デルムリン島──
聖地「地の穴」
古くからの言い伝えでは地の神に最も近い場所とされ、また神の力と魔の力が出会う場所とも言われている。
この場所は島の火山帯に直結しており、島のモンスター達も滅多に近付かない。
荒々しい山肌のあちこちからは白煙が立ち上っており、どこか魔界を彷彿とさせる雰囲気もある。
5年前、ここでレオナはパプニカ王国の王位継承の為、賢者となる為の儀式を行った。
しかし、現在は立ち入るものもなく、その禍々しい洞窟の入り口はその後ブラス達によって大岩で閉ざされていた。
ダイ達が異変が無いか辺りを調べていると、突然アバンが皆の注意を促した。
「──これを見て下さい」
彼はじっと岩の一部分を見つめている。
アバンの指差す方を見ると、岩と入り口との間に人がぎりぎり通れるくらいの隙間できている箇所がある。
島に住む動物やモンスター程度では到底、ここまで大きい岩を動かす事などできないだろう。
「うむ……前にワシらがここを封印した時はこんな隙間は無かったような気がするのう──」
「確かに、岩を置く時に俺とヒムで隙間が無いか確認した筈だ──」
ブラスとクロコダインが首を捻った。
ダイは、その隙間から僅かに漂ってくるひんやりとした空気の中に、不穏なものが混じっていることを直感的に感じとった──
クロコダインとラーハルトが岩を持ち上げ、洞窟の入り口が露わになると、中からコウモリが大量に飛び出してきた。
レオナが思わず仰け反っていると、ブラスは神妙な顔で言った。
「悪いが、ワシがついていけるのはここ迄じゃ──この先は何が起きるか分からん。悪いが、お前たちに託すより他にない……」
「じいちゃんありがとう。ヒムや島の皆を助けられるように──おれ、精一杯やってみるよ」
ダイ達は茶褐色の溶岩で囲まれた道を奥へと進んでいった。
洞窟の中は人が横に数人が並んで通れるくらいの広さがあり、全体的にゆったりとした下り坂になっている。
洞窟の奥の方は生き物のいる気配はなく、壁にはヤモリ1匹歩いていない。
「ダイ。何か感じるか?」
クロコダインが辺りをを見回しながら聞いた。
「いや……特にまだ何も──」
曲がりくねった道を進む途中、何度も道が分岐している箇所が現れた。
その度ダイは記憶を辿り、進んで行く。
しばらく行くと大伽藍に突き当たった。
高い天井からは様々な方向から突き出た岩が重なり、天然の芸術とも言うべき複雑な色と模様が描き出されていた。
そして、いちばん奥の壁際、両側からまるで両の掌で庇を作るような形で出っ張っている岩の隙間に、石造りの祭壇はあった。
地の神を模った像が置かれ、その上方の壁には地上と魔界を統べる神々達の図が彫られている。
祭壇の手前には白墨で描かれたとみられる魔法陣の跡があり、その中に儀式用の蝋燭や供物が朽ちたものが転がっていた。
「──昔儀式をした場所ね──懐かしい……」
レオナが感慨深げに言った。
「昔はもっと恐ろしい場所と感じたけど、今見てみるとそこまででじゃないわね。ダイ君はあの時のこと覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。レオナと初めて会った日のことだもん──あの時もおれがレオナ達を案内したんだよね」
「あの時、私の為に一生懸命戦ってくれたっけ……あんなちっちゃかったダイ君がこんなに頼り甲斐のある男の子になるなんてね……」
レオナはそう感慨深げに言うと、悔しいでしょと言わんばかりにちらりと後ろにいるベラを見た。
ライバルは黙って辺りを見回している。
ダイも周囲の様子を伺ったが、今の所特に変わった点は見られないようだ。
「ここは魔界のマグマが流れ込んでいるかも、ってじいちゃんが言ってたけど、それも確かめようがないよね──」
ダイはため息をついて、地面に胡座をかいた。
「時にダイ様──差し出がましい口をきいて申し訳無いのですが──」
ラーハルトが取り澄ました顔で言うと、皆の目線がふたりに集まった。
「本当にこの女も連れて行くのですか?」