ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
【ホロライブワール】の裏世界【鬼岩城】の城を見上げる1人の女侍。
彼女はこの城の最上階にいるであろう城の主に用事があった。
普通はこの城の門から入り城内部を1階ずつ攻略していく迷宮となっているが、彼女はそんな事をする気はなかった。
そして、彼女は城の塀を飛び上がり、それから城の外壁へと飛び付いた。
「ちと、厠に行ってくる」
そう言って鬼女が席を立ち部屋から出ていった。
彼女の前には盆に乗った美味しそうな和食と酒瓶がかなりの数転がっていた。
「これだけ飲めばトイレにも行きたくなる余ね」
鬼女の後ろ姿を見送りながら、もう一人の鬼女が微笑む。
「さて、何かよう?
そんなところで隠れてないで、侍なら正々堂々と出てきな余」
背後の開け放った窓に向かって鬼女、百鬼あやめが言った。
「はは、さすがあやめ先輩。
見つかってしまったでござるな」
そう言って窓の影から姿を表す、先程の女侍。
「よくこの城の壁を登ってこれたね。
本当に侍?
忍者の方があってそうだけど」
あやめは刀を持ち振り向き女侍を見る。
「風真は紛れもなく侍でござる」
そう言って女侍、風真いろははあやめの方を向いた。
「それで、さっきも聞いたんだけど何か用事かな?」
「もちろんでござるよ、あやめ先輩。
リベンジでござる」
あやめに向けて鞘に入ったままのチャキ丸を差し出す。
「別に風真ちゃんに勝った事ないと思うけど?」
あやめは刀を腰にさした。
「そちらはなくても風真にはあるゆえ」
チャキ丸を背負い柄に手を当てるいろは。
「とんと思いあたらないけど。
わかった。
場所を変えよう。
ここでは戦いたくない」
そう言ってあやめはいろはの方に歩く。
いろはの横を通りすぎ、あやめは城下町の外側にある森を指差した。
「あそこに少し開けた場所があるからそこで」
そう言って答えを待たずにあやめは城から飛び出した。
続いていろはも後を追うように城から飛び出す。
ザ、ザっと2人は森の開けた場所に降り立つ。
城からそこまではかなりの距離だが、チート能力を持つホロメンからすれば移動は一瞬だ。
2人は距離を取り、柄に手を当てる。
静かな時間が2人を包む。
いろはにとっては前回、2人がかりで何とか勝った相手。
1人の時は勝てなかった。
だからリベンジだ。
「行くでござる」
いろはは間合いを詰めながらチャキ丸を抜く。
そして、そのままあやめに斬りつけた。
ジャキンと鉄の当たる音がする。
あやめはいろはの斬撃を鬼神刀阿修羅で受けていた。
にやりと笑うあやめ。
(やはり反応が速い)
そのままつばぜり合いに持ち込みいろはは、あやめを押した。
押されるままに後ろに退くあやめ。
そのあやめに間合いを、再度詰めながらチャキ丸を右手に持ち、突きの構えをとるいろは。
「風真流 山嵐」
いろははまるで無数の突きが、同時に放たれているかのような攻撃をあやめに。
しかし、その攻撃さえも後ろに退きながらあやめは空中で全て防ぐ。
着地と同時にあやめが前に。
「百鬼流 残鬼」
勢いのある右袈裟斬りがいろはを襲う。
いろは咄嗟に攻撃を受けようとチャキ丸を構えるが。
(これは)
思いとどまり直ぐ様後ろに退いた。
それと同時に左袈裟斬りが振り下ろされ、いろはの立っていた地面が刀の勢いで抉れる。
「よく避けた余」
地面に当たる前に寸止めした刀を正眼に構えなおし、あやめは言う。
「確かに右からの攻撃でござったが…」
いろはも正眼に構え、あやめに言った。
「そうだ余。
百鬼流 残鬼は幻の剣。
だけど、余の殺気と鬼気で放つから、ほぼ本物に感じるはずなんだけど」
そう言ってあやめは微笑む。
「確かに、騙されそうになったでござるが、本物の剣の方が少し気配が強かったでござるよ」
「そっか、それは反省点だ余」
いろはの言葉にあやめは頷いた。
(しかし、思っていた以上にやる。
あやめ先輩も前回手合わせいただいた時よりも、更に腕をあげられている。
こちらも出し惜しみはできないかな)
ザ。
そんな時、2人の戦っている場所に誰かが来た。
「ん?」
いろははその誰かに気付きそちらを見る。
(あれは確か)
「もうGMに気づかれたでござるか」
そう、それはGMの1人。
(確か名前はリィスだったかな)
「こっちの味方登場かな?」
あやめもそちらに気付いたようだ。
「これで余の方が有利になった余」
あやめはリィスの方に向かい、いろはに構える。
「よろしくね、えっと…」
「あ、はい、リィスです。
がんばります」
リィスの言葉に頷くあやめ。
(さて、2対1ではちとしんどいか、ならば)
「ん~困ったでござるな。
なら、奥の手を使うでござる」
いろはは胸元から1つのカプセルを取り出し地面に投げる。
ぼわっと煙が出て現れたのはマスコットのようなゴブリン。
「ふぁ~出番ですか?」
ゴブリンは可愛い欠伸をして体を伸ばす。
「そうでござるよ。
GMの相手をお願いするでござる」
いろはにそう言われてゴブリンはリィスを見る。
「なるほどいいですよ。
封印解除」
その言葉と同時にゴブリンが輝く。
そして、輝きが終わると同時にそこに1人の小柄な女性が立っていた。
「小姫マモリ?」
少し驚いたようにあやめが言った。
「はい、よろしくお願いします」
マモリはぺこりとお辞儀をする。
「これはちょっと厳しいかも。
リィスちゃん、一緒に風真ちゃんを倒すつもりだったけど、小姫ちゃんお願いしていい?」
「あ、はい、大丈夫だと思います」
リィスは足が震えながらもガッツポーズを取る。
それを見たあやめは優しく微笑むと「業、不知火」と式神を呼ぶ。
「あい」「なんでしょうかお嬢」
ポワンと現れる2つの鬼火。
「リィスちゃんのフォロー頼む余」
「まかせろ」「おませください」
そう言うと鬼火はリィスの左右に浮遊した。
「ありがとうございます」
「実戦慣れしてないみたいだし、無理しないでがんばって」
あやめはそう言って笑った。
「はい」
力強い頷くリィス。
そして、右手を胸元にもってくる。
その腕にはブレスレットが。
「GMチェンジ!」
リィスが叫ぶと変身ブレスレットが光を放つ。
そして、ピンク色のスーツを来たリィスが立っていた。
「ピンクウルフ参上です」
ドカンとピンクウルフの背後でピンクの煙が上がる。
「ひゃ」
隣にいたあやめは突然の音と煙で驚き可愛い悲鳴を上げたが、すぐに何事もなかったように振る舞った。
「お嬢の可愛い姿ゲットしたぞ」
「百鬼組のみんなに見せて上げないとですね」
小型カメラを持った業と楽しそうに話す不知火。
「こら、何やってんの余。
消しなさい」
式神に怒るあやめ。
「可愛いなぁ」とあやめの姿を見て呟いてしまういろは。
「うぉほん。
さて、仕切り直しといくでござるか?
あやめ先輩」
いろはがそう言ってチャキ丸を構える。
「もちろん、そのつもりだ余」
あやめも鬼神刀阿修羅を構えた。
『相手は変身しているでござるから必要なら最終封印も解いても良いでござるよ』
いろはは専用回線でそうマモリに伝える。
マモリは小さく頷いた。
「それじゃ、こっちも始めましょう」
マモリは拳を合わせピンクウルフを見る。
「業ちゃん、不知火ちゃん、よろしくお願い」
そう左右の式神に言った後、ブーストアームを装備してピンクウルフもマモリに向かって構えた。
『では、尋常に勝負!』
4人の掛け声で各々の戦いが始まった。
ギャン!
チャキ丸と鬼神刀阿修羅がぶつかり合う音がする。
「これで刀を合わせるのは2回目かな?」
つばぜり合いをしながらあやめはいろはに言った。
「さぁ、どうでござろうな」
「タヌキのお面、今日はかぶってないんだね」
「う、ばればれでござったか」
「ふふ、余を甘く見ないで余」
2人は軽口を叩きあいながら、そのテンションとは思えない激しい打ち合いを行っていた。
「やぁー!」
「く」
マモリの攻撃をなんとか避けるピンクウルフ。
「なかなかやりますね」
「いっぱいいっぱいです」
そうマモリに答えるピンクウルフ。
「へぇ、そうには見えないですけど」
マモリの攻撃。
その攻撃を避け、右ボディに右フックを打ち込むピンクウルフ。
ピンクウルフの攻撃がマモリにヒットしマモリが吹き飛ぶ。
「よっと」
マモリは体を1回転させその場に着地。
「やっぱり反撃狙ってきましたね」
そう言って笑うマモリ。
(しかし、初めは動きについてこれてない感じでしたけど、もう目が追い付いてきている)
マモリはさっきの攻撃で吹き飛んだのではなく自分からダメージを減らす為に跳んだのだ。
「それじゃ、これならどうですか?」
一気に間合いを詰めてくるマモリ。
「やばいぞ」
業が叫ぶ。
「連続攻撃!」
不知火も言った。
「ダブルシールド」
ピンクウルフの言葉に両手にシールドが装備される。
ピンクウルフはそのシールドを自分の前で合わさる。
すると1枚の全身が隠れる盾となった。
その上からマモリが連続で拳を叩き込んだ。
マモリはそのままピンクウルフを押しきるように連続攻撃を続ける。
「業」
「おう、くらえ」
2体の鬼火が炎を吐く。
「おっと」
マモリはバックジャンプしてそれを避ける。
「大丈夫?」
不知火がピンクウルフに聞いている。
「はい、なんとか。
ありがとうございます」
「次はこっちの番です」
ピンクウルフは両手にブーストナックルを装備。
そのままこちらに向かって正拳突きを放つ。
それに合わせて飛んでいくブーストナックル。
「ロケットパンチ!?」
突然の攻撃に驚いたマモリだが、攻撃は避けれている。
が、避けた先にも跳んでくるブーストナックル。
ピンクウルフがもう1つのブーストナックルを飛ばしたのだ。
「く!」
たまらず防御するマモリ。
「ブーストナックル、ブーストナックル、ブーストナックル!」
ピンクウルフはそのままブーストナックルを打ち出し終えると同時に再度武器を召喚、そのまま連続でマモリに打ち込んできた。
無数のブーストナックルを打ち込まれ、動けないマモリ。
「ウルフナックル!」
ピンクウルフの言葉に右手に狼の頭部の形をした武器が装備される
「必殺、ウルフハウリング」
突き出した狼の武器が口を開く。
それと同時に放たれる衝撃波。
(これはやばい)
衝撃波はマモリに打ち込まれたブーストナックルに当たり、ブーストナックルが爆発した。
「なかなかやるでござるな」
チラッとマモリの方を見たいろはが嬉しそうに言う。
「嬉しそうだね、味方やられてるけど?」
そんないろはを見てあやめが言う。
「そうでござるな。
それではこちらは負けないように頑張るでござるよ」
そう言っていろははあやめを見た。
(そろそろ本気を出す)
「行くでござるよ。
風真流 模倣真眼・改」
いろはの左目にholoXの紋章が浮かび上がる。
それと同時に緑の光の鬼武者がいろはの背後に浮かび上がった。
「【鬼武者】!」
あやめはそれを見て驚く。
その技はあやめ専用の技。
それをいろはが出したのだ。
「なんで?」
確かに前回の戦いでもいろはは【鬼武者】を出していた。
しかし、それは先に出していたあやめの技を見て真似たからだ。
今回はまだ【鬼武者】を出ていない。
「まだまだこれで驚かれては困るでござるよ。
【鬼神大元】!」
いろはの背後に現れた光の【鬼武者】はいろはと同化する。
そして、いろはは緑の鎧を身に纏った。
「この技も1度見せてもらったでござる」
「まさか、余の奥義まで。
でも、どうして使えるの?
まだ、余は見せていない」
「確かに前までは見ている時に真似をする力でしたが、日々努力しているのでござる。
今は今まで見た技ならこうやって使えるでござる」
あやめは構える。
「あやめ先輩は使わないでござるか?」
そう言っていろはも構えた。
「同じ技を使っても勝負はつかない余。
それに、百鬼流の真髄は動にあらず」
(動?)
「なら、その真髄も見せてもらうでござる」
まだ何かを隠しているようなあやめに、いろはは胸が躍った。
いろはは一瞬で間合いを詰める。
そこから一刀とは思えない連続攻撃を放った。
なんとか防ぐあやめ。
しかし、押されている。
「きゃー」
そこに突然悲鳴が聞こえた。
「やぁ!」
いろはの攻撃を受けたあやめはそのままいろはを押し返す。
たまらず後ろに下がったいろは。
そして、自分を押し返したあやめは声のした方を見ていた。
「大丈夫?大丈夫?」
業と不知火が心配そうに倒れたピンクウルフに声をかける。
「だ、大丈夫」
ピンクウルフはそう言ってゆっくり立ち上がっている。
そして、こちらを見た。
煙が晴れたその瞬間に放った光の玉を咄嗟に防御したピンクウルフ。
かなり吹き飛んでいたが、あの様子だとあまりダメージは受けてないようだ。
「まさか、この姿まで出すことになるなんてね」
そう言ってマモリは腕を上げて体を伸ばした。
背は先程より高くなっている。
そして、真っ黒いタキシードを着ていた。
見た目も変わってたが、その存在感も全く別物と言っていい程変わっている。
(結果的にいろはさんの言うように最終封印解いてしまったかぁ)
マモリは内心ため息をつきたい気分だった。
この姿は最終形態【デビルカード】を使った姿だ。
「よく頑張ってる」
そんなピンクウルフの横にあやめが来ていた。
「あやめちゃん」
「さぁ、どうするでござる?」
『すいません、使ってしまいました』
『構わぬでござるよ、マモリもよくやってくれてるてござる』
専用回線で謝ってくるマモリにいろはは優しくそう伝える。
そして、いろはとマモリが構えた。
「万事休す」
あやめがそう呟いた、その時。
「何を楽しい事しておるんじゃ?」
あやめの後ろからそう呑気な声が聞こえた。
「え?」
ピンクウルフが後ろを振り向いている。
そこには1人の鬼の女性が立っていた。
んぐんぐとひょうたんで何かを飲みながらこちらに歩いてくる。
(な、なんだあの人?
自分の強さを隠そうとしていない。
風真達ホロメン並みの強さ?)
いろははその鬼女を見て思った。
マモリも同様なのだろう、警戒をさっきより強めている。
「こんにちはじゃ、可愛い人の子よ」
その女性はピンクウルフを見て微笑んでいた。
「まだ帰ってなかったの?」
あやめはこちらに刀を構えたまま言った。
「そんなつれないことを言うではないぞ。
こんなに上手い酒を用意してくれたんじゃから、黙って帰るわけにもいかんじゃろ。
それに少し席を外した間にいなくなるんじゃもの。
探したぞ、あやめ」
「それはごめん。
ちょっと野暮用だったから」
「なるほど、これがその野暮用な訳じゃな」
あやめに言われて鬼の女性はこちらを見る。
「それで用事があるのはどっちじゃ?」
「向こうの侍だ余」
「わかった。
なら、こっちのタキシードの女性はわらわに任せるがいい」
あやめの返答にそう答える鬼の女性。
「ありがとう、助かる余」
そう言ってあやめはいろはの方に向かってきた。
「え、えっと」
ピンクウルフが鬼の女性の方を向いている。
「ん?」
「なんと呼べばいいでしょうか?」
「ああ、わらわか?
そうじゃのう、ここでは客人じゃからな。
ん~鬼の女王とでも呼んでくれるか?」
「鬼の女王ですか?」
「んむ、それがしっくりくるかな。
さて、まずは目の前の鬼の子じゃが」
ひょうたんをピンクウルフに渡し、鬼の女王は1本の扇子を持ってマモリの方に向かって来た。
「さて、今からはわらわが相手じゃ」
「それは楽しみです」
マモリは鬼の女王に構えた。
(見た目で判断したらダメだ。
この相手の強さは多分ホロメン並み)
見た目は大人対子どもだが、マモリは一切手加減する気はなかった。
いや、手加減する余裕はない。
「行きます!」
一呼吸おいて間合いを一気に詰めるマモリ。
今回は初めから全開だ。
ダン!
素早い動きからの渾身の右ストレート。
しかし、その一撃を1歩も動かず鬼の女王は閉じたままの扇子で受け止めていた。
「く」
そのままマモリは両手で鬼の女王に連続攻撃を放つ。
だが、そのすべての攻撃を閉じた扇子で受け止め、弾き、防御する。
「ほれ」
鬼の女王はマモリの攻撃の合間に扇子を広げ扇ぐ。
凄まじい勢いの風がマモリを襲い、背後に吹き飛ばした。
「なかなか可愛い女性と遊ぶのは楽しいが、少し待ってもらおうかな?
鬼道術 縛!」
そう言って閉じた扇子をマモリに向けた鬼の女王。
「な!?」
マモリは構えたまま動かなくなった。
「完全に動きを止められてる?」
(指一本も動かせない)
「うむ、あやめの方も気になるからね。
少しそこで待っておるのじゃ」
そして、鬼の女王はあやめの方を見ていた。
「待たせた余」
「何者なんでござるかあの人」
「たまにお酒を飲みにくる知り合いかな」
あやめはいろはと相対したまま答える。
「それにしてもあの強さはホロメン並み」
「ま、鬼の女王だからね」
そう言って笑うあやめ。
「さ、それじゃ、決着をつけさせてもらう余」
【鬼神大元】をしたいろはに、あやめは鬼神刀阿修羅を正眼の構えで相対する。
「やはり使わないでござるな」
いろはも同じく正眼の構え。
「さっきも言った通り、百鬼流の真髄は動にあらず。
まだ、皆伝には至っていないけどその真髄を見せて上げる余」
そう言ったあやめの気配がとたんになくなった。
驚くいろは。
あやめはそこに見えているのに気配が全くない。
ゆっくりと足を前に出すあやめ、その目は閉じられたまま。
徐々にいろはとの間合いが縮まる。
いろははそんな無防備に間合いを詰めるあやめに、渾身の一撃を放つ。
しかし、当たらない?
あやめは確かにそこに見えるのに、攻撃が空をきる。
いろははもう一度あやめに攻撃を放つ。
やはり当たらない。
連続攻撃をしても全て当たっていない。
まさに暖簾に腕押し。
「百鬼流 奥義 光風霽月」
あやめがそう言った時にはもういろはの眼前にあやめが来ていた。
ゆっくりと鬼神刀阿修羅を振りかぶるあやめ。
そしてカ!と目を見開いたあやめにいろはは一瞬金縛りにあった。
振り下ろされた鬼神刀阿修羅。
いろはの【鬼神大元】は消え去り、全身の力が抜けたように片膝を着いた。
「秘奥義 静心斬
これで決着だ余」
そう言ってあやめは鬼神刀阿修羅を一振して刀を納めた。
「斬ったんですか」
鬼の女王の側に来たピンクウルフが聞く。
「いや、紙一重斬っていない。
あれは体を斬る技ではなく心を斬る技じゃからな。
それにしてもまた腕を上げておるなぁ、あやめは」
そう言って鬼の女王は笑う。
「ほれ」
鬼の女王が扇子をマモリから外すと体が動いた。
すぐにいろはの元に向かうマモリ。
「大丈夫ですか?
いろはさん」
「すまないでござる。
正直、体が動かない。
それにあの技は風真の眼でも真似できない」
マモリに聞かれて、だくるなった体のまま答えるいろは。
「奥義 光風霽月は心静かに全てを受け流す技。
そして、秘奥義 静心斬は相手の体ではなく、精神、やる気や元気を斬る技。
どちらも百鬼流の静の技だ余。
まだ、余も真髄には至ってないけどね」
あやめはいろはにそう語るように言った。
『いろはちゃん、こちらこよだよ。
お疲れ様、絆回収OK』
専用回線でこよりから連絡がきた。
いろははマモリに向かって頷く。
「今回はこちらの負けです。
でも次は負けない」
そう言っていろはを連れてマモリはその場から離れた。
先程の戦闘場所から少し離れた場所、マモリはゆっくりといろはを座らせる。
「すまないでござる。
まさか、ここまで倦怠感があるとは」
「早く城に戻って休みましょう」
「そうでござるな」
マモリに言われて、いろはは懐から転送用の機械を取り出す。
それを受け取ったマモリは機械を起動した。
目の前に現れるワープホール。
(またも、負けましたがもっともっと頑張って次は負けないでござるよ、あやめ先輩)
いろははそう思いながらマモリと共にワープホールに入りholoX城へと帰還した。