ポップが相手の様子を窺おうと顔を上げたその時、巨人は洞窟全体が震えるほどの声で咆哮した。
「オオオオオオオオオ!」
猛烈な風と衝撃波がポップの全身を襲う。
あまりの衝撃に身体が震え、足元がふらついた。頭の中でキーンと耳鳴りがする。両脚で大地をしっかりと踏みしめると、ポップは再びエネルギーを溜め始めた。
もうこれしかこの怪物を倒す術は残されていない__
歴戦の経験で培われた本能が彼にそう教えていた。
そして、ここで勝たなくてはもう後がない__
頭上で巨人がギロリとこちらを見やると、恐ろしい一つ目が青白く光りだした。明らかに攻撃体勢に入っている。
「おい…何する気だよ!」
次の瞬間、光輪が見えたと同時に
猛烈な光線がポップに向かって放たれた。
「うおっ!!!」
慌てて横に飛び退くポップ。
光線が放たれた場所に目をやると黒々とした穴が空いている。
「おいおい…まともに当たったらひとたまりもねえな…いよいよやべえかもしれねえぞ。」
あともう少し…ポップは心の中で(10、9、8…)とカウントダウンを始めた。
巨人はこちらの様子を窺っている。
時折、不気味に岩同士が擦れる音が聞こえる。
再び巨人の目が光り始めた。
「よし…!」
右手と左手に凝縮された炎と氷のエネルギーがひとつになり、それらは巨大な閃熱の弓矢へと姿を変えた。
バチバチと火花が飛び散り、今にも爆発しそうなエネルギーの塊が今まさにその力を解放されようと四方に光を放っている。
ポップは憎き巨人の顔めがけ弓を引き、叫んだ。
「メドローア!!!!!!」
恐るべき閃熱の矢は内部に大きな渦を作り、その回転の速度を上げながら巨人に向かっていく。
しかし、ほぼ同時のタイミングで、巨人の目から放射された光線が一瞬早くポップを捉える!
間一髪避けたポップだったが、放った呪文は巨人から大きく的を外れ、洞窟の壁を貫いていた。
光線を掠めたマントの端が焼け焦げ、煙が上がっている。
「…くそったれめ…!!」
ポップが拳を握り締めた。
巨人が一つ目を動かしながら言った。
「__私はお前の鏡。お前が私を捉える時、私もお前を捉えている__」
「じゃあ…まともに的を狙う事なんかできねえって事かよ…!」
ポップは地面に開いた穴を見つめながら懸命に考えた。絶体絶命のピンチ。しかし、これまでも何度もあった瞬間のはずだ。自分は一体、どう切り抜けてきた?もし、ダイだったらどうする、アバン先生だったらどうする、マトリフ師匠だったらどうする、マァムだったら…と思いを巡らせていると、不意にある考えが頭をよぎった。
「穴…的が狙えない…動くものと動かないもの…そうか!!魔法の聖水のお陰でメドローアはあと数発は打てる…じゃあ、やれるかもしれねえ!!」
巨人の方に向き直るとポップは叫んだ
「おい!この堅物の勘違い野郎!!神の使いだかなんだか知らねえが、お前をぶっ潰す方法が分かったぜ!!」
さっきまでとは別人のような顔つきでポップは全身に力を込めた。