彼らは家族なのだ。それはシャンクスとバギーをロジャー海賊団で世話していたおれが一番わかってる。

 

「…そうだウタ、折角だから船長に一曲聴かせてやってくれないか」

 

「うん…!そうだね。」

 

 シャンクスの提案に嬉しそうにはにかんだウタは、甲板に置いてあった酒樽の上に跳び乗る。そして胸に手を当てて大きく息を吸い込むと、弾むような音階を奏でだした。…それは海の歌だった。海は静かに佇んでいるが、時に荒々しくその表情を変える。一度として同じ海はなく、またそれを航海とかけて、一期一会の赤紙海賊団での冒険の日々を語る歌だった。抒情的に少女の歌声は空間を震わせ、おれは無意識のうちに瞼を閉じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ」

 

 気がつくとおれは甲板の上に大の字になって眠ってしまっていた。視界に入る月の位置的に、それほど時間は経っていないらしい。周りを見てみると、シャンクス始めウタの歌を聴いていた者たちは皆等しく眠っていたようで、体をよじりながら起き始めていた。

 

「ウタは悪魔の実の能力者なんだ」

 

 眠ったことで脱げてしまった麦わら帽子を被り直しながら、シャンクスはおれたちに起こったことについて説明する。ちなみにウタもおれたちと同じように、樽の上の狭いスペースで丸くなってすぅすぅと眠っていた。

 

「“ウタウタの実”。能力者の歌を聴いた者を独自の空間であるウタワールドへと引き込み、能力者の夢を共有することができる。…その分体力の消費が激しくてな、こうやってすぐ眠ってしまうんだ。おれたちが眠ってたのはそのウタワールドに引き込まれたからだな、体は眠り精神だけが仮想世界へと飛ばされるって寸法だよ。」

 

 悪魔の実ってのはそんな出鱈目なものまであるのかっ!体力消費が激しいデメリットがあるみたいだが、それは鍛えれば済む話。何よりこんな小さな子が歌一曲分の長さ能力を維持できた時点で、十分に強力な悪魔の実と言えるだろう。

 

「…凄まじい力だな、それは」

 

「ああ。…拾った時には既に口にしててな。いや大変だったんだ小さい頃は、気が付くと俺たち皆眠ってるからな。」

 

 懐かしむような遠い目をしてシャンクスは目をつむる。そして何かに納得したかのようにひとつ頷くとマントを翻す。

 

「話…だったな、船長室で話すよ船長。」

 

 マストに掲げられた赤髪の海賊旗が、一層激しくはためいた。

 

 

 

 

 

 

 おれはシャンクスの後に続いてこの海賊船の船長室へと入る。木製の重厚な扉の先にあったのは、本と海図の山だった。空になったインクの小瓶が転がり、そこら辺に走り書きした羊皮紙が無数に落ちている。…まぁなんだ、はっきり言おう

 

「きたない…片付けろ!」

 

「ははっ!今朝方ホンゴウにも言われた」

 

 いやぁ時間がなくてね、そう呟きながら雑多に片付け始める。天井から吊るされたカンテラが波の振動に合わせて動き、船が静かに軋む音が聞こえる。シャンクスは何かを探すような手つきで物をどかしていた。

 

「…俺たちはラフテルへと行っていない。だが、この帽子に誓ってロジャー船長の意思は引き継いでいたつもりだ。」

 

 やがて厳重に鍵をかけられ壁に鎖付きで固定された宝箱が姿を現す。

 

「世界中の文献を求めて航海をし続けた。そして遂に俺たちは世界を変えうる存在が過去いたことを知った。それが解放の戦士“太陽の神ニカ”」

 

 シャンクスは懐から鍵を取り出して、宝箱の錠を解いていく。

 

「800年前に果たされなかった彼の意志は、時代のうねり人の夢とともに今現在まで受け継がれている。」

 

 宝箱の蓋を開けたシャンクスは、中から青紫色のヘンテコな木の実を取り出す。

 

「それは…悪魔の実か?」

 

「ああ政府の護送船から奪った。…“ヒトヒトの実モデルニカ”、さっき話したニカの意思が宿った悪魔の実だ。政府はゴムゴムの実と呼んで真実を隠したがってるみたいだがな…」

 

 シャンクスは麦わら帽子を脱ぐ。左手に悪魔の実、右手に麦わら帽子を持ち、シャンクスはおれと向き合う。

 

 

「船長っ!残念ながら俺は“D”じゃない。俺はロジャー船長の意志は継いでいても、この血にはニカの意志は流れていない。…俺たちは新時代の夜明けを託すに値する者を探していたんだ。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったが」

 

 片膝をついて、おれとシャンクスの視線の高さが同じになる。

 

「ゴール・D・ロジャーとモンキー・D・ルフィ。…ここに日月星辰(じつげつせいしん)は果たされた。俺の役目はここまで……この帽子は返すよ。それと、受け取ってくれ」

 

 

 

「ヒトヒトの実モデルニカ。恐らくこれが“ジョイボーイ”の正体だ。」

 

「ッ…!?」

 






今更ながら映画観て来たけど、劇中歌が頭から離れない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。