トレセンに来たんだし、トレセンに行こうぜ   作:ryanzi

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ボーグバトルと競バ
それは人生の縮図、人々にとってのロマン
でも、この二つはずっと交わることはなかった
別競技ってのもあるけど……


※10で神童、15でチャンプ、ハタチ過ぎればただの人だけど、この主人公は神童かもしれんがチャンプにもなってねえし、ハタチでもない

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「いや、いつまで見てんのさ。

アタシが走ってるところなんて、じっと見て」

 

「だって、暇だし……」

 

ウマ娘が走れるほどのスペースがある公園。

そこで一人の少年はずっと小柄なウマ娘が走るのを眺めていた。

 

「暇なら家に帰ってゲームでもしてたら?」

 

「ひと通りやって飽きた。宿題はもうやってあるし……」

 

「……アンタ、確か隣のクラスの灰原だったっけ?

別にアタシが走るところを見ても面白くもなんともないんじゃないの?」

 

「いや、案外ちょっとだけ面白いというか……。

競バなんて見て何が楽しいかわからなかったけど……。

まあ、どうして大人たちが休日返上してまで見に行くか少しわかったよ、タイシンさん」

 

しかし、タイシンと呼ばれたウマ娘はずっと灰原を睨んだままだった。

 

「……気が散るから、どっか行って」

 

「……はーい」

 

そして、この時点で、彼の中で芽生えていた競バへの興味は失われた。

もしもタイシンが見てもいいと言えば、または無視すれば……。

きっと、灰原という少年の人生はまた違ったものになっていただろう。

競バにのめり込んだ彼はトレーナーにでもなったことだろう。

しかし、タイシンは拒絶した。それがターニングポイントになった。

公園から出て行った後、小雨がぽつぽつと降り始めた。

家まで急ごうかなと灰原が思った時のことだった。

前方に、ふらふらと歩く少年がいた。

しかも、血までぽたぽたと垂らしていた。

心配になって近づいたとき、雨は急に土砂降りになった。

 

「……誰か、そこにいるのか?」

 

「あっ、はい。あの、大丈夫ですか?」

 

「……名前は?」

 

「えっ」

 

「名前を教えてほしいんだ」

 

「灰原(ミサオ)っていいますけど……?」

 

「ミサオ、か……俺も実はミサオって名前なんだ。

……ま、元から誰でもいいっては決めてたけどさ、これ、やるよ」

 

ミサオという少年は灰原に無理矢理ある物を渡してきた。

青を基調とした、昆虫を模した物体……カブトボーグだった。

灰原は今の今まで、ボーグバトルにあまり関心を抱いてこなかった。

でも、今、彼の心の何かが動かされつつあった。

 

「こいつの名前はマッド・クリムゾン・プリズナー。

まあ、気に入らなけりゃ、好きな名前でも付けるがいいさ。

ただ一つ、頼みがある……俺が生きられなかった人生、生きてくれねえかなあ、あはは……」

 

それから、少年はおぼつかない足取りで、去っていった。

灰原は救急車を呼ぶことも、警察を呼ぶことも、すっかり忘れていた。

今、彼の心は一種の興奮に包まれていた。

今まであまり関心を抱いていなかった世界との遭遇。

謎の少年が託してきたカブトボーグと願い。

当時の灰原はこれらの刺激にすっかり魅了されてしまった。

そして、これが彼のボーグバトラーとしての人生の始まりだった。

 


 

それから長い月日が経った。

背が伸びて、白い手袋をつけるようになっていた灰原。

そんな彼は東京駅まで電車で向かっていたのだが……

 

「おい、あそこにいるのは”黒手袋”じゃねえか?」

 

「本当だ!石投げちゃおっと!」

 

「おう、とっとと降りろ!

お前みてえな卑怯者がいるだけで空気が汚れるんだ!」

 

こうしてあっという間に他の乗客たちに途中の駅で無理矢理降ろされた。

……そんな目に遭ってもなお、灰原は何の抵抗もしなかった。

ただただ溜息をついて、肩をすくめるだけ。

それから駅舎から出ると、そこがどこであるかを知った。

府中市である。武蔵野の近くの、府中市だ。多分。

 

「……府中かあ。府中ってことは……まずいな。

あまりここには来たくなかったんだけどな。

しゃーない、徒歩で武蔵野に向かうしかないか……。

下手な騒ぎを起こさなければいいだけだろ」

 

 

おだやかな人生なんてあるわけがない。

ましてやボーガーにそんなもの許されるわけないだろ?

―フィンランドのとある旅人

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