ポップは胃から込み上げてくる不快感に耐えながら、洞窟内をあてもなく歩いた。
「とりあえずここから出ねえとな…ウッ…」
ポップは無感情に足を進める。
もう何も考えたくない…
しかし、様々な疑問が浮かんでは消えていくのを止める事はできなかった。
リリルーラは成功した。
しかし、自分は何処にいたのか。
ここは何処なのか。
ポップにわかったのは、ダイが生きていたという事。
自分が会ったのは本物のダイであるという事。
そして、今は最悪の状況であるという事だ。
なぜダイは戻ってこれないのか。
おそらく、ダイは自分が現れた事そのものというより、その背後に予想されるものを恐れている。
そして、バーンをよく知っている様子のあの声の主…
考えたくはないが、きっとあのキルバーンを遣わせた張本人だ。
だとすると、ダイは何故…5年間も…
ポップは暗く湿った暗黒の世界で、冷たいグレーの瞳の女が、虚な目をしたダイの腰に手をまわし、ダイがそれを受け入れるところを想像した。
また吐き気が襲ってくる。
ポップは深呼吸をした。
それからは何も考えずに、ひたすらに洞窟内を歩いた。
そして階段を見つけたら上に登る、を繰り返した。
数時間も経っただろうか、冷静さを取り戻し始めたポップの頭の中に、ある疑念が湧いてきていた。
似ている。
この洞窟の迷路のパターン。
曲がり角で視界が開ける感じ。
何も入っていない宝箱。
モンスターが出てこない事以外はそっくりである。
階段を登り続け、あるフロアに達した時、ポップは確信した。
天井に見覚えのある直径5〜6メートル程の穴が空いている。
ポップは腕組みをしながら部屋の中をぐるぐると周り、この状況を理解しようと努めた。
しかし、考えても分からないものは分からなかった。
ふとポップは閃いた。
ここが今までと違っていること、
それはモンスターが出てこないこと…
それを踏まえて、試してみたい事…
「リレミト!」
ポップの体が光に包まれた。
気がつくとポップは地上に降り立っていた。
紛れもない破邪の洞窟の入り口である。
木々が風に揺れ、太陽の光がポップを照らしている。
遠くにカール王国の国旗が揺れているのが見える。
__地上に戻ってきたのだ。
「やっぱりな…リレミトが使える…それにしても…」
ポップの意識が揺らいでいく。
体力は限界だった。そして、あまりにも色々な事が起こりすぎた。
その場にばったりと倒れると、居眠りを始めた。
しばらく死んだように眠り、目を覚ましたポップは、
森の中に座り、木々の隙間から夕陽が沈むのを見つめていた。
さっきのダイの顔を思い出そうとしたが、思い出せなかった。
ダイに会いに行った事を少しだけ後悔している自分に気付くと、ポップは静かに泣いた。
涙が頰を伝い、喉の奥から嗚咽が漏れた。
手で顔を覆ったまま、しゃくりあげるように声をあげてしばらく泣いた。
やがて涙が枯れると、重い身体を引き摺りながらポップは帰路に着いた。