ダイが何度押し返しても、ブラフマは執拗に襲いかかってきた。
もう呪文を唱えるだけの魔力も残っていないのだろう、狙いを定めるわけでもなく、闇雲に数珠を振り回しながら、大振りな攻撃を仕掛けてくる。
時々ダイの腰につけた麻袋を奪うために手を伸ばすが、その都度ひらりとかわされてしまう。
何も変わらない状況にしびれを切らした母親のドラゴンがブラフマに炎の息を浴びせかけると、その逞しい身体はあっという間に炎に包まれてしまった──
「くそっ──くそっ──」
哀れな男が半狂乱でダイの目の前の地面をごろごろと転がっている。
ダイは顔を伏せたまま言った。
「もう、やめよう──」
皆の注目がダイに集まる。
「ベラ……ヒャドで消せる?」
「──は、はい──」
ベラが威力を調節した呪文を放つと、炎は消えた。
ブラフマはくの字になって這いつくばったかと思うと、地面に崩れ落ちた。
その様子を見てダイは何か考えている。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「──辛かったのはわかるけど、やっぱりおまえがしたことは間違ってるよ──」
ブラフマはひれ伏したまま、茫然自失した様子で地面を見つめている。
「力を持ったからって、もう取り戻せないものは何をしたって取り戻せないんだ──それを認めなきゃ……」
ダイの声が少し震えていた。
俯いた顔の下からふうっ──とブラフマの息が漏れるのが聞こえた。
「──命を作れるなら──そんな使い方をしちゃいけないよ……きっと──本当は、心の奥底ではこんなこと、したくないと思ってるはずだよ──もう一度」
「──うるさい!黙れ!!」
ブラフマは突然大声をあげてダイを罵った。
しかしダイは少し間を空け、そのまま話し続けた。
「──もう一度──チャンスがあるとしたら──ほんとうは何がしたかったの?」
ブラフマは意表を突かれたような顔をすると、質問の答えを真剣な顔で考えた。
そして、意を決したように話し始めた。
「私は──友達に謝らなくてはいけない──全部自分が悪いのだと──自分は弱いのだと──自分は卑怯者なのだと──」
「謝りたかったんだね──」
「──そうだ、私はずっと許してほしかった──許されたかった。惨めな思いをしながら死んでいった友達に、そして死ななくても良かったのに、私の不注意で酷い方法で命を断たれてしまったあのネズミに。もう取り戻せない──私はただ、ずっと仲良くやっていきたかった。仲間に囲まれて、楽しくやっていきたかったんだ。喧嘩をしたりもするけど、心の中ではお互いを認め合って、相手がピンチの時には体を張って助けたりして──」
ダイは頷きながら聞いている。
「君には仲間がいるでしょう?私にも、私にも欲しかった──」
そう言うとブラフマは我慢出来なくなったのか、手で顔を押さえて嗚咽を漏らした──