ダイ、アバン、レオナ、クロコダイン、ラーハルト、そしてベラの6人は壁の奥に続く道を進んで行った。
「──もう溶岩は流れてこないだろうな……」
「ああ多分な──」
クロコダインとラーハルトの会話を聞いて、レオナは思わず身震いした。
まっすぐに続く道は段々と狭くなっていき、行き止まりとなった。
「……何か怪しいですね」
皆で辺りの様子を調べると、壁の一部を四角く囲むように不自然に亀裂の入った場所が見つかった。
「ここだけまるで後から切り取られたように見えるわね」
何か閃いたアバンが試しに力一杯がこの石壁を押すと、その部分がスイッチのようにぐっと奥に押し込まれた。
するとまもなく、ズズズと岩が擦れるような音が聞こえてきた。
「侵入者を欺く仕掛けですね。破邪の洞窟でも似たようなものを見たことがあります」
──が、何も起こらなかった。
皆がえっ?という顔をしている。
仕方なく諦めて入り口の方に戻ると、途中に先ほどはなかった横穴が出現していた。
穴の奥は下りの階段になっているようだ。
「ふん。くだらん仕掛けだ。いかにもという感じだな──」
ラーハルトが横穴の入り口の壁を拳で叩いた。
慎重に階段を降りると、そこにあったのは巨大な穴──だった。
正確には、ブクブクと音を立てるオレンジ色のマグマの海の中央に、火山岩でできた島のようなものがある。
そして、その島の中央に穴がぽっかりと空いている──という状態である。
所々に浮いている岩場を渡っていけば中央の島に上陸できそうだ。
「噴火口──という訳では無さそうですね──」
「──自然に作られた、という感じでも無さそうだな」
アバンとクロコダインが様子を伺っていると、ベラが翼をはためかせて言った。
「私が様子を見てきます──」
「気をつけてね」
レオナは黙ってダイとベラのやり取りを見ている。
しばらくすると穴の淵からベラが現れた。
「やはり噴火口ではありませんでした。穴はかなり深いようで、どこか別の場所と繋がっている可能性がありそうです」
ダイはクロコダインやラーハルトと顔を見合わせ、互いに頷いた。
「──じゃあ、おれたち行ってくるよ」
「皆さん、ここから先は何が起こるか予想もつきませんが──くれぐれも気をつけてください」
「ダイ君──」
アバンが餞の言葉を送ると、レオナは顔の前で両手を組み、縋るような顔でダイを見た。
「わかってるよ──必ず戻るって約束する」
「──絶対よ……」
ダイとレオナが指切りげんまんをしているのを見て、ベラが不思議そうな顔をしている。
「いざ、魔界へ──!」
ラーハルトが叫ぶと、ダイと新生竜騎衆は大穴に飛び込んだ。
「今度は5年も待たせたら承知しないわよ──」
4人の姿が消えたあと、レオナは小さく呟いた。
永久に続きそうな暗闇を抜けて──
目を開けると、ダイ達は砂漠の真ん中にいた。
「……あれ……?ベラ、ここ魔界だよね?」
「はい……間違い無いかと。この景色から見るに、ヴェルザー城から見て南のエリアだと思われます」
「やっぱり繋がってたんだね──ブラフマがいそうなところを探してみるしかないみたいだね」
あてもなく砂漠を歩く4人──
しびれを切らしたラーハルトがベラに訊いた。
「おい。何か思い当たる所はないのか?お前の城もブラフマに襲撃されたんだろ?」
「いや……特には──もし生き残りがいれば何か聞けるかもしれませんが」
「ふん……倒れていく部下を置いて逃げ出すとはな──お前も言ってみれば一国の王女だろう?」
「ラーハルト。もうその話はやめようよ──とりあえずヴェルザーの城に戻ってみよう。このままあてもなく彷徨うよりは目的地があった方がいい」
「うむ……あの場所にまた戻るのか──」
クロコダインが浮かない顔をしている。
北に足を進めながらダイはベラに訊いた。
「ベラ──ブラフマに襲撃された時はどんな感じだったの?」
「はい……異変に気付いたのは竜達が突然同志討ちを始めた時でした。そのうち、共食いを始めたり、辺りに炎を吐いたりと暴れ始めたので、私は高い所から状況を把握しようと思い、空に飛び立とうとしました」
「それで?」
「気が動転していたのか──その時暴れていた竜の尾か何かだと思うのですが──硬いものが頭に当たり、私はそのショックでそのまま気を失ってしまいました。なので、その間に何が起きていたかは記憶に無いのです──後で気付いた時には、竜達の屍がそこら中に転がっていて、その周りで首に数珠を巻いた男がビシュヌと口論をしているのが見えました。そして私が見ている事に気づくと、ダイ様は何処にいるんだ──と……」
「──えっ?ちょっと待って!ベラはビシュヌってやつの顔を知ってるの?」
ベラはしまった──という顔をして慌てて発言を取り繕った。
「──ええ、まあ一応……その、よく知っているという訳ではないのですが……」
ラーハルトは訝しげな顔で言った。
「ダイ様──こいつは今、何かを隠そうとしました。ダイ様に助けを求めるどころか、この女もそのなんとかという奴らとグルかもしれません── 」
「それは絶対にありません!!」
ベラはムキになり大声で言った。
──彼女がこれ程まで感情を露わにするのはこれが初めてだった。