ダイ達は山道を超え、かつての死闘の地であるヴェルザー城にたどり着いた。
瓦礫の中を歩いていると、再びどこからか竜の鳴き声が聞こえてきた。
悲しげな笛のような音がこだましている。
「さっきより近いな……どこにいる?」
ベラが殺伐とした景色を見まわしていると、
突然背後から笑い声が聞こえてきた。
「ははははは!予定通り、君たちの方からやってきてくれて感謝していますよ!」
ダイたちが振り向くと、そこにブラフマが腰に手を当てて立っていた。
「おまえが……ブラフマ──」
ダイは静かに呟いたが、その言葉の奥には激しい怒りがこもっていた。
「そうですよ。本当はもう少し早く会えるはずでしたが──」
ブラフマはこちらを値踏みするような目で見まわした。
「──やっぱりあのネズミ君は来てないですね。まあ妥当か──ダイくんはどの子ですか?その槍を持ってる子かな?」
「ダイは、おれだ」
目の前の少年が言うのを聞いてブラフマはふっ、と口の端で笑った。
(なんだ……こんなガキとは──ビシュヌの奴、こんなのに執着してたのか──)
「ダイ君。やっと会えましたね。ここは私にとっても苦い経験がある場所でしてね。──だから是非ここで決着をつけたいと思ったんです。それにこの場所はきっと馴染みがあるでしょう?」
そう言ってブラフマは髪を掻き上げると、ベラをチラッと見た。
「全く、君がトロいせいで私はビシュヌにどやされたんだ──腹立たしいが仕方ない。だって君は──」
「言うな!」
ベラが突然顔色を変えて叫んだ。
「──今この場で死んでも良いんだぞ……」
その言葉にダイが「うっ」と反応した。
それに構わずふたりは話し続ける──
「おお怖い──そんな事をされたら僕の命も危ないですからね……でも、知ってますよ。君はお父上と同じように不死の血を持っているんでしょう──?そんな脅しをされてもね……」
ブラフマが肩をすくめた。
「さっき偵察に行かせた魔物から聞きましたよ。先に知ってたらあんなに焦らなかったのに──やれやれです」
ベラが舌打ちをすると、ブラフマはちらりとダイ達を見てから言った。
「まあ……良いでしょう。これ以上ビシュヌからチクチク言われても面倒ですし、ここはフェアに行きましょうか」
「──おい、ヒムはどうした?」
クロコダインが問いただすと、待っていたとばかりにブラフマは口を開いた。
「無事ですよ……」
ダイ達の顔がホッと安堵の表情になった。
「にわかには信じられませんが……ダイ君はあの大魔王バーンを倒した勇者という事ですから、まともにぶつかっては分が悪い──ただオリハルコンの坊やにも代わりに働いてもらうつもりです」
ラーハルトが怪訝な顔で訊いた。
「働いてもらうだと──?」
「はい──私の能力については知っていますか?」
ダイの頭の中に嫌な予感が広がった。
「ああ、表情で分かりますよ。あのネズミ君から聞いたのですね──それなら話は早い」
「地上は素晴らしい場所ですよ──命に満ち溢れていてね……でもここは違う。強い戦士を作るにはその辺の岩とかを使う訳にはいかない──」
「おまえ……まさか──!!」
ダイが拳を握りしめて叫んだ。
「──魔界生まれの者は生まれつき魔力との親和性が高いので、うまいこと操れるんですよ……そしてオリハルコンは魔界の金属……おっと皆まではやめておきましょう。お楽しみは取っておかないと」
「さあ!神の為に役に立つ時が来ましたよ!皆さん怪物を倒すのです」
合図と同時に、瓦礫の奥から何かが呻き声をあげながらわらわらと溢れ出した。
大人、子供、老人、男に女──
モンスターと合成され、異形の生物となったかつて人であった者たちがダイ達の目の前に立ちはだかる。
マー君はぶるぶると震え、ベラの後ろに隠れた。