「──なんだ?また地震か?」
ポップが天井を見上げて呟くと、窓から急に強い光が差し込んできた。
「うわっ!」
窓の向かいにいたダイが悲鳴を上げ、そばにいたベラも慌てた様子でシーツを被った。
太陽の光にしては眩しすぎる。
その場にいる全員が目を瞑った。
全てが光に満たされていく──
恐るおそる目を開けたダイたちが見たのは、ダイたち以外のものの輪郭が消え、白一色で塗りつぶされた世界だった。
どこまでも続く白一色の世界──
何処を見て良いか分からず、ダイたちはお互いの顔を見合った。
はっと気づいたダイがベラに耳打ちした。
「ベラ、眩しくないから大丈夫だよ──」
ベラはシーツを取り、辺りを見回すと、不思議そうな顔で呟いた。
「これは──太陽の光……?」
「どうやら違うみたいよ──」
代わりにレオナが答えた。
クロコダインは目を瞑ったまま何か低い声で唸っている。
アバンが遠くの方を見て言った。
「先程の光は──精霊の祝福の光に似ていました。破邪呪文の契約をした時と同じような。しかし、あのような強い光は──」
すると、不意にダイたちの頭の中に風の音とも波の音ともつかないノイズが聞こえてきた。
そして、男性とも女性ともつかない威厳のある声がダイたちに語りかけてきた。
──皆さん、私は精霊ルビス。今起きている事をお伝えします──
──今あなたたちの前に立ちはだかろうとしている邪悪な者──ビシュヌは元々は非力な魔族でしたが、天界よりある物を盗みました──
それは「進化の秘宝」と呼ばれるもので、神の意思により、生き物を神に近い存在に進化させる事ができる神々の秘宝です──
今、魔界のバランスはかつてないほどに大きく崩れています。
かつて、大魔王バーン、冥竜王ヴェルザー、そしてビシュヌと三つ巴の勢力がお互いを監視し合う事でバランスが保たれていました。
しかし、バーンが斃れ、ヴェルザーが力を失っている今、ビシュヌとその仲間──ビシュヌ、シヴァ、ブラフマの3人──は進化の秘宝を使い、畏れ多くも新しい神に成り替わろうとしています。
そして、地上と魔界の両方を破壊し、この世界を自分達に都合のいいものに作り変えるつもりです──
勇者ダイとその絆の光に導かれし皆さん──
「進化の秘宝」を取り戻し、この世界に均衡を取り戻して下さい。
マザードラゴンが力を失おうとしているのは、進化の秘宝が邪悪な物の手に渡ってしまったことで、本来の秘宝の力が発揮出来なくなってしまったからです。
なぜなら、マザードラゴンこそが進化の秘宝により神の手によって生み出された存在だからです──
「進化の秘宝」は神に近い存在になれるとはいえ、神の意志が介入しない事には不完全な力しか発揮出来ません。
諦めなければ、必ず皆さんに勝機があります──
神々の光をあなた達に──
そして全てが正しい道に導かれますように──
声の主が言い終わると、部屋はいつの間にか元に戻っていた。
窓から見える景色も同様である。
しばらく沈黙が続いた後、ポップが口火を切った。
「──なあ、今の……みんな、聞こえたよな──?」
黙って全員が頷いた。
「その──ビシュヌって奴、相当やべえ奴なんじゃねえか──?」
「地上を支配する、じゃなくて全部を破壊して作り変える、って言ってたわよね……」
レオナが眉間に皺を寄せた。
「オレには話が大きすぎてよく分からん──何をどうすれば良いのか──」
クロコダインは困った様子で首を捻っている。
「──多分、今ビシュヌ達の関心事はダイ様のことだと思います……地上を制圧するのにいちばん脅威になると考えているはずですし、どんな手を使ってでも探して消したいと思っているでしょう。あいつらのうち、誰なのかは分かりませんが、私もダイ様の居場所を聞かれて──」
ベラはそう言うとまだ傷が痛むのか、包帯を巻いている頭の片側を押さえた。
「うーん……彼らが地上でダイ君を探すとしたら、まずどこから探すか──ですね──」
アバンは顎に手を当てて考えている。
デルムリン島──
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
ブラフマが身構えるより早く、ヒムの闘気のこもった左ストレートが顔に命中した。
ブラフマは川の向こう岸まで吹き飛び、岩壁に激突した。
壁に叩きつけられ、ブラフマは動く事ができない。
「見たか!舐めやがって……!」
「ヒムちゃん!良いぞ!やっちゃえ!!」
チウが歓声を上げた。
ヒムがすかさず追い討ちをかけようと川を飛び越え、2発目がブラフマのボディに当たる瞬間──
「うっ──!!」
突然何もないところから爆発が起きた。
咄嗟に飛び退いたヒムの左腕にヒビが入っている。
「貴様……今、何をしやがった?」
ブラフマは顔を押さながら起き上がった。
「いててて──いきなり殴りましたね──」
彼の手に岩の破片が握られている。