「弱い者同士でごちゃごちゃとうるさいですよ──」
ばったりと地面に倒れたアシュラを踏みつけようとブラフマが足をあげると、低く鋭い声が聞こえた。
「──おい」
「はっ?」
「その足、どうするつもりだ──」
ブラフマが声のした方に顔を向けると、こめかみに血管を浮き立たせたクロコダインがいた。
「事によっては、貴様……ただでは済まぬぞ──」
顔に涙の筋を残したまま、わなわなと震えている。
一瞥するとブラフマは神妙な顔で答えた。
「弱いとは──愚かなこと」
「──はぁ?」
クロコダインは呆れたように声を漏らした。
「違いませんか──?」
ブラフマは構わずそう続けると、倒れているアシュラの頭上に数珠を掲げた。
「あああああああああ!!」
4本の手で頭を押さえながら苦しそうに絶叫すると、アシュラは再び金色に輝き始めた。
すると、クロコダインにわざと聞かせるように、ブラフマは冷たくアシュラに言い放った。
「完璧な強さがなければ……あなたも弱者の仲間入りです。神に等しい存在になるには苦しみも必要なのですから──」
「貴様!!」
クロコダインが武器を振り上げ、ブラフマの首元に一撃を喰らわそうとした時、不意に金色の光がクロコダインの右胸を貫いた。
「ぐああっ!!」
クロコダインは胸を押さえると、苦しそうに跪いた。
黄金色に輝くアシュラが人差し指を前に突き出している。
おそらく、レーザーのようなもので攻撃したのだろう。
「──私の支配を強化しておきました。もう前のようなことは起きませんよ」
ブラフマが言うと、それまで岩陰に隠れていたマー君が、血相を変えて飛び出してきた。
クロコダインに駆け寄り、必死でベホマをかけている。
「ふたりとも──ちょっと聞いて欲しいんだ」
その様子を見て、顔を顰めたダイがベラとラーハルトを呼んだ。
「はい──」
同時に返事をするとダイは小声で話し始めた。
「時間がないから手短に言うね──」
顔を寄せ、ふたりはダイの話を聞いた。
しばしの沈黙が流れる。
ラーハルトは難しい顔をして言った。
「──なるほど、それなら隙をつけるかも知れませんが、果たして……」
「ラーハルト、この作戦を試すなら、今が一番効果的だと思うんだ。あとになってからだと成功率が下がる……」
「確かに──先延ばしする意味はありませんね」
「──ベラはどう思う?」
「──あの竜は先程は気が立っていた様子でしたが、今なら──」
「この作戦はベラが決め手なんだ。タイミングは一瞬だし、それでも上手くいくかわからない──それでもやってくれる?」
「──もちろん」
「ラーハルトはアシュラの攻撃を耐えてもらう必要があるけど……」
「無論、引き受けます。ダイ様の盾になるという言葉に偽りはありません──」
「……よし、じゃあ作戦開始だ!」
ダイの言葉に空戦騎と陸戦騎が頷く。
ベラが大きく飛び上がると、上空で祈るように頭を垂れた。
それを見てブラフマは脂汗を流しているクロコダインに言う。
「──お?あれを見てください。遂に諦めたんですかね?あなたの仲間はもう戦う気がないようですよ。今更、命乞いとか──」
クロコダインは息を切らせながらニヤリと笑って言った。
「ふっ……寝言もいい加減にしろ──オレたちは決して諦めない……自分で戦う事を諦めたお前と一緒にするな」
「ふん。今更勝てるとでも──?」
「オレからひとつ忠告しておいてやる。弱いやつ程でかい口を叩くものだ──ブラフマ、お前も少しは慎め……」
「……武人だかなんだか知らないが、口が過ぎるようですね──あの槍を持った坊やを消したら次はあなたに決めましたよ──」
「わははは!おおそうか!それならオレの番はまわって来ないな──安心したぞ」
ブラフマはちっ、と舌打ちをすると、首元の数珠を片手で掴んだ。
次の瞬間、クロコダインに稲妻が襲いかかった。
「うぐああああああああっ!!」
──肩をガクンと落としたクロコダインの体から煙が上がっている。
(──クロコダイン、ごめん──今はなんとか耐えてくれ)
ダイは膝を折っているクロコダインを見て、歯を食いしばりながら拳を強く握った──