「そういえばさ、お前……最近ヒュンケルの野郎には会ったか?」
「うん、この前ね」
(げっ……!あるのかよ)
「ブロキーナ老師に会う用事があって、ロモスに行ったんだけど──途中の森でばったりヒュンケルに会ったの」
「へ……へぇ〜」
「老師が住んでいる山の麓にはケガや病気に効く温泉があるのよ。彼、きっと湯治に来てたんだと思う。少しは自分の身体を気遣うようになったみたいでちょっと安心したわ」
(か……彼!?)
ポップの顔が引き攣っている。
「もう魔王軍も攻めてこないし、無茶をする事も無いだろうけどね」
「ああ、そ、そりゃ〜良かった……よな、うん!!」
「なんか……聞かなきゃよかった」
「えっ?」
(しまった……!心の声がっ!)
「いや、何でもねえよ!ハハハハ」
橋の袂にさしかかり、重厚な城壁に囲まれたベンガーナ城が目前に聳え立った。
城の敷地内に戦車が見える。
どうやら動いてはいない様だが、数十台はあるであろう戦車が威嚇するように砲台をこちらに向けている様は嫌でもこちらの緊張感を高める。
「なんかパプニカなんかとは大違いだよな。城に入るのにこんなに緊張する事なんか無かったぜ」
「そうね。平和になったっていうのに何でかしら」
しばらく橋を歩くと城門が見える。
槍を構えた門番が2人。
「これ……俺たち入れんのかなぁ?」
「そうねーポップは入れてもらえないかもね」
「なんでだよ!」
ケタケタとマァムが笑う。
門番がこちらに気付いた。
「お前達、ベンガーナ城に何の用だ」
マァムが先に口を開いた。
「私達、5年前に大魔王と戦った勇者ダイの仲間です。パプニカ国のレオナ姫とここで待ち合わせをしているのですが、お城に入れて頂くことはできますでしょうか」
門番たちは顔を見合わせ、何やら小声で相談している。
「あなた方はマァム様と……ポ……ポッポ様ですね」
「はい」
「王よりその様な方が来られたら通すようにと言われています。どうぞお入りください」
「ありがとうございます」
城の中に入り長い廊下を歩く。
しばらく無言の2人だったが、ポップが先に口を開いた。
「──ってか、なんでオレの名前だけ間違えんだよ!」
「あの門番なんなんだよ!ポッポってなんだよ!オレはハトか!」
「良かったじゃない。ポップひとりで来てたら多分牢屋に入れられてたわよ」
「一文字違いで」
「うるせぇ〜!!」
マァムが口を押さえながら爆笑したいのを堪えている。
「大魔王バーンだって……オレの名前を間違えなかったぞ!!」
「ふはっ……フフッちょっとやめてよ……!!」
マァムがついに堪え切れなくなって笑い出した。
腹を抱えてピクピクしている。
廊下を通り抜けると赤い絨毯の間が現れた。
両脇に槍を持った兵士達が怪訝そうにこちらを見ている。
「よくいらっしゃいました。王様が御二人にお会いしたいとのことです」
「ご丁寧にありがとうございます」
まだ少し余韻を引きずっているマァムは顔を元に戻しながら答えた。
「──ポッポ様も長旅お疲れ様でした」
思わずマァムが吹き出すと、ポッポ、いやポップがイラついた様子で口を開いた。
「あのなぁ〜!オレの名前はポップ!大魔道士ポップ様だ!」
「そ……それは……!大変失礼いたしました……!!」
敬礼する兵士を見た途端、マァムはもう限界だと悟ったのか、顔を伏せ微かに震えた──