ダイは難しい顔をしていたが、すぐに堪えきれなくなって笑い出した。
「──っあははは!ベラって面白いね」
「えっ?そうですか?」
「──うん、だってそんな事、誰も言わないよ!弱いおれがいい、なんてさ──」
「──弱いほうがいい、とは言ってないです──ダイ様が別に弱くてもそれはそれでいい、ってだけで」
「えーっ!?どっち?よくわかんないよ?」
「うーん……まあでも、確かに弱いダイ様も見てみたいというか──」
「…………??」
混乱しているダイにベラは人差し指を立てて言い聞かせた。
「──とにかく、次に戦う時にはダイ様は私たちに指示を出すだけで戦わないでいてみてください」
「うん──でも……出来るかな?」
「出来ますよ!あっ──もしかして私の事を信用してませんね……」
「えっ?そんな事ないよ!」
「こう見えても私、ヴェルザーの娘なのでけっこう強いんです──ダイ様ほどではないけど……だから簡単に死んだりしないので安心して下さい」
「……そんなこと──」
「ダイ様が戦わなくても負けはしません!──クロコダインさんやラーハルトさんもいるじゃないですか」
「うん。じゃあ──そうするよ。でも、なんか変な感じだなぁ……戦わないでいい、って言われるなんて」
「ふふ──あっ……そういえば私、あのふたりと一緒に戦ったのって、この前の砂漠が初めてじゃ無いんですよ」
「えっ!そうなの?」
「はい──ダイ様が忘れ物を取りに行ったあの時、実は溶岩のモンスターが現れて……」
「えーーーっ!?」
「その時にラーハルトさんに褒められました。『認めてやってもいい──』って──」
少し笑っているベラにダイは苦笑いで返した。
「ああ……言いそう──だね……」
「でも、よかったよ──おれ、ずっとふたりのこと心配だったから。大丈夫かなぁって」
「仕方がないです──いくら父の命令とはいえ、あんな事をしたんですから……ダイ様の事もずっと苦しめてしまって──それなのに……私の事をいつも庇ってくれて──私……」
だんだん声が小さくなっていくベラの顔をじっと見てダイが言った。
「おれ──弱いベラも好きだよ──」
ベラは一瞬えっ?という顔をすると、顔を赤くして言った。
「それ、私のマネですか──?さっきそんな顔して私言ってましたか?」
「──ううん、覚えてない──」
真剣な顔をして言うダイを見た瞬間、ベラはしゃくり上げるように笑い出した。
ダイも顔を作るのが限界になったのか、すぐに表情を崩した。
「そういえば──忘れ物って何だったんですか?」
「えっ……!?それは──教えられないよ──!」
ダイが悪戯っぽい顔で言うと、ベラは少し溜めを作りつつ真顔で聞き返した。
「────島に、別の女が居るんですか?」
「別の女、って何のこと??」
逆に真顔で聞き返されたベラは非常に狼狽した。
「いえ──何でもないです──」
その後、ふたりはダイの寝室に移動して朝方まで色々な話をした。
やがてダイがうとうとし始め、相槌のタイミングが不安定になってきたのを見計らってベラが言った。
「そろそろ寝ますか──明日もありますし」
そう言い終えるとベラも大きなあくびをした。
「ダイ様──おやすみなさい」
「うん──」
そのままごろりと横になってしまったダイにベラは布団をかけた。
彼女は寝息を立て始めたダイを見て、呟いた。
「ダイ様──あなたを決して──死なせません」
細く黒い紐でできている首輪のようなネックレス──中央に涙型の小さいチャームが揺れている。
彼女はそれを軽く指で弾いてから、寝ているダイの頬にくちづけた。
外で再び風の音がした。