ドラゴンクエスト ダイの大冒険Ⅱ   作:だいまどう

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命の尊厳を

アシュラの体が怪しく蠢いていた。

ぴんと伸びていた背中が今は獣のように丸まり、小刻みに震えている肩から夥しい光が放たれている。

 

地鳴りのような声で咆哮をあげると、紫色の液体を飛び散らせながらもう一対腕が生えてきた。

 

「…………!」

 

ベラが微かに顔を顰めている。

 

僅かに荒くなっている呼吸を整えると、アシュラは胸の前で4本の腕で印を作り始め、異国の言葉であろうか──経のようなものを唱え始めた。

蛇のように動く指が次々と形を変えてていく。

その間、ダイたちは何故か体が凍りついたように動くことが出来なかった。

 

《不 空 大 ──》

 

それまで閉じていた目が開き、アシュラの全身が黄金の炎に包まれた。

そして、不思議な形に結ばれた手から凄まじい光線が放たれた。

 

全方位に散らばる黄金色の光と爆風──

 

ダイたちはすぐに防御の体制をとったが、ものすごい力で吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐあっ!!」

 

クロコダインが尖った岩に叩きつけられ、悲鳴を上げた。

 

ヴェルザー城の地面に木の葉のように散らばっているダイたちを確認すると、ブラフマは満足そうに笑った。

 

「分かりましたか──?あなた達に最初から勝ち目などないんです。最強の生物の前には小手先の工夫や努力など意味がないんです──」

 

「──そんなこと、よく言えるよ──自分が戦ってるわけでもないのに」

 

やっとのことで立ち上がったダイを見ると、ブラフマは忌々しげに言った。

 

「あなた達に何が分かるんですか──」

 

「えっ……」

 

予想外のブラフマの答えにダイが一瞬戸惑いを見せた。

 

 

「ん──?どうしましたか?」

 

気がつくと、ブラフマがアシュラの方を見ている。

 

その方向を見ると、アシュラが頭を抱え膝をついて震えているのが分かった。

 

 

(──ダイ……オレだ)

 

「──ヒム!?」

 

「やれやれ。一時的にオリハルコン坊やの意識が戻りましたか。頑固というか、なんというか──」

 

ブラフマが眉間に皺を寄せている。

 

(すまねえ──この体は……オレの意思ではもう自由に出来ねえんだ。合成された他のやつらも同じだろうよ……)

 

ラーハルトは顔色を変えずに聞き耳を立てている。

 

(──だから、もう気にするなダイ──オレはもう悔いなんかねえ。オレが死ぬ程憧れた《命》ってやつをこれ以上……こんなゲスな野郎に踏み躙られるくらいなら……お前に消して貰いてえ。──ハドラー様だって、お前だったら納得してくれるだろうよ──)

 

「……ヒム──!」

 

ダイが悲痛な面持ちでつぶやいた。

 

(オレが憧れた命ってやつは──ちっぽけだけど温かくて──心ってやつもオレなりに──お前らや、デルムリン島の仲間と暮らすうちに……わかってきたつもりだ。良いもんだよ──すごく──だから、もうオレは十分なんだ──)

 

クロコダインの目に涙が溜まっている。

 

(ダイ──お前の技で《空烈斬》だっけか?それでオレの魂だけを狙って破壊すれば、多分この怪物は体が維持できなくなるはずだ。上手くいけば他の奴らも助けられるかもしれねえ──それに賭けてみろ──今のお前なら、アバンストラッシュでも大丈夫かもな──何しろ止められるのはお前しかいない──その後、後ろにいるこのクソムカつくウジ虫野郎をぶっ飛ばしてやれ──頼ん)

 

ブラフマが後ろから頭を数珠で叩くと、がくりとアシュラは地面に倒れた。

 

「まだ出来栄えが不十分だったみたいですね──」

 

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