ドラゴンクエスト ダイの大冒険Ⅱ   作:だいまどう

23 / 91
夕陽に

ポップは胃から込み上げてくる不快感に耐えながら、洞窟内をあてもなく歩いた。

 

「とりあえずここから出ねえとな…ウッ…」

 

ポップは無感情に足を進める。

もう何も考えたくない…

しかし、様々な疑問が浮かんでは消えていくのを止める事はできなかった。

 

リリルーラは成功した。

しかし、自分は何処にいたのか。

ここは何処なのか。

 

ポップにわかったのは、ダイが生きていたという事。

自分が会ったのは本物のダイであるという事。

そして、今は最悪の状況であるという事だ。

 

なぜダイは戻ってこれないのか。

おそらく、ダイは自分が現れた事そのものというより、その背後に予想されるものを恐れている。

 

そして、バーンをよく知っている様子のあの声の主…

考えたくはないが、きっとあのキルバーンを遣わせた張本人だ。

だとすると、ダイは何故…5年間も…

 

ポップは暗く湿った暗黒の世界で、冷たいグレーの瞳の女が、虚な目をしたダイの腰に手をまわし、ダイがそれを受け入れるところを想像した。

 

また吐き気が襲ってくる。

ポップは深呼吸をした。

それからは何も考えずに、ひたすらに洞窟内を歩いた。

そして階段を見つけたら上に登る、を繰り返した。

 

数時間も経っただろうか、冷静さを取り戻し始めたポップの頭の中に、ある疑念が湧いてきていた。

 

似ている。

 

この洞窟の迷路のパターン。

曲がり角で視界が開ける感じ。

何も入っていない宝箱。

モンスターが出てこない事以外はそっくりである。

 

階段を登り続け、あるフロアに達した時、ポップは確信した。

天井に見覚えのある直径5〜6メートル程の穴が空いている。

 

ポップは腕組みをしながら部屋の中をぐるぐると周り、この状況を理解しようと努めた。

しかし、考えても分からないものは分からなかった。

 

ふとポップは閃いた。

ここが今までと違っていること、

それはモンスターが出てこないこと…

それを踏まえて、試してみたい事…

 

「リレミト!」

 

ポップの体が光に包まれた。

 

気がつくとポップは地上に降り立っていた。

紛れもない破邪の洞窟の入り口である。

 

木々が風に揺れ、太陽の光がポップを照らしている。

遠くにカール王国の国旗が揺れているのが見える。

 

__地上に戻ってきたのだ。

 

「やっぱりな…リレミトが使える…それにしても…」

 

ポップの意識が揺らいでいく。

体力は限界だった。そして、あまりにも色々な事が起こりすぎた。

その場にばったりと倒れると、居眠りを始めた。

 

しばらく死んだように眠り、目を覚ましたポップは、

森の中に座り、木々の隙間から夕陽が沈むのを見つめていた。

さっきのダイの顔を思い出そうとしたが、思い出せなかった。

ダイに会いに行った事を少しだけ後悔している自分に気付くと、ポップは静かに泣いた。

涙が頰を伝い、喉の奥から嗚咽が漏れた。

手で顔を覆ったまま、しゃくりあげるように声をあげてしばらく泣いた。

 

やがて涙が枯れると、重い身体を引き摺りながらポップは帰路に着いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。