「来るぞ!!」
クロコダインが叫ぶとふたりは武器を構え戦闘態勢に入った。
しかし予想と裏腹に、竜はふたりと距離が縮まるにつれてその速度を落とし、あまつさえ彼らの側にまるで犬のように腹這いになってしまった。
ふたりは面食らった──
「──少なくとも敵意はない、と考えて良いのだろうか……」
ラーハルトが眉間に皺を寄せて呟いた。
「そうらしいな……」
ふたりが考え込んでいると、竜は促すようにしきりに背中の方にくいくいと顎を動かし始めた。
「……乗れ、という事か……?」
クロコダインが恐るおそる口にすると、竜は少し高めの声で唸った。
「しかし……何処に連れて行かれるのか分かったものではないぞ……?」
未だ事態が飲み込めないふたりにしびれを切らしたのか、竜はふたりを咥えるとそのまま背中に乗せてしまった。
パニックに陥ったふたりをよそに、竜はそのまま上空に浮かぶとやや低空で飛び始めた。
為されるがままのふたりは振り落とされないように必死にしがみついている。
そのまましばらく敷地内をぐるぐると飛び回っていたが、途中でピクンと何かに反応し急停止した。
「ディーノ様!!」
地面にひれ伏しているダイを見つけると、ラーハルトは叫んだ。
クロコダインは隣でじっと顔を伏せたままである。
ダイは両膝をつき、まるで大地に祈りを捧げる異教徒のような格好で突っ伏したまま動かない──
どうやら気を失ってしまっているようだ。
竜はそろそろと側に近づくとダイを咥え、今度は背中に乗せずそのまま口の中に隠した。
ラーハルトはこの間、竜の様子をまじまじと観察した。
ギリギリまで身を乗り出すと、下の方の鱗の中に何か光るものが引っ掛かっている事に気がついた。
目を凝らすと、ラーハルトは思わず息を呑んだ。
それは紛れもない──アバンのしるしだった。
竜はヴェルザーの居城を後にすると、東に進んだ。
黒々とした大地が眼下に広がっている。
煙突の煙が遠くに見える。
位置的に考えて、さきほどまでふたりが滞在していた村である。
竜は何を思ったか、スピードを緩め空中に静止すると、いきり立った様子で両方の翼を広げ始めた。
何らかの攻撃態勢に入っているようだ。
突然上体を起こされ背中からずり落ちそうになったふたりは必死で鬣(たてがみ)に掴まった。
ラーハルトは竜の背中にぴったりとしがみつくと自分でもびっくりするくらいの大声で叫んだ。
「ポップ!!やり過ぎだ!!良い加減にしろ!!」
ビクッと反応した竜はくるりと旋回すると空高く舞い上がった。
「ポップだって……?」
ようやく顔を上げたクロコダインが言った。
隣に居る、ラーハルトの横顔を一瞥すると不思議そうな顔で訊いた。
「──お前泣いているのか……?」
「バカ言え──そんな訳あるか……」
巨大な偽りの白い太陽を黒いシルエットが横切っていった。
そして、3人の勇者を乗せた竜はスピードを上げると光の中に消えた。