ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
『おっかえり~』
holoX城の円卓に来た3人に巨大スクリーンから、声をかけるこより。
「はぁ、本当にひどい目にあったでござる」
あやめの静の秘奥義を受けてまだ本調子ではない、いろはは椅子に座った。
「…」
ぼーっとした顔で静かに椅子に座るクロヱ。
「お疲れ様でした」
そう言ってルイも椅子に座った。
『本当にお疲れ様~
でも、4人とも無事に絆回収できてえらい。
着実に作戦は遂行されてます』
こよりは嬉しそうに言う。
「ん?
そう言えばどうしてまだロックの中にいるのでござるか?
こよちゃん?」
いろはは画面に映る男性を見ながら言った。
『それはですねぇ』
「私から説明しましょうか」
こよりの言葉にルイが続ける。
「実はまだラプラスが戻ってきていないんです」
その言葉に我を思い出したのか周りを見るクロヱ。
「本当だ、小さいから見えないのかと思ったらまじでいないんだ」とクロヱ。
「それはちょっと言いすぎでござるよ」
いろはは苦笑しながら言う。
「現在、ラプラスはある人物に呼び出されて、ある場所にいます。
ですので、万が一の為にこよりにはロックの中で待機してもらってます」
『と言う事です』
画面の中のロックがにこっと笑う。
「で、そのある場所って?」
クロヱがルイに聞く。
「【世界の境界線】の先、全ての始まりの場所です」
そこはどこまでも続く青い空。
穏やかな風の吹く静かな草原。
所々に木やコンクリートで作られた建物が、住人に見捨てられたように草花に包まれ立っている。
そんな場所を1人の女性が黙々と歩く。
風に揺らめく紫の衣。
大きな2本の角を持つその女性は、第六世代組の総帥、ラプラス・ダークネスだった。
「ここが※※※※※と呼ばれた場所。
昔はかなりの賑わいだったようだが、今はこんな状態とは」
ラプラスはそう呟きながら歩いた。
今回この場所に来たのはある人物に呼び出されたからだった。
ラプラスは計画通り【ファンタジー】の世界に着いた時にそのメールは届いた。
普段なら相手がホロメンだろうと応じる事はないラプラスだったが、今回の相手は違った。
「約束の場所はこの先か」
ラプラスはすっと前を見る。
そこにはまだ距離はある筈だが、巨大な剣が見えていた。
ラプラスはそのまま歩き続ける。
そして、そこは見えてきた。
剣の全体が見える高台でその女性は剣を見上げながら待っていた。
「来てくれたんだね」
そう言って女性はラプラスの方に振り返る。
「もちろんです。
さすがに無視できないですよ、そらさん」
そう言ってラプラスはそらに微笑んだ。
そらはいつもの微笑みでラプラスを見る。
ラプラスもまた少し離れた場所からそらを見た。
「ここってどこか分かる?」
「ええ、この【ホロライブワールド】の前身になったゲームの場所ですよね」
そらの質問にラプラスは答えた。
「そう、この世界は今は眠りについたけど、【ホロライブワールド】の世界とリアルを繋ぐ役割をしている」
そらはそう言って自分の後ろにある剣を見る。
「私はね。
【ホロライブワールド】もこの世界と同じようにみんなが楽しく遊べる、暮らせる世界になってほしいと思ってるの。
ラプちゃんはどうかな?」
そらはラプラスの方を向き顔を見る。
「もちろん、吾輩もそうですよ」
ラプラスは答える。
「そっか、なら大丈夫だね」
ラプラスの答えを聞いてそらは頷いた。
「な、信じてくれるんですか?」
ラプラスはそらに慌てて言った。
「もちろん、あのラプちゃんの分身だもの」
そう言って笑うそら。
「…はぁ、敵いませんね、そらさんには」
ラプラスも苦笑しながら言った。
「それはそうと第六世代組のみんなは6期生のみんなとリンクを切ってるでしょ」
「う」
(確かに吾輩が封印を解除した後、リアルの本体に迷惑がかかるといけないからリンクを解除している)
「私がここに来たもう一つの理由はそれだよ。
この前ラプちゃん達に会った時に、【ホロライブワールド】の自分達のAIとリンク出来ないって相談されたの。
それでラプちゃん達の代わりに、ここに来て話を直接聞こうと思い呼び出したの」
「それは…」
ラプラスが困った顔でそらから目線を外すと。
「でも、さっきの雰囲気と言葉からして悪い事をする為にリンクを切ったのではないみたいだし、リアルのラプちゃん達には上手く説明しておいてあげる。
でも、たまにはリアルの自分にも連絡してあげてね」
そうそらは優しく微笑みながら言った。
(本当に敵わないな)
ラプラスはそう思った。
「さて、私の用事は終わったし、今度はラプちゃんの用事を済ませようか」
そらはそう言ってラプラスに向かって構える。
「いいんですか?そらさん」
ラプラスはそう言いながそらに向かって構えた。
「私一応レアキャラだから、ここで逃したら次はいつになるか分からないよ」
そう、ときのそらはこの【ホロライブワールド】において唯一AIが存在しないホロメンだ。
リアルの彼女がプレイヤーとして動かしている為に他のホロメンと違い遭遇率が極端に少ない。
(それは願ってもないけれど)
ラプラスは構えながらそらを見る。
相手はプレイヤーとはいえホロメンだ。
それも他のAIと違い人が直接動かしている為、他のホロメンより基本性能が段違いに高い。
そして、チートと言われるホロメンに更にチート能力を付与されているのが目の前に立つ、ときのそらと呼ばれる【ホロライブワールド】のキャラクターだ。
ましてや、今のそらには守る者がいない。
それはすなわち周りを気にせず、手加減なしの全力を出せると言う事。
ちなみに守る者がいたらそらは全力が出せないのかというとそうではない。
守る者がいた場合はその守る者を守る為に、そらは全力を出す。
ただ、周りに少なからず影響が出る技を使わないというだけだ。
「久しぶりの全力勝負楽しみだよ」
そらは笑う。
しかし、笑顔の先の相手には、その笑みは死神の笑みに近い。
だが、ラプラスも普通ではない。
運営が試験的に使った特殊素体で作られ、そのあまりにも予想以上の力の為に、限定封印されていたキャラクターだ。
そして、今はその封印は解かれている。
「では、吾輩も全力で」
ラプラスもそう言って笑った。
「では、まずは小手調べ」
パチンと指を鳴らすラプラス。
「え?」
突然、そらの首にあの【偽会】の能力を封じたラプラスの封印具が付く。
「最後の1つです。
これで能力のいくつかは封じさせてもらいましたよ」
ラプラスは笑う。
しかし、そらは平然と首に付いた封印具を掴んだ。
そして、パキンと握り潰す。
「な!」
驚くラプラス。
そんなラプラスに
「この封印具はホロメン専用だけど、AI専用でもあるの私はAIじゃないから」
と言って微笑んだ。
「く!」
ラプラスは右手をそらに向けて紫の玉を打ち出した。
「【円卓の騎士】よ!ver.大楯」
紫の玉はそらに当たり大爆発を起こす。
スターズぐらいなら一撃で仕留められるほどの威力がある攻撃だが。
爆発の後の煙が消え、そこには青と白で彩られた巨大な盾があった。
そして、その盾を横にずらし、青と白のライトアーマーを装備したそらが立っていた。
「それがそらさん専用のスキル【円卓の騎士】」
「そう、ファンのみんなの力を借りてる」
ラプラスにそう答えるそら。
「ver.ナイト!」
光に包まれ小型の盾と長剣を装備したそらに変わる。
そのまま、ラプラスとの間合いを詰める。
「やぁ!」
勢いのある一撃をバックステップで避けるラプラス。
しかし、そらの背後には、そらと同じ色の装備をしたメイジの姿が!
(しまった!)
メイジの杖から巨大な火球が、ラプラスに向かって撃ち出される。
咄嗟に腕をクロスして防御するラプラス。
火球はラプラスに当たり爆散した。
だが、あれ程の威力でもラプラスに傷1つ見当たらない。
「ver.ランサー」
そらの手には槍が握られている。
そのまま、勢いよくラプラスを突き刺すように、そらは槍を伸ばす。
だが、槍はラプラスから現れた紫の手によって捕まれた。
「ver.モンク」
いつの間にかラプラスの懐に入ったそらが、その小手でラプラスを空中に打ち上げた。
ラプラスはその一撃も防御している。
空中に打ち上げられたラプラスの周りを4人の騎士が回りながら上がっていく。
アーチャー
ガンナー
ビショップ
符術士
ビショップの光の輪がラプラスを拘束。
他の3人がラプラスに全方位攻撃を仕掛けた。
矢と弾と札がラプラスを包み込もうとする、が。
ラプラスはそれもバリアを作り防いだ。
ラプラスはそのまま地面に降りる。
それを元の姿に戻ったそらは笑顔で見ていた。
(時を支配する【偽会】のクロニーでさえ押さえた、吾輩の力を持ってしても、防戦一方になってしまうとは)
ラプラスはそらを見る。
まだ、力を隠している気がする。
(それに数えて9人。
後、4人いる)
「せっかく全力を出すって言ったんだし、出し惜しみはしない」
そらがそう言って手を前に出す。
「ver.大剣!」
そらはまた光に包まれ先程の鎧を着る。
そして、伸ばした手には片手では持てないような巨大な剣を、片手で持っていた。
(10人目)
ダン!
大地を蹴り間合いを詰めるそら。
ラプラスもその手に紫色の剣をいつの間にか装備していた。
ガキンと武器を合わせる2人。
そのまま、大剣と剣の打ち合いになる。
ラプラスの見た目からは想像できない剣技で、そらに応戦する。
そらも大剣とは思えないスピードで、ラプラスと打ち合っていた。
ギャンと武器を鳴らし間合いを取る2人。
すかさず左手を伸ばしたラプラスは、そらに向かって紫の稲妻を放つ。
しかし、そらの後ろにいつの間にか現れたウィッチが、同じく稲妻を放ち相殺した。
(11人目!)
ラプラスがそう思った瞬間、横から嫌な気配を感じた。
咄嗟に紫の手で防御する。
そこをズバッと紫の手を切り落とす、青と白の装飾の着物の侍。
その場からジャンプして間合いを取るラプラス。
(12人目、侍もいるのか)
ふと、飛び上がったラプラスはそらを見る。
その横には1人の魔導師風の人物。
そして、その後ろの大地に巨大な魔方陣が浮かび上がる。
(まさか)
ラプラスの嫌な予感は的中し、魔方陣から巨大な竜が顔を出す。
(13人目はサモナー!)
竜は大きく息を吸い、ラプラスに向かってブレスを放つ。
ラプラスは紫の手を出現させ前に出す。
そしてそこからエネルギー波をレーザーのようにして撃ち出し、そのブレスを相殺する。
「ラプちゃん、きちんと耐えてね」
そう、ラプラスはそらの声を聞いたような気がした。
「ナイツ・オブ・ラウンドver.ときのそら」
そらの声は静かだったが、その言葉ははっきりとラプラスの耳に聞こえた。
ラプラスは最大級の危機を感じて、全力のバリアで
自らを包む。
そこは空の中だった。
見渡す限りの空、そこにラプラスは1人浮いていた。
そして、空の彼方からそれは来た。
大楯
ナイト
メイジ
ランサー
モンク
アーチャー
ガンナー
ビショップ
符術士
大剣
ウィッチ
侍
サモナー
それぞれが持つ最強の武器で、空の中に浮かぶラプラスを攻撃する。
正直ラプラスでなければ、この攻撃には耐えられなかっただろう。
しかし、まだ終わらない。
ゆっくりと大きな手で包まれるラプラス。
それは巨大なそらだった。
ゆっくりとそして確実にそらはその手を合わせていく。
そして攻撃は終わった。
「はぁはぁはぁ」
大地に両手をついて荒い息をするラプラス。
(これが本気のそらさん…)
なんとか耐えたが、ラプラスはもうほとんどの力を使いきっていた。
「すごい、あの技さえも耐えきるなんて」
そらはラプラスから少し離れたところで、ラプラスを見ていた。
「あの技を使うには条件があって、全ての【円卓の騎士】の力を、使う相手に見せる事。
普通は最後まで見せれないけど、さすがはラプちゃんだね」
「はぁはぁ、そんなの誉められても嬉しくないですよ」
その場に座り込むラプラス。
「なんであの時この技を使わなかったんですか」
ラプラスは【偽会】との戦いを思い出して言った。
「さっきも言ったように、この技には条件があるの。
途中、他の技は使えないし、一度使った騎士に力を借りるとこの技は成立しないから」
(だから守る相手がいない時に使える技か。
守る相手がいたら、同じ騎士を使わないといけない時があるから)
「それでどうする?
まだやれる?」
そらは何故か嬉しそうに聞いてくる。
「遠慮しときます。
これ以上はこのままだともたない」
ラプラスは正直に言った。
(そう、この状態のままだと…)
「そっか、残念。
じゃ、私はそろそろログアウトするね」
そう言ってラプラスに背を向けるそら。
「1つだけ」
そんなそらにラプラスが声をかける。
「ん?」
振り向くそら。
「吾輩達に心配かけてごめんなさいって伝えといてください」
「わかった。
必ず伝えておくね」
そう言って微笑んだそらはログアウトした。
1人残ったラプラス。
その場に寝転がる。
また静かな世界になった。
(風が気持ちいい)
「あ~あ、疲れた~~~」
大声を出すラプラス。
「もう、帰って寝る」
そう呟いて、大地に作り出したワープホールにズブズブと沈んでいった。