大きな窓のある応接室に通された2人は、豪奢なソファに腰掛け、王が来るのを待った。
案内をしてくれた従者の話によると、どうやらレオナは気球でここに来るらしい。
普段はあまり使わない半分物置きのようになっている部屋だが、この方角からだとパプニカ方面がよく見えるとのことだ。
日はまだ高く、大きな窓から差し込む光が、部屋に佇む2人の影をくっきりと映し出している。
「しかしすげえ椅子だな〜」
ポップとマァムは背もたれに身体を埋めると、顔を見合わせた。
「ベンガーナってなんか私、好き。みんなセカセカしているけど、気取ってなくて」
「オレは嫌い」
マァムが微笑むと、後ろでドアが開く音がした。
ひとりやって来たベンガーナ王は眉間にシワをよせ、難しそうな顔をしている。
威圧感の塊のような顔を近づけ、2人の顔を代わる代わる覗き込むと、にっこり微笑んで言った。
「やぁ!来たな!伝説の勇者たち!ようこそベンガーナへ!」
「まぁ……勇者はいねえけど……」
「もちろん、儂は君らの勝利を疑わなかったよ!でも本当に世界を救ってしまうとはな!我が国の民も皆、ダイ君を初め、君らの事を英雄と崇めておるよ」
微笑むマァムの隣で、ポップは5年前の強すぎるダイに怯え泣いていた街角の少女のことを思い出していた。
彼女は今どうしているのだろう。
あの子もダイの事を英雄だと思っているのだろうか。
大魔王バーンやマトリフの言葉が頭をよぎる。
ダイが帰ってきたなら、きっとこの町の人々は喜んで迎えるのだろう。
でも、当のダイがこの場にいたら一体どう思っただろうか。
「ポップ何考えてるの?」
「いや……ダイと来たかったな、って思ってさ──」
「そうよね。みんな歓迎してくれたでしょうね」
「ああ、そうだな」
その時、外から兵士の声が聞こえてきた。
「パプニカ方面より気球が接近中!」
「レオナだ!」
2人は窓に駆け寄った。
「窓の横のドアからバルコニーに出られるぞ」
王が部屋の隅の暗緑色のドアを指差した。
ポップがドアを開けると、ドアの隙間から強い光が差し込んできた。
2人は思わず目を閉じる。
薄目を明けつつ、そろそろとドアの外に出ると、ふたりの目に山々の稜線と吸い込まれるような青空が目に飛び込んで来た。
そして遠くにはエメラルドブルーの海──
「うわぁー!」
「綺麗!」
「考えてみたら向こうは南国なんだよな。」
空を見上げると遠くに薄く白い点が見える。
気球か鳥かよくわからないくらいの大きさだが、だんだんと近づいて来ているような気がする。
王が何か手を挙げて合図をした──
数秒後、地響きのような音が鳴りはじめた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「何……!?この音……」
マァムが不安そうな顔で呟いた。