ドラゴンクエスト ダイの大冒険Ⅱ   作:だいまどう

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勇者の休日

「あれ?こっちのはずなんだけどな──」

 

「ポップ……ほんとに大丈夫?」

 

ふたりの間をタヌキがそそくさと横切っていく。

 

勇者一行はロモスの山奥で道に迷っていた──

 

今にも泣き出しそうな顔でポップが叫ぶ。

 

「あ〜!もうこの地図どう見れば良いんだよ……!」

 

「こっちが北って書いてあるけど」

 

「北ってどっちだよ!」

 

「ええ──!今までそれも分からないで進んでたの!?」

 

「うっ……うるせえな!俺の勘は誰よりも当たるんだよ!」

 

超絶方向音痴のポップ達が向かおうとしているのは、ロモス地方に伝わる秘湯「つやつやの湯」である。

 

事の発端は、ポップの思い付きだった。

せっかくダイが帰って来たのだから、これまで出来なかった事をしよう!と言い出したのだ。

 

渓流釣りがまず候補に上がったが、この時期は水温も低く、シーズンにはまだ早いということで却下。

 

絵を描いてみようという案もあった。

しかし、自分たちが描いた絵のあまりの下手さにふたりとも黙り込んでしまい、これも却下。

 

(試しにバダックを描いた絵をマァムに見せたところ、嬉しそうに「うまーい!これ『くさったしたい』よね!」と言われたのが痛恨の一撃となった)

 

そして、最後に残った候補が温泉だった。

先日のパーティでヒュンケルとたまたまその話になり、教えてもらったのだ。

その時に手書きの地図をもらっていた。

(なぜかエイミから手渡された)

 

ヒュンケルによれば、この温泉に入ればどんな傷の治りも早くなり、肌がつやつやになるのだという。

 

「オレはバーンパレスでの戦いの後、もう二度と戦えない身体だった──最初は半信半疑だったよ」

 

いつになく熱っぽく語るヒュンケルの話にふたりは引き込まれた──

 

ダイは前日にポップの家に泊まり、朝早くに意気揚々とランカークスを出発した。

しかし、昼をとうに過ぎ、あと数時間もすれば陽も暮れようかという状況の中、ふたりは未だ「つやつやの湯」に辿り着けずにいた。

 

「ダイ……やっぱおれもう……ダメかもしれねえ──おれの冒険は……ここまでだぜ……」

 

ポップが憔悴した顔で言うとダイが慌てて嗜めた。

 

「そんな事言うなよポップ!おれたち約束したじゃないか。最後まで諦めないって──」

 

「でも……どっちが北かも解らねえようじゃ……」

 

「見てよ。この地図だと、ロモス王国がここだろ?で、向こうにロモスの見張り塔が見えるから、おれたちそこまで外れた道を歩いてはいないと思うんだ」

 

「確かに……!」

 

ポップの顔に生気が戻って来たのを見て、ダイはホッとした。

 

「そうだ……もう何時間かかったって構わねえ──おれたちふたりは何度も奇跡を起こして来たんだもんな!」

 

「ポップ。おれたち……最高の友だちだよ」

 

「ダイ……わりい……おれ……!」

 

とめどなく流れる涙と鼻水をそのままに、ポップはダイと熱い抱擁を交わした。

 

その時、後ろから人の足音が聞こえた。

落ち葉や木の枝を踏みしめる音がだんだん近くなってくる。

 

ふたりが振り返ろうと思ったのと同時に、後ろから声が聞こえて来た。

 

「あれ!?あんた達ここで何やってんの?」

 

声のする方を見ると、アウトドアファッションに身を包んだマァムとメルルがそこにいた。

 

「マァム……!!」

 

ポップが泣きながらマァムに走り寄るのをダイは冷めた目で見つめていた──

 

(うわ……なんか泣いてる──)

 

マァムが少し引き気味に身構えていると、後ろでメルルが手を振った。

 

「ポップさん!ダイさん!」

 

「メルル!久しぶり!」

 

「ダイさん……本当に帰ってきたんですね……」

 

「うん……心配かけてごめん」

 

「また会える日が来るなんて……本当に良かった……」

 

メルルはダイの前に進み出ると目に涙を溜め、ダイの手を両手で握った。

 

その後ろでは泣きながら抱きついてくるポップをマァムが必死に引き剥がそうとしている。

 

 

「──偶然ね!あんた達もつやつやの湯?」

 

「うん。マァム達もヒュンケルから聞いたの?」

 

ダイが訊くと、マァムは水筒の水を飲みながら答えた。

 

「前にこの辺でばったりヒュンケルに会ったときに聞いたのよ。ブロキーナ老師の住んでるところからそんなに離れてないみたいだったし、なんとなく場所の見当はついてたから今度一緒に行こう、ってメルルと話してたの」

 

「そうだったんだ」

 

「でもあんた達、私達が来なかったらずっと森をさまようことになってたわね」

 

ダイとポップは面目ない、と言う顔で下を向いた。

 

「ポップさん達が声をかけてくれれば、みんなで一緒に出発できてたかもしれませんね──」

 

「そうよ。あんたの方向音痴は分かってるんだから。5年前ダイを探して3人で旅をした時だって、結局メルルの占いに頼ってたじゃない」

 

「みんな、おれのためにそこまでしてくれてたんだ……」

 

ダイが申し訳なさそうに言った。

 

「そんなの気にしなくて良いわよ!こうしてダイが戻って来たんだから結果オーライよね」

 

メルルもニコニコして頷いた。

 

「さぁ!行きましょう。ぐずぐずしてると日が暮れちゃうもんね」

 

4人になった勇者一行は、マァムを先頭に秘湯「つやつやの湯」を目指して山道を進んでいった。

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