「はて……?何か気に障るような事を言いましたかね──」
ブラフマは本当に訳がわからないという様子で聞き返した。
「分からねえのか……?こいつをこんな風にしたのはお前なんだろ──?」
ヒムは怒りを抑えながら、震える手で目の前でもがいている両面ドラキーを指差した。
体力が落ちているのか、最初に見た時と比べてだいぶ羽の動かし方が弱々しくなっている。
ブラフマは今初めて気付いた、という顔をして言った。
「──ああ、そのモンスターですか。ちょうど一緒にいたものですから、合成素材にうってつけだと思いまして。でも上手くいきませんでしたね。同種族でもこういう事があるのだと勉強になりましたよ」
そう言って彼はくっくっと笑った。
絶句するふたり──
「──おい貴様……いったい何者だ!!」
チウが叫ぶと、ブラフマは少し面倒臭そうに答えた。
「何者──。先ほどお話したように魔界から来たというだけではダメでしょうか─」
ヒムはもう無理だ、と言うように頭を左右に振ると、チウを片手で制するジェスチャーをした。
「ああそうか──じゃあ──言いたくなるようにしてやるぜ!!」
激昂したヒムのオリハルコンの身体が一瞬にして闘気に包まれた。
「ほう……」
ブラフマは少し驚いた顔をすると、珠数の太いネックレスに指で触りながらやれやれというように呟いた。
「あーあ。しかし、なんでみんな抵抗しようとするかなあ……ヴェルザー達にせよ何にせよ──僕はダイくんって子を探してるだけなんだけどなあ──」
「なあ。おめえは──生き物の命を、一体何だと思ってんだ──?」
ブラフマは嗜めるような口調で続ける。
「ねえ。怒ってるみたいだけど、君とこのモンスターと一体どういう関係があるっていうの?──ああ、わかった!もしかすると君らもモンスターなのかな?知能が高そうだったから気付かなかったよ。そっちのネズミ君はよく分からないけど──」
「うるせえ!いいから答えろって言ってんだよ!!──このクズ野郎!!」
ヒムが拳を振り上げ飛びかかった。
再びカール王宮・病室──
「ダイ君、さっきヴェルザーが話していたという地震の件について他に知っていることはありませんか?」
アバンは緊迫した表情で訊くと、ダイは悲しそうに首を振った。
「おれ、恥ずかしいけど詳しいことが全然分かってなくて……その第3の勢力っていうのも"その時がくれば嫌でもわかる"としか教えてくれなかったんだ」
「ふむ──ベラは何か知っていますか?」
ベラは少し考えてから答えた。
「ビシュヌ達は──その昔ひとつだった地上と魔界を繋げようとしているのだ、と父から聞いた事があります。魔界の中でも、地上との距離が非常に近くなる特別な座標があるそうで、その場所を彼らは独自に研究していた、と聞きます。地震はその実験によるものとも──」
「なるほど。そう考えると、今回地震が多く観測されている地域は、魔界との距離が近い場所である可能性がありますね……カール王国東部の破邪の洞窟付近、リンガイア王国南東のギュータ地方、ベンガーナ王国南端のアルゴ岬、ロモス王国南の海域のデルムリン島……」
アバンが何か思いついたようにポンと手を叩いた。
「ギュータにかつて存在した逢魔窟は確かに魔界へと続いている可能性が高いと言われていましたし、アルゴ岬は言わずもがな竜の騎士と縁が深い場所ですね……」
「そういえば、おれ達がダイを助けに行った時の魔界の入り口は破邪の洞窟の地下だったな──リリルーラを使ったのはダイの剣があった場所だから洞窟からは少し離れてたけど」
ポップの言葉にクロコダインも頷いた。
「おれ──レオナが賢者になる儀式をしたデルムリン島の大穴の奥は魔界と繋がってるかもしれない、ってじいちゃんから聞いた事があるよ!」
ダイとレオナも顔を見合わせた。
「これらの場所が何かしらの魔力を増幅させる力がある土地であったと考えると──ふむふむ。話がだいぶ繋がってきましたね──」
その時、微かに部屋が揺れた。