黄金色の闘気に包まれたアシュラはしばらくダイ達を睨むと、次の瞬間、ほとんど音も立てずにダイの射程距離に接近した。
もはや瞬間移動と言ってもいいスピードである。
繰り出された拳を咄嗟に避けたダイの頬の隣に黄金の軌跡が残っている。
(──速い……!)
唖然とするダイ。
「おい──」
それを見ていたラーハルトがベラの耳元で囁いた。
ベラが振り向くと、そこには眉間に皺を寄せた陸戦騎の顔があった。
「連携するぞ──この状況ではそうしなければダイ様をお守りできない」
「そうですね。比較的スピードが速い私たちがダイ様の死角をお守りしましょう」
「──ふん……わかっているじゃないか──お前と組むなど──」
「不本意だが──でしょう?」
ベラが笑って言うと、ラーハルトは鼻を鳴らしながら不器用に口の端を上げた。
「ダイ様!私たちが盾になります!隙を作りますのでその間に攻撃を!」
ベラが翼を広げてダイの頭上に向けて飛び立つと、ラーハルトも同時に駆け出し、ダイの背後に滑り込んだ。
「ふたりとも……」
ダイが呟くと、それに答える前にラーハルトが頭越しに叫んだ。
「クロコダイン!ダイ様の攻撃の補助とあいつの監視を頼む」
「ああ!わかった──」
そのやり取りを聞いたブラフマは腕を組んだままニヤニヤと笑っている──
「──ダイ様!来ます!!」
ベラがが叫ぶと同時に、アシュラはダイめがけて突きの構えをしたまま突進してきた。
「ただまっすぐ突っ込んでくるとは……オレたちも舐められたものだな!」
ラーハルトが言うと同時に、アシュラは黄金色のオーラを撒き散らしながらマシンガンのような高速の突きを繰り出した。
嵐のような攻撃をダイとラーハルトふたりがかりでガードする。
致命傷を避けるために攻撃を弾くだけで精一杯のようだ。
とても反撃の隙など与えてくれそうにない──
そう思ったベラは素早く滑空し、アシュラの背後から攻撃を試みた。
「マヒャ──」
しかしその瞬間、アシュラの背面の顔が魔族の少女の顔に変化した。
「おねえちゃん!やめて!こわいよ!」
ベラはうっ、と詠唱の言葉を引っ込めると、身体をこわばらせた。
「わたし、何にもわるいことしてないよ!」
少女の目から大粒の涙が溢れている。
ベラが観念したように両腕を降ろした瞬間、少女の顔がぐるりと周り、竜の顔と目が合った。
「愚かなものよ、戦いをやめるがいい。我は不死の存在なり」
そう言うと、竜の口から激しい炎が吐き出された。
瞬間的に翼と腕で防御したものの、熱風の衝撃で吹っ飛ばされ、ベラは地面に強かに打ち付けられた。
「ベラ!!」
ダイは叫ぶと、攻撃を受け流しながら呟いた。
「やっぱり──攻撃する事は出来ない……あいつ、最初からこれを狙ってたんだ──」
「聞こえてますよ──なんの事でしょうね?」
「最初からまともに戦う気など無いというのか!」
クロコダインが叫ぶと、ブラフマは落ち着き払った声で言った。
「言ったでしょう? 誰にも、どこにいても、何を使っても殺されないって──まあ、普通に倒そうとしてもあなた達には無理でしょうけどね」
するとふいにアシュラの攻撃が止んだ。
その隙にダイとラーハルトはすぐさま倒れているベラに駆け寄ると、ベラの傷の具合を確認した。
ベラは炎の直撃を浴びたせいで痛みのためか起き上がれずにいる。
「大丈夫だ──思ったよりダメージは受けてないよ」
ダイが言うと、ラーハルトは少し安心したようにため息をついた。
「そんなにのんびりしていていいんですか?」
ブラフマが顎をしゃくってみせる。
その先には体が妖しく光っているアシュラの姿があった──