ドラゴンクエスト ダイの大冒険Ⅱ   作:だいまどう

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約束

ロンベルクの話では、リリルーラの効果を最大限に高めるためには、対象者との共鳴を図る際に高水準の魔力を維持し続ける必要があるという。

 

また、もし相手が強く共鳴を拒んだ場合でも、相手との強い繋がりを象徴するアイテムや、相手の持ち物と共鳴しやすい素材などを身につける事で、精度は下がるが、相手がいるエリアの探知くらいまでは可能になる、との事だ。

 

まず必要なものは魔鉱石。

魔鉱石はダイの剣の宝玉に使われている鉱石で、魔力を蓄積、放出する性質がある。

ダイの剣では、持つものの魔力を闘気に変え、武器そのものの威力にフィードバックする効果を果たしていた。

ダイの剣に使っているものは、覇者の冠に散りばめられていた装飾用の宝玉を溶かして錬成したものだ。

 

ポップはあちこちの鉱山を周り、魔鉱石の情報を集めた。

魔鉱石は深い地層に僅かにしか含まれない、とても貴重な素材であり、王宮の古い宝物庫の外壁や祭事用の道具などで僅かに使用例があるが、現在では採掘をしている場所は殆ど存在しないという。

 

「あんなに探してこれだけかぁ」

 

ポップは手の平大の赤銅色の鉱石を見つめて言った。

袋に石をしまい森の木陰に寝転ぶと、様々な過去の出来事が頭に浮かんできた。

 

子供の頃いじめられ泣いて家に帰った日のこと。

アバンの弟子になりたいと言って殴られ、こっそり荷造りをした夜のこと。

マァムに初めて出会った時のこと。

 

親父みたいに強くなりたかった。

大事なものを守れる男になりたかった。

 

ハッと気づいたポップは梢から漏れる光を瞼に感じながら、目を開けた。

 

「まだ聞いてないヤツがいたぞ」

 

そう呟くと立ち上がり、ルーラで飛び立った。

 

ランカークス村の広場に降り立ったポップは、自宅に向かって走った。

あまり期待はしていなかったが、武器を扱う商いをしている以上、何かを知っている可能性はある。

店のドアを開けると、商品の手入れをしている父親が目に入ってきた。

 

「ただいま」

 

「おう」

 

「相変わらず客が少ねえなあ」

 

店の隅に溜まっている埃を手で払いながらポップが言った。

 

「お前らのお陰でこちとら商売あがったりだぜ」

 

ニヤリとするジャンク。

 

店番をしている父親にポップは事の次第を話した。

 

「なんだ、最近おまえ忙しそうにしてると思ったらそういう事だったのか」

 

「なんか知らねえか?親父ロン・ベルクと仲いいんだろ?」

 

「ついてこい」

 

ジャンクはカウンターの奥のドアから物置に入ると壺や陳列用の什器、地図などをどかし始めた。

 

「おい、ちょっと手伝え」

 

2人で古い机を動かし、床の埃を払うと、蓋のようなものが見えた。ジャンクが両手で蓋を持ち上げると、地下へ続く隠し階段が現れた。

 

「こんな所に部屋なんかあったのかよ」

 

「覚えてないだろうが、お前小さい頃よくここで遊んでたんだぞ。一度、母さんがうっかり忘れて蓋を閉めちまってな」

 

「あっ、ちょっと覚えてるかも」

 

「あん時はお前、カンカンに怒ってずっと母さんと口をきかなくてな。大変だったぜ。まぁメシの時間までだったけどな」

 

「母さんそそっかしいからなぁ」

 

「あの頃は客も多かったから、昼間はお前と遊んでやる暇もなくてな。母さんも忙しかったんだろうよ」

 

木製の階段を降りて行くと、小部屋が現れた。

 

子供の背丈くらいの本棚には絵本が並び、

側にある箱には縫いぐるみや人形、おもちゃの刀などがパンパンに詰まっていた。

 

無造作に箱に突っ込まれていた絵本をポップは手に取った。

 

「うわー!懐かしいなこれ!俺、この本すごい好きだったんだよな」

 

絵本の表紙には「まほうつかいのでし」と書いてある。

 

ポップはゆっくりページを捲った。

 

みなしごの弱虫の男の子が、意地悪な魔法使いに弟子入りし、3つの魔法を教えてもらう。

途中で出会った小さい男の子のお母さんを助けるために、その魔法を順番に使いながら困難を切り抜け、冒険の末にドラゴンを退治する、という物語だ。

 

「どれだったかな…」

 

ジャンクが部屋の隅にある箱をひとつずつ開けて何やら探している。

 

この物語の最後、家族がいなくて寂しかった主人公は、小さい男の子ときょうだいになり、3人で楽しく暮らす。

 

ポップは、主人公が小さい男の子とシチューとパンを分け合うシーンが好きで、よく母親にシチューを作って!と頼んだ事を思い出した。

 

「あった」

 

ポップが振り向くと、ジャンクは箱をドンと床に置いた。

 

「開けてみろ」

 

ポップが蓋を開けると、箱の中には赤銅色の石が沢山入っていた。部屋のランプの灯りを反射して鈍く光っている。

 

「これって…!!」

 

ジャンクは余っている木箱に腰掛け、汗を拭った。

 

「昔、ロン・ベルクが俺はもう使わないからって俺に預けてきたんだよ。あいつ忘れてんのかな」

 

「お前がアバン先生の弟子になるって家を飛び出した後の話だ。持っていく所に持っていけばかなり高く売れただろうが、いつかきっとこんな日が来ると思ってな」

 

「なんだよ、それ。魔族って長生きすぎて忘れっぽいのか?」

 

「どうだろうな。一緒に酒を飲んだ時、お前の事を話したんだ。その時、お前の息子が俺が認める世界一の魔法使いになったら必ずこれが必要になる、って言ってたな」

 

「……」

 

「ほら、これがいるんじゃないのか。早く持ってけ」

 

「ありがとよ!親父」

 

ポップは箱を抱えて、後ろを見ずに階段を駆け上がった。

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