極彩色のベールはあっという間にブラフマを包み込んでしまった。
それは生き物のようにぐにゃぐにゃと蠢くと、ぎゅっと縮んで身体に張り付いた。
得体の知れない何かでパックされたそれは、作りかけの悪趣味なゴム人形のように見えた。
「弱いとは──愚かなこと、だったかな?」
嘲るようなビシュヌの声が響くと、ブラフマをすっかり覆ってしまったベールの表面の一部がイモムシのようにニュルリと盛り上がり、辺りの様子を伺うようにウネウネと気味悪く動いた。
この忌々しい何かに取り憑かれたのっぺらぼうの人形は首の辺りを苦しそうに掻きむしっている。
「──おい…!やめろ!!」
状況を察したダイが叫んだ。
しかし、ベールはいよいよブラフマに密着し、きりきりとねじあげるように体を締め付け始めた。
そして、なにか小さくビシュヌが呟くと、その瞬間、張り付いていた膜の外側の一部が外側から殴りつけられたようにべこっとへこんだ。
──微かに中から呻き声が聞こえた。
ダイたちが立ち尽くしていると、やがてその数は増えていき、気がつけば打撃音が無数に響き渡っていた。
「クソっ──」
あまりの無惨な光景に耐えかねたクロコダインが飛び出した。
大きく息を吸い込むと、焼け付く息を吹きかけた。
一瞬動きが止まったが、すぐまた殴打の音が鳴り響き始めた。
間に混じって骨が折れた時の鈍い音が聞こえた気がした。
「──本当はずっとこうして欲しかったんじゃないか──?これまで苦しかっただろう?」
ビシュヌはその様子を眺めながら、状況にそぐわない穏やかな口調でつぶやくと、俯いているベラの側に向かった。
ダイたちに緊張が走る。
ベラの前に立ち、顔を真っ直ぐに見つめると、ビシュヌは落ち着いた声で問いかけた。
「ベラ──すまない。君を傷つけてしまったことはぼくのミスだった──彼は自分の罪に焼かれて命を落とそうとしている。君と殺されてしまった竜達への償いにはならないだろうが──もし良ければ、君たちの竜を蘇らせる役目はぼくにやらせてくれないか?」
しばしの沈黙の後、ベラはビシュヌと目を合わさずに首を横に振った。
「ふぅ……」
ビシュヌはため息をつくとしばらく何かじっと考えていた。
2回目のため息をつき、俯いているベラの顔をもう一度眺めてから口を開いた。
「……嫌われたもんだ──わかってるさ。ああ、分かっているとも。でも、この状況を招いたのはベラ、君の責任でもあるんだからな──」
ベラの返事はなく、彼女は決して彼と目を合わせようとはしなかった。
「ぼくは……」
そう言いかけてやめると、ビシュヌは
「悪かった」
と言い、背中を向けた。
唖然としている一同を前に、猛烈な光を放ったかと思うとルーラでどこかに飛び去っていった。
ビシュヌが去ると、地面にはボロボロになった麻袋のようなものが捨てられていた。
ダイは近づいてその袋の中を見ると、沈痛な面持ちで首を振った。
アシュラがうずくまっていた辺りに人の気配があった。
地面を見ると、大人や子供、老人などが折り重なるような形で十数名ほど倒れていた。
どうやら皆、息があるようだ。