光速の走り屋オオサキショウコ 第2部   作:まとら魔術

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ACT.2 毛利スグル

 

あらすじ

 

 雨原のライバル・谷が彼女の元を訪れた。

 彼女からキャノンボールへの参加を誘われるも、興味ないという理由でそれを拒否する

 その後はバトルを挑み、互角の勝負を繰り広げた。

 同じ頃、和食さいとうではプラズマ三人娘とあきらがキャノンボールに参加を宣言した。

 

 あきらとの出会いから1週間が経過した6月21日の日曜日。

 時刻は夕方の5時頃。

 今日は午前と午後とそれぞれ2回に渡り、来週のキャノンボールの練習をしている。

 今は後者の時間の練習だ。

 

 おれとあきらは現在高崎東吾妻線、通称・裏榛名を走行していた。

 C4がおれの前を走り、ワンエイティの助手席には智姉さんが座っている。

 

「彩依里はだんだん上手くなっていくな」

 

「前のような荒削りな走りはしなくなりましたから」

 

 おれの弟子になってから、彼女は普通にグリップ走行でコーナリングを行うようになった。

 あきらは1段階成長した。

 

 遥か後ろから音が聞こえてくる。

 

「何か来ます!」

 

 音の正体はエンジン音で、ロータリーエンジンのサウンドだった。

 しかし後ろを見ると、ル・マンを制した伝説の名車・マツダ787Bを彷彿させる緑とオレンジのカラーリングをした、見たことのないクルマが走ってくる。

 ロータリーエンジンって今も作られていたっけ!?

 

「ロータリーエンジンのクルマって生産終了していたはずでは!?」

 

「あのクルマは最近発売されたND5RC型ロードスターだ。あのクルマに積まれているエンジンは後付けだ」

 

 さらに、あのND5RCはオーラを出していた。

 色は萌葱色と銀色、属性は風と鉄だ。

 

 かなり後ろから来るクルマを知ったあきらはC4を後退させておれのワンエイティの横へ並ぶ。

 

「わしはパスをします! バトルできる自信はなかですけん」

 

 左ウインカーを光らせ、ND5RCの後ろへ下がっていく。

 

 おれとND5RCの1対1のバトルだ。

 と言っても、ワンエイティの助手席には智姉さんが座っているけど……。

 

大崎翔子(RPS13)

 

vs

 

謎の走り屋(ND5RC)

 

コース:裏榛名下り

 

 おれのワンエイティとND5RCはアクセルをさっき以上に強く踏み、裏榛名の道を駆け抜ける。

 

「あれが巷で噂の赤城最速のワンエイティか。バトルしごたえがあるかもしれん。まずはこの技で気合いを入れるかのう」

 

 ND5RCは大きな銀のオーラに包まれる。

 

「爆裂のロータリー流<ロータリー・ホイール>!」

 

 ND5RCのボンネットの中にあるロータリーエンジンがさらに滑らかに回転する!

 さっきより加速は良くなっていき、ワンエイティに接近していった。

 

 S字コーナーからの左中速ヘアピン。

 

「逃げるために技を使ってもいいですか?」

 

「構わないぞ」

 

 接近されたおれは、ND5RCを引き離そうとその2つ目で萌葱色のオーラを発生させる。

 

「小山田疾風流<フライ・ミー・ソー・ハイ>! イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケー!」

 

 風のような高速ドリフトでND5RCを引き離していく。

 

「中々のドリフトじゃのう。赤城最速と呼ばれるだけあるわい」

 

 また左中速ヘアピンが来て、智姉さんの指示を受けながらそれを抜けると直線が来る。

 その直線では、ND5RCが物凄い加速力で差を縮めてきた。

 パワーではあっちの方が上らしい。

 

「相手は速い……コーナーで離してもすぐ追い詰められる!」

 

 直線の後は緩いS字、この後も同じセクションが交互に繰り返される。

 高速区間が続くから、おれは接近されてしまう。

 

 そこを抜けると2連ヘアピンに入る。

 1つ目にて技を発動させ、銀色のオーラを纏う。

 

「小山田疾風流<スティール・ブレード>!」

 

 鉄の刃で切り裂くような超高速のゼロカウンタードリフトで攻めていき、ND5RCとの距離を大きく離していく。

 相手の方も負けじと技を使い、透明なオーラを纏った。

 

「<ハヤテ打ち3>!」

 

 ND5RCは立ち上がり重視のグリップ走行で攻めていく。

 それを重視した走りで、おれのワンエイティに接近する。

 

「技を使っても離せない!?」

 

 それを使っても無理なのか……。

 この後は緩い連続S字からの高速区間。

 

「高速セクションでは、相手の方が上だ。気を付けろ」

 

 ND5RCは自慢のパワーで接近してくる。

 差はテールトゥノーズになった。

 

 高速区間が終わってS字に入ると、ND5RCは黒いオーラを纏う。

 精神攻撃をしてくる。

 

「爆裂のロータリー流<山陰の策略>!」

 

 ND5RCはワンエイティを煽り、おれにプレッシャーを与えていく。

 ワンエイティをふらつかせた。

 

「うわッ!」

 

「プレッシャーに負けるな!」

 

 それと戦いながら、クルマを立て直す。

 

「練習の最中にアレが発動したら……身体が持たなくなる」

 

 あれの代償で雨原戦で意識を失った。

 智姉さんを心配させてしまうから御免被りたい。

 

 左U字ヘアピン。

 

「ここはあまりスピードを落とさず、ドリフトとグリップの中間で行け」

 

 智姉さんのアドバイス通り、そこを攻める。

 真後ろにいるND5RCはグリップ走行で攻めていく。

 

 それを抜けると、連続S字に入る。

 

「いよいよ、仕掛けるとするかァ……」

 

「ヤバイ……抜かれるゥ!」

 

 その時、おれに変化が訪れる……!

 

「あれが発動してしまった……」

 

 ワンエイティが萌葱色と白の2色のオーラを纏う!

 おれの能力が発動してしまった。

 

 能力とはその名の通り、覚醒技超人の特性を表す物だ。

 常に発動しているものもあれば、条件付きで発動するものもある。

 

 おれの能力は精神的にピンチになると、クルマの性能とドライバーのテクニックを大きく引き上げるものだ。

 その代わりにドライバーの体力の消耗が激しくなるという欠点を持つ。

 

「この身体が倒れる前に、絶対ND5RCを引き離してやる!」

 

 連続S字区間を抜け、直線に入る。

 能力によって、ワンエイティはND5RCと互角と戦える加速力を得た。

 

「ワンエイティの加速が速くなったのう、このロータリーを積んだ軽量なND5RCと肩を並べる走りをするとはのう……」

 

 左中速からの2連ヘアピン。

 智姉さんの指示を受けると同時に、能力で上がったコーナリングとテクニックでND5RCを引き離していく。

 2連ヘアピンの2つ目で銀色のオーラを纏う。

 

「小山田疾風流<スティール・ブレード>!」

 

 鉄の刃で切り裂くような、超高速のゼロカウンタードリフトで攻めていく。

 

「イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 

 能力の影響で<スティール・ブレード>の速度は速くなっていった。

 その鬼のように速いゼロカウンタードリフトで、後ろにND5RCが見えなくなるほど引き離す。

 

 互いの目から相手のクルマは見えなくなるほど、距離は離れていった。

 

「ふぅ……逃げれられる事に成功した」

 

「こんな事態になるとは……やれやれだな」

 

 離されたND5RCのドライバーはこんな事を考えていた。

 

「今んは手加減しとったけん、じゃが次会った時はワシャ本気出すけんのう」

 

結果:オオサキの逃げきり成功

 

 ND5RCから逃げきってしばらくすると、妙義山のヒルクライム終盤にある中之嶽神社の前でワンエイティを止めることにした。

 

「休憩しましょうか」

 

「賛成だ」

 

 休憩をするのは、ND5RCに追いかけられて……能力を使ってしまった影響もあり体力を消耗してしまったからだ。

 

 停止したワンエイティの所に、追いかけてきたND5RCも停止した。

 そのクルマからドライバーが降りる。

 ドライバーは20代半ばの男性で、薄い緑色の髪にクルマの色と同じレーシングスーツを着用していた。

 

「追いかけてすまん、ちょっとええか?」

 

 ND5RCのドライバーが男性だと見たおれは、怯えだす。

 

「お、おとこ……!?」

 

 おれは男性恐怖症だ。

 男性を見ると、怯えだす。

 怯えるのは、男性にナンパされるかもしれないから。

 

「ワシはナンパなんかせん走り屋じゃ」

 

 良かった。そのような人で……。

 

 サイドウインドウを開けて、ND5RC乗りと会話する。

 

「中々の走りじゃった。お主は赤城最速の大崎翔子じゃな?」

 

「そうだよ。って……おれのことを知っているの!?」

 

「赤城最速が変わったことは噂になっとるけぇのう。お主が無敵の赤城最速だった雨原芽来夜を倒したんじゃな。幼いのう、最速になったとは思えん見た目じゃな」

 

「おれは16歳だよ。身体が小さいから幼く見られるんだ」

 

 こっちも聞いてみた。

 

「あなたは誰なの? 名前は?」

 

「ワシは毛利スグル。ロータリー専門のチューニングショップでドライバー兼エンジニアで、ND5RCには特製のロータリーを載せとる」

 

「見せて」

 

 クルマから降りてND5RCのボンネットを開けると、変わったターボが付いたロータリーが入っていた。

 

「電動ターボを身につけたロータリーエンジンじゃ。ターボは普通ラグのせいで低速域がダメなんじゃが、電動ターボはどの回転域でも回るけぇのう」

 

「なるほど」

 

 最新技術のターボか。

 そりゃすごく速かったって分かる。

 

 今度はおれが走っていた目的を話す。

 

「今、おれたちは来週開かれるキャノンボールレースの練習をしていたんだ」

 

 その言葉を聞くと、毛利さんは目を光らせた。

 

「キャノンボールじゃとォ!? 実はワシも参加するんじゃ。ワシもあの日に向けて、上毛三山を走る練習をしとる」

 

「あなたも参加するんだね。ますます負けられないね!」

 

「こちこそじゃ。次出会うときは、バトルの会場じゃな」

 

 その会話を終えると、毛利さんはND5RCに乗ってこの場を去っていく。

 

「強敵出現だな……当日には彼以外の強敵が全国から集まるぞ。お前が赤城最速だからとはいえ、油断できないぞ」

 

「負けられませんね」

 

 今度は入れ替わりにあきらのC4が神社に来た。

 そのクルマからあきらが降りてくる。

 

「大丈夫ですか? 追いかけられたんですが……」

 

「大丈夫だよ」

 

「逃げ切れたけどな……あいつもキャノンボールレースの参加者らしい」

 

「へぇ……そうなんですか……」

 

 ライバルが出現したようだ。

 

 キャノンボールの練習を終えると、ワシはアメ車専門店ブルーフレアへやって来た。

 

 ブルーフレアはアメ車専門と言っとるけど、アメリカから逆輸入した日本車やアメリカでの人気のクルマも扱っとる。

 クルマの販売だけやなく、クルマのチューニングや整備まで行っとる。

 

 ワシのC4はこの店で面倒を見て貰っとる。

 

 ここにクルマを停め、店内に入った。

 そこに入ると、1人の男性がいた。

 

 年齢は30代半ば、見た目は特撮にも出演経験のあるとあるロック歌手に似ていて、金髪の髪に青いメッシュが入っとる。

 服装は赤いラインの入ったジャージを着とる。

 

「ただいま、おやっさん」

 

「おかえり、あきら」

 

 ワシが「おやっさん」と呼んどるんが、店長の松平充や。

 両親から離れて暮らしとるワシにとっては第2の父親的存在となっとる。

 

「キャノンボールレースに出るようやけど、C4の調子はどうなんや?」

 

「ええと思います」

 

「クルマのコンディション悪かった言うてや、俺がメンテしてやるけんのう。C4のボンネットの中にあるロータスと共同開発したエンジンを大事にしてくれ」

 

「絶対壊さんつもりだす」

 

(本当に大事にしてくれるんやろうか? こいつは馬鹿やからのう)

 

 おやっさんの脳裏に不安が過る。

 ばってん、壊さんとですよ。

 

 ブルーフレアに立ちよった後、ワシは家に帰るんやった。

 

 翌日、6月22日の月曜日。

 時間は朝8時。

 ワシは登校した。

 

 ワシの学校は赤城高校と言い、県立の高校や。

 制服は女子は赤いセーラー服、男子は赤い学ランとなっとる。

 

 1年A組の教室に入り、友達に挨拶する。

 

「おはよう、伊吹」

 

「あきら、おはよう」

 

 このボーイッシュな髪型をしとる女子生徒が渋江伊吹と言い、生徒会の役員や。

 実家は空手の道場をやっとる。

 自動車で登校しとって、JTCC風のオペル・ベクトラ(2代目)を愛車にしとる。

 

「あきらちゃん、おはよう」

 

「おはよう、レイカ」

 

 この茶髪ぱっつんのロングヘアーをしとる女子生徒が炎武良レイカと言う。

 彼女の父親はこの学校の担任をしとる。

 こちらも自動車で登校しとって、VeilSide製エアロを身につけたトヨタ・MR-Sを愛車にしとる。

 

 この2名にはオーラが見える。

 どちらも覚醒技超人や。

 伊吹には緑と萌葱色、レイカには白と赤のオーラが出る。

 属性はそれぞれ草と風、光と火や。

 

「実はワシ、キャノンボールレースに出るんやで!」

 

「キャノンボールレースってあの上毛三山キャノンボールレースか?」

 

「そうやで」

 

「あきらはこのレース、走れるのか!? 僕は参加しないと決めたけどな。腕がない上に長時間走れる気はしないし」

 

「私も参加を却下したよ。伊吹ちゃん同様、私は大会に参加できるほどの腕じゃあないし」

 

「伊吹もレイカも参加すれば良かったで。思い出になるはずやし」

 

「ったく、あきらったら……そういう軽いノリが落とし穴に繋がるかもしれないんだぞ」

 

「もうすぐお父さんが来るよ」

 

 レイカのお父さんこと、炎武良ケンタ先生が教室に入る。

 彼はこのクラスの担任であり、野球部の顧問も務めている。

 

「出席を確認しまーす」

 

 先生はワシら生徒の顔を1人づつ見ていく。

 

 そして日は過ぎていき、6月28日……キャノンボール当日となった。

 群馬県内のみならず、県外からたくさんの走り屋が集まっている。

 

 かなりの強豪揃いの予感だ。

 

TheNextLap

 

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