「メルル、何か分かったか?」
ポップが待ちきれず声をかけると、メルルは水晶玉に手をかざしながら答えた。
「…竜の像…そして湖が見えます…」
ポップは頭の中に情景を思い浮かべた。
「ってことは…あっ!もしかして…」
「…テランですね」
メルルが微笑んで言った。
「近いな…」
「えっ…!?」
メルルはびっくりした顔をして後ずさった。
「なんか…すいません…」
申し訳なさそうな顔をしている。
「えっ?いや…テランならここからすぐだな、って意味だったんだけど…」
ポップは頭を掻いて言った。
「あっ…なんかもう…私ったら…恥ずかしい…!」
メルルは顔を両手で押さえると、みるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「俺がそんな事言うわけあるかよ…」
「ポップさん、たまに独り言なのか何なのか分からない時があるんですよ!」
「…こういうのなんだか懐かしいなー。3人で旅をした時を思い出すぜ」
ポップはずっと続いていた緊張がほぐれていくのを感じた。
「…2人にしてあげましょうか?」
マァムが後ろからやって来ると、ニヤニヤしながらふたりの顔を覗きこんで言った。
「もう!マァムさんからかわないで!」
ポップの顔は引き攣っている。
「おっと…こうしちゃいられねえ」
そそくさとその場を離れたポップは呼びかけた。
「みんな俺と一緒に来てくれ!場所がわかったぞ!」
ポップは部屋に閉じこもって出てこないレオナ以外の皆を、城のバルコニーに集めた。
「まとめて行けっかな…?」
自分の袖を掴ませるとルーラで翔んだ。
テラン王国_
森と湖に囲まれた神秘の国。
そしてメルル達の生まれ故郷_
地上に降り立つと、ポップ達は人影もまばらな町の北側を通り、湖に浮かぶ小さな島に向かった。
細い参道を渡った先にある祠には、竜の神が祀られている。
竜の石像の前までくると、メルルの水晶玉が光を放ち始めた。
「これは…!」
水晶玉から伸びた光が湖を照らすと、水の底から一筋の光が空に向かって伸びていった。いつの間にか辺りには靄も漂っている。
戸惑っていると、光のヴェールの中からある意外な人物が姿を見せた。
「久しぶりだな…お前達」
一同が息を飲んだ。
「話は聞いているな」
アバンがバランに会うのはこれが初めてであったが、彼がダイの父親である事はすぐに分かった。
「…あなたが竜の騎士バランだったのですね。しかし…どうしてあなたがここに?」
「…私は竜の騎士としての生涯を終え、この世界での実体を失った。しかし、その後、天界で新たな生を受けた。私の竜の騎士としての役目はまだ終わっていない、そう神々が判断したからだ。そして、私は最後の竜の騎士であるダイの魂を見守っていた…そんな折に命が下ったのだ」
「あの…ダイに何が起こったんですか?」
マァムが尋ねた。
「それは私から説明しましょう」
バランの周りの靄が生き物のように動いたかと思うと、あっという間に竜の姿に形を変えた。
その佇まいは魔王軍のモンスター等とは明らかに違う、気品と知性を窺わせる。
「あなたは…もしやマザードラゴンでは…?」
メルルがおずおずとした調子で訊くと、竜は穏やかに答えた。
「…昔そう呼ばれていた事もありました。しかし、今はバラン同様、神の計らいによって、僅かな間だけ魂を繋ぎ止めている、竜の紛い物に過ぎません」
「そんな事…」
マザードラゴンは落ち着いた様子で続けた。
「まず、地上の皆さんに今起きている事についてお話しします」
皆の顔つきが変わった。