破邪の洞窟地下1Fー
「おっ。お前ら久しぶりだな」
飛び付いてくるスライムを無造作に足でどかしながらポップは洞窟を進んでいく。
「しかしアバン先生、やたらと心配してたけど…20階って言ったら、出てくるモンスターって言っても、せいぜいさまようよろいとかゴーレムだって言うし。先生も歳を取って心配性になったのかな?それとも俺が強くなりすぎちまっただけだったりして」
角を2〜3回曲がり、大小いくつかのトンネルを潜ったが、まだ下に続く階段は見つからない。
「まだ地下一階だよなー。こりゃー意外と骨が折れる仕事かもしれねえぞ」
洞窟内はそこまで複雑な構造ではないが、曲がりくねった道が多く、かつ曲がり角ごとに魔物が飛び出してくる。
宝箱は既に開けられているものが多く、たまにキメラのつばさや薬草が手に入るくらいで、モンスター自身もほとんどアイテムを落とさない。
洞窟内をしばらく進んで行くと不意に広い場所にぶちあたった。ひと休みしようかと思ったポップだったが、何かを思いついた。
「よし、イチかバチかだ!」
ポップは洞窟の地面に向けて両方の掌を向けた。
「おっと、威力を加減しねえとな」
「……ベタン!!」
ーーーーー
地鳴りが起き、洞窟全体が揺れる。
ポップの手から猛烈な光と共に衝撃波が巻き起こる。
衝撃波は地面をえぐり、瓦礫とともに吸い込まれる様に地下に消えていった。
「よし、これはうまくいったな」
ポップは鼻を擦ると、呪文で開けた穴の縁に這いつくばり、下の様子を伺った。下の階の地面まで見たところ6〜7メートル。どうやら2〜3階分ほど下まで穴が続いていそうだ。
「狙いどおりだ。これでラクできそうだぜ」
穴から落ちて地面に足が着く瞬間、一瞬軽くトベルーラを使い、安全に着地する。このやり方でポップは順調に下へ下へと進んでいった。
たまに驚き戸惑った様子の魔物と目が合う。
「へへへ。あいにくお前らの相手をしてるヒマなんかないんだよーだ!」
ポップが何度目かに地面に掌を向けようとした時、上からパラパラと小石の様なものが落ちてきた。
「ん?」
ポップが上を向くと、天井の穴のはるか向こうから先の尖ったツララのような大岩がいくつか猛烈な勢いで落下しているのが見えた。
「ぎょえええええええええええ!!!!」
絶叫して思わず飛び退いたポップは壁際に向かって死に物狂いで犬のように地面を這って逃げた。
背後で轟音がし、恐る恐る振り向くと、岩がぎりぎりポップの背中をかすめて地面に刺さっている。
絶句するポップ。
「こんな所で全滅したら一生の恥だぜ…」
「うん…同じ場所に穴を開け続けるのはやめよう……うん」
真っ青になりながら階段を降りるポップ。
破邪の洞窟地下15Fー