ポップはカール王国に戻ると、皆を王宮の会議室に集めた。
そして、起きた事を伝えた。
話し終えたポップが腰を下ろした後も、口を開く者はいなかった。
憔悴しているヒュンケルは、握り締めた手をテーブルに置き、顔を横に向け口を一文字に結んでいる。
目を瞑り、しばらく沈黙していたアバンが口を開いた。
「ポップ君、それで全てですか」
「……はい」
アバンはポップの後ろにまわると、肩に手を置いて言った。
「まずは……ポップ君がこうして無事に私たちの前に戻って来れた事に感謝しましょう。なにより……それがいちばんの収穫です」
耐えきれずにポップが立ち上がって言った。
「先生……ダイをどうやって取り戻すか考えましょう」
ポップの胸のアバンのしるしが揺れている。
誰のものかわからない小さな溜め息が聞こえた。
「ポップ」
「話を聞いた限り、お前がリリルーラで行った場所は魔界だ。そしてお前に話しかけてきた声の主は紛れもない、冥竜王ヴェルザーだ。──娘がいたというのは俺も知らなかったがな」
「何故……ヴェルザーなんかの……」
レオナの今にも消えてしまいそうな弱々しい呟きを無視して、ロン・ベルクは続けた。
「ヴェルザーは強力とはいえ、神によって岩の中に封印されている。魔力もそれ相応に封じ込まれているはずだ。娘も一緒であったとしても、あの大魔王バーンを屠ったダイだ。力でねじ伏せるのは容易いことではないだろう。ましてやあいつの剣も手元にあると考えれば……」
「……」
「俺もやはりダイの言葉の中にヒントがあると思っている。武力を使わずにダイを無力化させる何かがな……それがわからない限り、たとえ俺たちが魔界に乗り込んだとしても、無駄に終わる可能性が高いとは思わないか」
「ダイ君はヴェルザーの仲間になったのではなく、何かの事情で仲間にさせられている、と……彼の事ですから、争わずに済む方法を選択したのかもしれませんね──」
アバンが手袋を外しながら言った。
彼の顔にも疲れの色が滲んでいる。
「ごめんなさい……私、気分が悪くて……申しわけないけど、先に休ませてもらうわ」
そう言うとレオナは部屋を出た。
マァムは膝の上に手を置いたまま、じっと下を向いている。
「結局、何も分からなかったって事なのか……!?」
ポップがテーブルを拳で叩いた。
沈黙が流れる部屋に、不意にドアをノックする音が響いた。
「どうぞ」
アバンが答えると、部屋に入ってきたのはメルルだった。
「皆さんお久しぶりです」
「メルル……!!」
「ポップさん。お元気でしたか?」
「元気も何も、なんていうか……もう、どん底って言うか……」
「今、廊下でレオナさんとすれ違ったのですが、とても声を掛けられるような状態ではありませんでした……今にも崩れてしまいそうで…あんなレオナさん、初めて見ました……」
アバンはメルルに事の顛末を話した。
「そうだったのですね……ダイさん……」
メルルは沈痛な面持ちで言った。
「おそらくその事と関係があると思うのですが……」
彼女は手に持っていた水晶玉をテーブルに置くと、ゆっくり話し始めた。