「ヴェルザー……何か小細工をしたな……!!正々堂々と勝負しろ!!」
クロコダインが怒りに満ちた顔で叫んだ。
「──正々堂々……?何をいう……これは戦略と言うんだ。力で押すしか能がないお前らには分からんかも知れんがな」
「力で押すだけか……悪いが生憎、それ以外の戦い方を知らなくてな」
ようやく立ち上がったラーハルトが息を切らして言った。
「そんな哀れなお前達が死ぬ前に……望みを叶えてやろう」
ヴェルザーが言うと、ベラは虚空に手をかざした。
そのまま弧を描くようにゆっくり掌を動かすと、軌道に沿って明るい山吹色の光の輪が浮き出てきた。
輪の縁には夥しい量の火花が飛び散っており、それらは円を中心に車のように高速で回転しているように見える。
ベラが手を下ろすと、光の輪の中が一瞬光り、トンネルのように別の場所と繋がった。
「……!!」
「感動のご対面だろ……?」
輪の向こうに見えたのはダイだった。
驚いた様子でこちらを向いている。
「……クロコダイン……ラーハルトも……!!」
見慣れたダイの顔を見つけると、ふたりは一瞬呆気に取られた。
「ダイ!今、助けてやる!!」
先に我に帰ったクロコダインが手を伸ばしたが、輪の中の像は水面のように歪んでしまい、向こう側に手を伸ばす事は出来なかった。
「おっと……『勝てたら』と言ったはずだ。今はこうしてお互いの姿を魔力によって映しているに過ぎない」
ヴェルザーがいかにも残念そうに言った。
「さぁ。第2ラウンドだったな。お前達の戦いっぷりをダイに見せてやるがいい……」
「くっ……ふざけおって……」
「──轟火!!!」
クロコダインが真上から斧を振り下ろすと、燃え盛る火の玉が光の尾を引きながらベラに向かっていった。
ベラは落ち着き払った様子で、火の玉を睨むと、真空波で炎の勢いを殺してしまった。
「ちいっ……」
様子を見ていたラーハルトが悔しそうに歯軋りをした。
ベラは両手を顔の横に掲げ魔力を集中した。
バチバチと火花が散り、凝縮されたエネルギーが光を放っている。
そして両手を合わせ構えると叫んだ。
「イオナズン〈極大爆裂呪文〉!!」
一つとなった巨大な光の玉が凄まじい勢いで迫り、ふたりを飲み込んだ。
「───ぐあっ!!」
その直後、凄まじい爆音が鳴り響いた。
爆風が瓦礫もろとも地表を吹き飛ばすと、ふたりは抉れた地面の上にゴミのように転がっていた。
「……うっ……」
ダイは苦しそうな表情をすると、耐えきれずに目の前の光景から目を逸らした。
「やめろ……!やめろよ……」
ベラはクロコダインに近づくと右腕を掴んで身体を持ち上げた。反応がないのを確認すると、腕を掴んだまま真空波を放った。
「ぐあああああああああああ!!!!!」
切り刻まれたクロコダインの腕から血が吹き出した。
「お願いだ……やめてくれよ……」
「……もう戦わないで欲しいのに……」
今にも泣き出しそうになっているダイが絞り出すように懇願した。
「おっと……これはいかん……腕が無くなってしまうかもしれんな」
ダイの声を無視して、ヴェルザーの冷酷な声が響く。
(お父様……これ以上は……)
ベラが父にテレパシーで話しかけた。
(まだだ……まだバランの部下がいる──)
その時、破邪の洞窟にいるポップに異変が起きた。
「……なんだ……?なんか今物凄く邪悪なエネルギーを感じ……」
「……ダイなのか……?いや……ヴェルザーか……」
「ダイ───」
ポップの脳裏に今にも泣き出しそうなダイの顔が浮かんだ。
「今……助けてやる……」