思いの丈を吐き出したブラフマは顔をぐしゃぐしゃにしたまま座り込んでいる。
皆が成り行きを見守る中、ダイは静かに口を開いた。
「──おれだって、もし地上に生まれなかったら──もし、ブラスじいちゃんに拾われなかったら──きっとみんなとは出会えなかったと思う。ほんとうに偶然に過ぎないんだ──もしかしたらおまえはおれだったかもしれない──」
一呼吸おくと、一言ずつ確かめるような口調で続けた。
「あと──おれ、みんなといたからわかるんだけど──どっちが強いか弱いかなんて関係ないよ──そんな事が大事なんじゃない──相手が自分の弱い部分を好きになってくれる事だってある……それが誰かにとって良いとか悪いとかなんて、そんな事は関係ないんだ──お互い心の中でどこか認め合っていれば良いんだよ──友達とか仲間って、きっとそういうものだと思う──」
ブラフマは頭を垂れてダイの言葉にじっと耳を傾けている。
「だから──おまえにはちゃんと仲間がいたんだよ。そして悲しい結果になったのは、お前のせいじゃない──」
ブラフマは深く息をつくと涙声でつぶやいた。
「──わたしは、彼らを本当に大事に思っていたんです……でも、あの時はそうするしかなくて──結局、強いものには抗うことのできない自分がイヤで仕方がなかった──」
ブラフマはビシュヌと出会った時、なんとなく自分と近いものを相手の中に感じ取っていた。
それが何なのかは分からないが、直感的に自分と同じタイプの人種だと感じたのだ。
しかし自分を苦しめていた呪縛から解放された今、もうそれは過去のものだという気がする。
自分が変わるのなら何を捨てても構わない、という暗い情熱の炎は消え、かつて自分が大事にしたかった事に、もう一度向き合ってみようという微かな期待が生まれていた。
ダイは、ブラフマの様子が少し落ち着いてきたのを見て切り出した。
「……砂漠の連れ去られた人たちや、デルムリン島の友達を元の姿に戻せるなら──おまえを殺すつもりはないよ──でも──おまえはベラの配下の竜達を殺した──」
ベラは怒りを抑え淡々と答えた。
「──許すことは出来ませんが、ブラフマを殺したところで死んでしまった竜達はもう戻っては来ません。処分はダイ様にお任せします──」
ベラの意思を確認すると、ダイはブラフマに訊いた。
「──合成された人たちやデルムリン島のみんなを元に戻すことはできる?」
その問いかけにブラフマはあっさりと答えた──
「はい──魔力を使わなくても解除はできます──そして──竜たちですが────ビシュヌの命令とは言え、取り返しのつかない事をしてしまった──いくら詫びても足りません──」
「ただ……もし、再びチャンスを与えていただけるなら、この力の全てをもって竜のしかばねを蘇らせてみたいのです。私の能力は命を奪う事ではなく、命を与える事なのですから──」
「うん──頼むよ」
澱みなく話すブラフマの言葉にダイは少し和らいだ顔で答えた。
「まず──アシュラからですね。筒から出してもらう事はできますか?」
ダイが金色の筒を取り出すと、クロコダインが近づき耳もとで囁いた。
(おい、信じて大丈夫なのか──?)
(うん──大丈夫だ──)
そう答えるダイの顔に迷いはなかった。
「──デルパ──!」
ダイが叫ぶと、アシュラが光る筒の中から飛び出してきた。
地面にうずくまっているが、気を失っているだけで息はあるようだ。
ブラフマは印を結び呪文を唱え始めた。