新型コロナウイルス感染でお休みになったので初投稿です。
拙作が読者の皆様に楽しんで頂ける様、鋭意努力して参ります。
尚、創作活動初心者につきお見苦しい点があるかもしれませんがご容赦ください。
「わたし達の出会い?どうしてそんなこと気になんの?」
「それは…なぜでしょう?」
「いや聞かれても知らんがな」
質問されたのは赤色の和服が似合う、黄色がかった白髪にボブカットの少女、『
彼女は後輩の少女からの要領を得ない質問に少し困惑していた。
「なんというか…。バイトリーダーってこう…、掴み処がない?と言いますか。
何を考えているのか良くわからないし、不思議な人だなって思いまして。」
「それもだいぶ良く言ってそれだしね。
悪い意味で雲みたいで気まぐれで魔訶不思議なヤツって感じじゃない?
ぶっちゃけて言うと変人。特技は土下座だし。」
「…表現の仕方はともかく、そうです。
それはともかく、それでいかにも変人なリーダーは、私がリコリコに異動になる前から在籍していると店長から聞きました。
それとリーダーを連れてきたのは千束だとも。」
喫茶リコリコでバイトリーダーをしている少年を思い出し、美しい黒のロングヘアを二つ結びにした後輩の少女『
千束が変人と形容している通り、いやそれ以上にバイトリーダーの少年は変人で、事あるごとに周りを巻き込んで場を混沌と化すことが良くあった。
何度巻き込まれて被害にあったか思い出したくもないほどだ。
「性格的にも行動パターン的にも異なるお二人が偶然出会う可能性はかなり低いでしょう。
その少ない可能性であるリコリコでの出会いが違うなら、他に一体どんな可能性があるのか疑問に思った、というわけです。」
「ああ、そゆこと?
確かに超絶美少女の千束さんと空前絶後の変人が出会い、その後に同じ職場で働くなんてちょっとしたドラマになりそうなロマンスを感じるよねー。」
ラブなんて微塵もないけど。と笑う千束を見てたきなも釣られて笑ってしまう。
それはあの日、突然終わっていたかも知れなかった、ずっと続いていて欲しい日常の延長線だった。
「んじゃー、お客さんが来るまでの間の少しだけ。
あヤツと千束さんの馴れ初めを聞かせて進ぜよう!」
ここは喫茶リコリコ。
錦糸町駅北口から少し歩いた墨田区内の下町にある、和洋折衷をコンセプトとする喫茶店。
時間は午前11時を少し回ったところでまだ一組も来店はなし。
その喫茶リコリコの看板娘の二人は業務時間中にも関わらず、雑談で盛り上がっていた。
普通の高校生、それがまず最初にある自己認識。
容姿も学力も身体能力も普通、親に財力や強力なコネがあるわけでもなく、眠っているすごい才能とかもたぶんない、ごく平凡で一般的な男子高校生、それが自分。
とは言え人生退屈かと聞かれると、それは違う、と答えられる程度には自分の人生を満喫できている自信もあった。
両親は健在で現役バリバリ、兄弟たちとも仲良く楽しく、ペットのポチは散歩中に飼い主を引きずり回すくらい元気でかわいい。
何よりどんなことをしていても楽しい友人たち。
最近面白い漫画やアニメ・ゲームの話、好きなYouTuber、将来の夢やちょっと気になるあの子の話、どんなことをしてもバカをやっても友人たちと一緒なら楽しかった。
そしてその程度のことを青春と呼べる程度には自分は普通の高校生だと断言できる。
ただひとつ普通じゃない点があるとすれば、それは事故にあって神様に出会った経験があるくらいのものだ。
それは現実感のある非現実的な光景だった。
場所は事故現場、横断歩道。
たくさんの人がいる。
叫んでいる人、怒っている人、泣いている人、
どこかへ指示を出す人、茫然としている人。
かつては人だった、原型を留めていない程ぐちゃぐちゃになってしまったもの。
そしてそれに縋り付いて泣いているものと、
慈母の笑みを浮かべる美しい、女性の神。
「いやーごめんねぇ。
急にこんなわけわかんないことになっちゃってさ。
自分が死んだこととか、死後に神様に呼ばれてることとか、
いろいろあってこんがらがってると思うんだけど、とりあえず話を聞いてくれるかな?」
「う、うわあああああああ!
こんなのウソだと言ってくれよぉ!!
一緒にアニメの続きを見ようって約束したじゃないか!
まだ俺たち夕日に向かって駆け出してもいないんだぞ!
死なないでくれ!死なないでくれよシャーリィぃぃぃぃ!」
女神は少年に話しかけていた。
諸々に関するこれまでの事とこれからの説明をしないといけなかったからだ。
しかし少年は女神を一顧だにしない。
大切な誰かを失ったから?自失して周りの声が耳に入らないから?
それとも辛い現実から目を背けたいからか?
美しい女神は優しげな笑みを絶やさない。
しかしその笑顔はいつもの笑顔と異なり幾らばかりか呆れを含んでいる様に見えた。
それが何故かはわかり切っていて、目の前で泣いている少年が原因だった。
もっと言うならば自分で自分の死体に泣きついて迫真の演技を披露する少年が余りにも理解不能だったからだ。
「どうしよう…。全然話聞いてくれない…。
なんなら自分の死体にシャーリィって名前つけて縋り付いて泣くタイプの人間も初めてで、どうしたらいいかわからない…。
というかキミ男でしょ?なんでシャーリィって名前なの?」
「ヒグぅッグスッ…。
シャーリィぃぃぃ…!シャーリィ…!
大丈夫だよ…。僕もすぐにそっちに行く…。
向こうでもまたタコパしような…!」
「すぐにそっちに行くというかキミもうこっちに来てるんだけどね?
あと向こうにたこ焼き器あるかどうかはわかんないよ。
そんなことよりいい加減私の話を聞いてってうわっきったな!
涙と鼻水でぐっちゃぐちゃの顔を急にこっちに向けないでよ!ちょっと散ったじゃん!」
「ズビッ…向こうにたこ焼き機ないってマジ?
俺は何のために今までッ…!」
「気になるとこそこ?
唯一反応する話題が神様でも自分が死んだことでもなくたこ焼き機て頭の中どうなってるの?
それより話を聞く気になったんならこれからの説明を…って寄るんじゃない、服に触るんじゃない、私の服で顔を拭くんじゃなぁぁぁぁい!!!
ねえちょっとほんとに何してんの!?!?」
「だってマイフェアリーゴッドが見苦しい顔を晒すなって言うから…。
確かに御前で身嗜み適当なのも不敬だしちゃんとしとこうかなって思って…。」
「言ってないし、私はキミのでもなければ妖精でもないけどね!?
あと心構えはともかく神様の衣服を汚す方が不敬だとは思わなかったのかな?」
「服なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんとです。服飾だけに」
「どうやら地獄への片道切符がお望みのようだね?」
「申し訳ございませんでしたぁ!」
「すごい速さで土下座するね…。
土下座を磨く前に土下座しない努力をした方が良かったんじゃない?」
「それがどうにも気付いた時には口走ってて手遅れなことが多いんです。
頭が追いついた時には後の祭り状態で…。ヘヘッ」
「ヘヘッじゃないよヘヘッじゃ!もうっ!
…こほん!それじゃあ気を取り直して、今からキミに起こったことを説明するからよく聞くように」
「うわああああああ!シャーリィぃぃぃ!
目を開けてくれぇぇぇぇぇ!」
「どの地獄がいい?黒縄?叫喚?大焼炙?無間いっとく?」
「申し訳ございませんでした。」
「だから土下座しないで済むようにしなさいって…。
もういいよ、それじゃあ説明するからね!」
「つまり、事故って死んじゃったから転生させちゃうよってこと?
よくある異世界転生、俺なんかやっちゃいました?強靭☆無敵☆最強!であってる?」
「最後の方はともかく、まあそうだね。
手違いで死んじゃいました。とかじゃなく、キミは普段の言動はともかく日頃の行いが良かったから、普通に善行に対する見返りとして、新しい命で新しい世界を生きる権利が与えられるってだけさ」
「日頃の行いが…良い…?
それはありがたいんですけど、どうせなら生き返りたいなって。
割と今の生活とか気に入ってるもんで」
「なんで自分で自分の行いに疑問を持つかなぁ?
こっちで生き返りたいって言うキミの気持ちは知っているよ。
君の人生は見させてもらったからね。その上で言おう。無理だ。」
「無理かぁ…。やっぱ神様の服で顔面拭いたのがマイナスだったか?
ポッケに入ってたアメちゃん捧げますから許して貰えません?」
「それに関しては絶対に許さないからな…。
あとそれとこれとは関係ない。言ったろ?前世の行いの善し悪しの問題だ。
死んでからの私に対する無礼はカウントされない。
…君は良い人間だ。良き家族、良き友人、良き縁に恵まれたからか驚くほど善人だ。
恵まれた環境に生まれた事に胡坐をかかず努力を絶やさず、
独り占めせず分け与え、誰もに笑顔を齎し、
自分より劣る人間に対しては支え、手を引き、導いた。」
「すっげえ。誰その聖人?有名な人?」
「なんでそんな嫌そうな顔なのさ…。
君の事さ。君は自分で思うより多くの人を笑わせたってだけ」
「全く身に覚えがない事で気持ち悪いんですが…。」
「それでいいのさ。
もしそれを自覚して悦に浸るようならそれはそれで徳からは遠い。
無自覚に無償で善い行いをするからこそそれは徳だ。
ただ徳を積み上げたと言っても黄泉返りの奇跡には遠い。
だからこそ君は異なる世界にしか生まれ直せない。」
「そういうもんですか…。」
「そういうもんだよ」
確かに言われてみればそういうものなのかもしれない。
自分のために相手に押し付ける善意は善意じゃないってことか。
「んじゃあそういうもんだとして、どういう世界に行くことになるんです?」
「それは着いてからのお楽しみ、転生得点もね」
「お??転生特典付きとな?
それは楽しみ…。あーでも…。
すみません神様、転生特典なくてもいいので一個だけお願いが…。」
「ん?何かな?
叶えてあげると約束はできないけれど、聞くことは聞こう」
「残していく家族とか友だちがあんまり悲しまないようにってできます?
先立つ不孝なもんで。」
「それは…できない。
いやできなくはないが、すべきではない。
私が神だからではなく、人は感情のままに泣いて笑って怒るべきだからだ」
「やっぱそうですか…。そりゃそうですよね…。
変なこと言ってすみませんでした。」
「いいさ、とはいえ願う気持ちはわかる。
遺書くらいなら届けてあげよう」
「あ、じゃあそれで、お願いします。
すぐ準備しますね!」
「ああ、書けたらすぐに出発だ。
思い残すことのないようにね。」
「がってんしょうち!」
「すみません神様、お待たせしました。」
「全然待っていないから、構わないよ。」
神様はそれから何も言わず、遺書が書き終わるのをずっと待ってくれていた。
突然のことで混乱したし、失礼もしたけれど水に流してくれる優しくも美しい神様だった。
その優しい神様に遺書を渡してもらうのは気が引けるけれど…。
「じゃあ、これ、お願いします。」
「はい、確かに預かりました。
間違いなく届けますので安心してください。
…差し支えなければどんなことを書いたか教えてもらっても?」
「それは…『着いてからのお楽しみ』です。」
神様は一瞬だけぽかんとするもそのすぐ後にはいつも通り微笑んでいた。
「わかりました。
では、最後にひとつだけ」
「ん?まだ何かあります?」
「名前を、せっかくなので聞いておこうかと」
「ああなるほど。
そいや自己紹介とかしてないですね。
…では改めまして、『オリ主=ヌルポ・ナデポ』と申します。」
「……はい、初めましてオリ主=ヌルポ・ナデポくん」
私は神の末席、『ステーキナ=メガーミ』です。
では気を付けていってらっしゃい!」
「いや自分で素敵なって…
…えっ、ちょっまっ。
ちょっと待ってやり直させうわああああああ」
最後まで神様は優しく微笑んでいた。
その神様の笑顔が消えぬまま、あっという間に目の前が真っ白になった。
これが転生かという感慨も浮かばぬまま色彩が戻ってくる。
驚いたのはふたつ、転生とは言うが目線は元と変わらぬまま、つまり年齢も元と同じだろうということ。
そしてもうひとつはここが見知らぬマンションの一室だということ。
さらに付け加えて言えば余りにも物が少ない部屋だということ。
どうやら元居た時代とほとんど変わらない場所に転生したようだ。
その殺風景な部屋に唯一見当たるカーテンを引く。
どうやら今は朝、太陽が顔を出してすぐ、鳥が歌い、風が気持ちの良い早朝のようだ。
転生して初めて見る景色としては悪くないなと思いながらこれから何をしようかと考える。
とりあえず丁度良い時間まで昼寝するのもいいかもしれない。
転生特典もあるってことだし、今後の明るい未来に思いを馳せる。
「貴様、ここで何してる?」
「えっ」
突然、後ろから声をかけられた。
咄嗟に振り向くとそこにはひとりの少女が立っていた。
美少女だ、と思うこと数瞬、違和感に気付く。
それは早朝だし当たり前なのだが、少女がパジャマ姿であること、
そして、
「ゆっくり、武器を捨てて両手を上げろ。
変な動きを見せれば撃つから。」
見た目に不釣り合いな拳銃を構えていたこと。
その少女はどう見ても突然現れた不審者を警戒している。
言葉通り、こちらが変な動きを見せれば即座に発砲するだろう。
加えて現代日本と似た世界と言えど、ここが銃が当たり前の世界でないとは限らないし、
その構えから銃弾が当たらないと楽観するのもやめておいた方がいいだろう。
…どうやら服で鼻水を拭いた件は許されていなかったらしい。
優しそうな神様だと思ったのに!許してくれぇ!
後日譚
遺書を見た人々
拝啓 My Dear
ちょっと事故って
女神様を名乗る不審者に攫われたので
異世界転生俺UTEEEEEしてきます。
元気なので探さないで下さい。
ぼくより
敬具
Dears「なんだって!?女神様許せねえ!」
めがみさま「あやつ…鼻水だけでは飽き足らず…!」
どうもてばさきゆかりです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
やはり創作活動とは難しいものですね。
たったの5000時程度ですが、ずっと悩みながら投稿しました。
ここ変かも、この表現ってあってる?と悩みだすとキリがなく、終始不安のまま投稿ボタンを押す羽目に…(泣)
投稿を繰り返していく内にこういうのって慣れていくものなのでしょうか?
小慣れてる自分は全く想像できませんが(笑)
さて今後も自身の体調と時間が許す限り活動は続けていきたいと思っています。
まだサイトの機能も把握できていませんので活動報告が投稿できるのもまだ先かもですが…。
もし拙作をお気に召して頂けたならまた御一読頂けますと幸いです。
最後に最近はめっきり寒くなって参りましたこともあり、読者の皆様におかれましてはお風邪など召されませんようお大事に日々をお過ごしください。