ブラフマはゆっくりと口の端についている血を手で拭うと、不敵な微笑みを浮かべた。
「──そういえば、私が何者か知りたいと言っていましたね──」
彼は岩のかけらを握り何かを呟くと、手の内側が一瞬光った。
そして手を開くと──その岩はなんと小さなばくだんいわに変わっていた。
ブラフマの手の上で釣り上がった小さな目がギロリとヒムを睨んでいる。
「うっ──!」
ヒムが怯んでいると、ブラフマは周りに飛び散っている岩を次々とばくだんいわに変えていった。
「ふふ。地上はやっぱり違いますね。中でもこの島は『宝庫』ですよ。全てに生命の息吹が感じられる──魔界だとこうはいきませんからね──」
彼は満足そうに微笑むと、ごろごろと足下に転がるばくだんいわを眺めて言った。
「こんな事もできるんですよ」
彼は4〜5個のばくだんいわを集めると、手をかざした。
するとあっという間に普通サイズのばくだんいわになった。
「そして──こんな事もね」
彼はさらにもうひとつ普通サイズのばくだんいわを生み出すと、それらのばくだんいわのそれぞれに片手をかざした。
すると──
ふたつのばくだんいわは合成され、禍々しい赤い身体のメガザルロックへと姿を変えた。
「あーあ。これじゃ迂闊に手を出せなくなっちゃいましたね──」
目を白黒させながらその様子を見ているヒムとチウに気付くと、ブラフマは楽しそうに言った。
「私が何者か──そうだな。いちばん近いのは神様、ってとこかな──?」
「フン!ただのばくだんいわだろ?確か、こちらから攻撃しなければなんて事はないはずだぞ!!」
さっきまで呆気に取られていたチウが言い返すと、ブラフマはやれやれ、と言うようにため息をついた。
「私が生み出せるのがばくだんいわだけだと思いましたか──?」
そう言うと、彼は地面に手をあてて何か呟いた。
すると間も無く彼の周りの地面は水のように緩くなり、泥沼になってしまった。
さらにポコポコと表面にガスのようなものが発生している。
しばらくすると、地面からにょきっと泥にまみれた手が生えてきた。
ひとつ出てきたと思うと、それは次から次へと仲間を呼ぶように増えていった。
気がつくと、あっという間にチウの周りを7〜8体のマドハンドが囲んでしまった。
次の瞬間、泥にまみれた不気味な手が、チウの両足を掴んだ。
「うあっ!!」
マドハンドは寄ってたかって地中にチウを引き摺り込もうとしている。
「助けて!ヒムちゃん!」
そう言っている間にチウは腰までぬかるみに浸かってしまっている。
ヒムはチウに群がるマドハンドを一体ずつ突きで倒していった。
「くそ!こいつら──弱いくせに──次から次へと──」
チウはすでに胸まで地中に埋まってしまっていた。
「ほらほら。早くしないとまた仲間を呼んじゃいますよ──」
ブラフマはその様子を愉快そうに眺めている。
ヒムが最後のマドハンドを倒そうと、拳を振り上げた瞬間、横から何かが飛び込んできた。
メガザルロックの人を嘲るような黄色い目がヒムを捉えた──
「おっと!いけない!手が滑ってしまいました」
ヒムの拳とマドハンドの間に突然滑り込んできたメガザルロックにヒムの拳がまともに当たってしまった。
そして次の瞬間──大爆発が起きた。
猛烈な風と光がチウとヒムを襲う──
ふたりがやっとのことで目を開けると、飛び込んできたのは悪夢のような蘇ったマドハンドの大軍だった。
再びチウに絡みつくマドハンドたち。
チウを爆発から庇ったヒムの身体にはいくつもヒビが入っている。
「ああ!!ちくしょう──!!!」
「あーあ。またやり直しですねえ……可哀想に」
ブラフマが首から下げている数珠を弄びながら言った。
「ヒムさんでしたっけ。あなたは一対一なら強いかもしれませんが、お見かけしたところ、スピードはあるものの全体的に攻撃が大振りで隙が多く、さらに呪文など全体攻撃をする術もないようです。ただ強いモンスターをぶつけるより、こういう戦い方が有効な場合もあるんですよ」
そう言い終わると、ブラフマは死に物狂いで拳を振るい続けるヒムに顔を近づけて訊いた。
「──で、そろそろダイ君の居場所を言う気になりましたか?」
彼の手には小さなばくだんいわが握られている。