ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
「いやぁ、だってにぇ。
山から下りてきたら美味しそうなお団子の匂いがしたからさぁ」
団子片手に頭をかきながらみこは言った。
「山から下りたらってここ神社からだいぶ離れてるぺこなんですけど?」
ぺこらはジト目でみこを見る。
「え?あ、それはまぁ、ここの団子は前から食べたかったしにぇ?」
「にぇ?って言われても誤魔化しは効かないぺこよ」
「まさか、ぺこら先輩以外にみこ先輩もいるなんて、これは嬉しい誤算です」
「もう、追い付いてきたぺこか」
声のする方を見てぺこらはこよりに言う。
クロヱと挟み撃ちするように立つこより。
「さて、それではお2人にはこよ達の相手をしてもらいましょうか?」
こよりはそう言って白衣から大きめの銃を取り出す。
クロヱも逆刃の鎌を構えた。
「ふぅ、後輩の挑戦は別にいつでも受けてあげるぺこですけど…
あんたは何してるかぺこか!!」
ぺこらはロックの横に座り団子を食べているみこを指差して言った。
「いや、まだ団子食べてるし」
「食べてるしじゃないぺこでしょ!
みこ先輩も狙われてるぺこですから」
「ふぅ、もう」
そう言いながら食べかけの団子を全部口に入れ、みこはぺこらの横に向かった。
「あ、すいません。
団子もう一皿お願いします」
ロックが茶屋の人に注文をする。
(何やってるの、いろはちゃん)
団子を注文したロック(いろは)にこよりが、専用通信で声をかける。
(え?さっき食べられてしまったでござるので)
(いや、ござるのでじゃなくて)
クロヱが通信で突っ込む。
(ふつう、目の前でホロメンが現れてこれからバトルって展開になったら驚くよ?)
クロヱがロック(いろは)に伝える。
確かに、先程からぺこらとみこが何やら話ながらロックを見ている。
「あの団子そんなに上手いぺこか?」
「それはもうめちゃくちゃうまい」
(そっちかい)
通信で届かぬ突っ込みを入れるクロヱ。
(ま、あの2人なら大丈夫でござふよ)
出された団子を食べながらロックが答えた。
(そう、みたいだね)
いろはの言葉に同意し、こよりは銃を2人に向ける。
「いつからこの世界のホロメンは、出会ったら戦うみたいな物騒な世界になったぺこ?」
銃を向けられても少しも動じず、ぺこらはこよりに言った。
「一応、こよ達は世界征服を企む秘密結社なので」
「ということは、ぺこら達は正義の味方ぺこ?」
「おお!」
ぺこらの言葉にみこが嬉しそうに声をあげる。
『…』
「なんで黙るにぇ!」
静かに見守るこより達にたまらず、みこが突っ込んだ。
「いえ、まぁ、ねぇ」
「ま、まぁね」
誤魔化すこより達。
「もう、いいぺこ。
売られた喧嘩は買うようにしてるから、相手してやるぺこ」
ぺこらはポケットから何かの紋章を取り出す。
警戒するこよりとクロヱ。
そして、ぺこらはその紋章を高々く空に向かって掲げた。
「我の名はぺこら。
勇者の力を受け継ぐ者なり。
我の前に立ちはだかる絶対的な悪を倒す為に」
「?」
自分を指差すクロヱ。
それを見てこよりは人差し指を口に当てた。
「その力を呼び起こす」
ぺこらの言葉に反応して紋章が激しく光輝いた。
そして、その光が収まった時。
そこには剣と盾を持ち青いマントをなびかせて立つぺこらがいた。
「勇者ぺこら参上!!ぺこ」
「変身した?」
「それって第四世代の力じゃ」
驚くこより達。
「ふふ~ん、この勇者の紋章(ぺこら専用)があれば、ぺこらも変身する事ができるぺこ」
勇者ぺこらがにやりと笑い剣をこよりに向ける。
「なら、みこの相手はクロヱたんだにぇ」
みこがクロヱを見る。
クロヱは気合いを入れ直して鎌を構えた。
「では、行くぺこ」
ぺこらの声にホロメン達の戦いが始まった。
「やぁ~!」
こよりは気合いのはいった声と共にぺこらに銃を放つ。
放たれたのはレーザー弾。
レーザー弾は確実にぺこらに向かっていく。
「こんなもの!」
兎の模様が入った盾を構えてレーザー弾を受けるぺこら。
しかし、連続で放たれる攻撃にぺこらは間合いを詰めれず防戦一方だった。
「このまま押しきっちゃいますよぉ」
そう言ってこよりは白衣から何かを地面に落とす。
それは丸い鉄の玉。
地面を転がったその複数の玉はしばらくすると、宙に浮かび上がった。
玉には赤いモノアイが光りぺこらの方を向く。
そして、そのモノアイからもレーザーが放たれた。
「く!
ワイドシールド」
ぺこらの声にぺこらの前方全てを覆えるように盾を起点にエネルギーシールドが展開される。
すべてのレーザーを防ぐぺこら。
だが、やはり間合いを詰めれない。
「いつまで持ちますか?」
こよりが動けないぺこらを見て不適に笑う。
「勇者の武器が剣だけとは思わない方がいいぺこよ」
そんなこよりにぺこらは笑って言った。
「え?」
「雷よ!」
少し驚いた顔をしたこよりにぺこらが言葉を放つ。
言葉は力を持ち、こよりの頭上に向かって雷が降る。
「きゃ~」
雷は運良くこよりの頭上に動いてきた鉄の玉に落ちた。
しかし、衝撃はこよりを襲い、こよりはその場に倒れる。
「まさか魔法なんて」
すぐに起き上がるこより。
「勇者ですから」
ぺこらはそう言って笑った。
「なら、これは使ってても仕方ないです」
持っていた大きめの銃を捨てるこより。
銃は地面に着くより早く空中で消える。
「いけ、モノアイビット」
ぺこらを、指差すこよりに答え、残り5つの鉄の玉がレーザーは放ちながらぺこらに向かう。
ぺこらはそんなレーザーを今度は紙一重で避けたり、盾でレーザーの軌道をそらしながら前へと出る。
その勢いは凄まじくあっという間にこよりとの間合いが詰まった。
そして、その手に持つ剣を振りかぶり、ぺこらはこよりに会心の一撃を放った。
が!
ガキン
「その白衣は四次元か何かぺこか?」
自身の強烈な一撃を、白衣の下から取り出した小太刀で受けるこよりを見て、ぺこらが呆れたように言う。
「何でもあるわけじゃないですけど、ほとんどはありますよ」
こよりはそのままぺこらを押し放しながら言った。
押された力でバックステップをして地面に立つぺこら。
「裏方とばかり思ってたけどそうじゃないみたいぺこね」
剣を構えるぺこら。
「最近、刀の使い方を習ってますので」
逆手に小太刀を持ちこよりはぺこらを見る。
「次はこちらから行きます」
そしてこよりはぺこらとの間合いを詰めた。
「あっちはあっちで楽しそうだにぇ」
クロヱを前ににこにこしながらぺこら達をちら見しているみこ。
「余裕ですね」
そんなみこに少しため息つきながらクロヱは言った。
(完全に無防備に見えるのに、攻撃したら避けられる感じしかしない)
クロヱの掃除屋の部分がそう感じた。
「さて、こっちも始めよう」
シャン
そう鳴ってみこは鉾鈴をクロヱに向ける。
(やっとかぁ)
クロヱも構えたままみこを見る。
いくらオリジナル世代といえども戦闘になれば隙も生まれる。
そこをクロヱは狙うつもりだった。
シャン
ゆっくりと舞うようにみこは鉾鈴を顔の横へと振りかぶる。
シャン。
また、鈴の音。
(ん?)
クロヱはやっと気づいた。
(鈴?)
みこの持つものがいつもの大麻ではなく鉾鈴なことに。
クロヱの表情に、みこは嬉しそうに微笑みシャンと鉾鈴を振り下ろしクロヱに向ける。
そして「【桜幻鏡】さぁ、本物どぉ~こだ」と笑顔で言った。
そこは桜の木が取り囲む場所だった。
さっきまでいた場所とは明らかに違う。
みことクロヱ以外にその場所には誰もいない。
そう、ここには50人ほどの人しかいないのだ。
(やられた)
クロヱは心の中で後悔する。
みこと対峙した時、クロヱは隙を見つけられなかったがその代わりに敵意も感じなかった。
だからか、クロヱから仕掛ける事はせず、成り行きを見守ってしまった。
その心の隙をみこにつかれた。
クロヱの目の前で様々な動きをしているみこ。
「これって幻ですか?」
そう聞くクロヱ。
「そんな『み』たいなもの?」
「『こ』ら、嘘言ったらダメにぇ」
「そうそう、『ち』ゃんと教えて上げよう」
「ええ、『や』だ、めんどくさい」
「『ん』~ん、そうですねぇ」
『というわけで教えないと言う事で』
「あ~もう、うるさい」
目の前で数人のみこが代わる代わる答えクロヱは、うんざりする。
この場所に来てから回りには様々な格好、体格のみこがうじゃうじゃいた。
「なんなんだよ、もう」
クロヱは近くにいるストリートファションのみこに、持ってる鎌をふる。
ガキン
全く攻撃する気配を出さない体勢からのクロヱの攻撃を、そのみこは鉾鈴で受け止めた。
「『み』んな見てるからにぇ」
「1人1人がみ『こ』だから」
「く」
距離を取りたいクロヱだが、周りはみこに囲まれている。
「そっ『ち』もやる気みたいだし」
「こっみも『や』っちゃいますか?」
「いくぞ~クロヱた『ん』、かっかれ~!」
どのみこか分からないが、その号令にその場にいるみこ達が一斉に襲いかかる。
(ああ、ある意味悪夢だぁ)
襲いかかるみこの壁を見ながらクロヱは、やはりため息をついた。
「やったにぇ」
クロヱを押し潰されているであろうみこ達の小山を見ながら、少し離れたところからみこが言った。
それは先程クロヱと対峙していた服を着ているみこ、そうこの技【桜幻鏡】を使ったみこである。
【桜幻鏡】はこの【ホロライブワールド】に保存されているデータの中からさくらみこのデータを引っ張り出して使うチート技。
この1人1人のみこは幻ではなく、ある意味さくらみこ本人だ。
世界の調律を行っているみこだからこそ出来る技でもあった。
「ま、この世界限定だけどにぇ」
「なら、この世界を喰い破ってあげますよ」
「にぇ!」
小山からそう聞こえたと思うと、巨大な水で出来たシャチが大きな口を開け、地面から小山を飲み込んだ。
そして、破裂する水のシャチ。
その後には目を回して倒れる無数のみこ達と、何故か衣服が乱れているクロヱが立っていた。
「めちゃくちゃですよ、セクハラされまくりです」
「ははははは」
クロヱにジト目で睨まれ、みこは罰悪そうに笑う。
「いや、ほら、これはみこであってみこではないと言うかぁ」
「めちゃくちゃみこ先輩でした!」
「ははははは」
「と言う訳で、こんな如何わしい世界は消させてもらいます」
クロヱは懐から小型爆弾を取り出す。
「え?それって」
「ま、爆発オチってやつで」
「やっぱり~」
手元の小型爆弾を投げ、クロヱはフードを深く被りコートで自らの体を隠すようにしながらしゃがむ。
そして、小型爆弾は地面に落ちたと同時に爆発した。
「な、なにやってるぺこか?」
ギャグアニメによく見る真っ黒になったみこを見て、ぺこらは言った。
「こほ、爆発オチは嫌いだにぇ」
口から黒い煙を吐いてみこが言う。
「大丈夫?クロたん」
「なんとか貞操は守りきった」
「なんて?」
クロヱの答えに聞き直すようにこよりが言う。
「また、あんたあの技使ったぺこか?
あれは宴会用だって言ったぺこでしょ」
クロヱの言葉に何かを察したようで、ぺこらはみこに呆れながら言った。
「だって、兎田ばかりかっこいいのうらやましい」
「いや、あんたのあの技はかっこよくないから」
「それよりあの爆発で真っ黒になるだけってどうなってるんですか?」
クロヱはぺこらに呆れられているみこに聞く。
「ま、みこは神社から出るとギャグ補正がかかるからにぇ。
そう簡単にはダメージは与えられないよ」
と言うみこはもう真っ黒ではなくいつものみこに戻っていた。
「理不尽」
ポツリと呟くこより。
確かにオリジナル世代といえどその能力は理不尽だった。
「じゃ、無敵の盾も戻ってきた事だし仕切り直しぺこ」
「え?無敵の盾?」
ぺこらに言われて自分を指差すみこ。
ぺこらはそんなみこを見て満面の笑みを浮かべながら頷いた。
「な、なんでみこが盾を…」
ブオン
ぺこらに何か言おうとしたみこの背後に突然黒い球体が現れる。
『え?』
誰もがその球体に驚き、そして、言葉を失った。
「ぺこ…ら…」
それは、ぺこらの名前を呼ぼうとしたみを、一瞬で吸い込んで消えたからだ。
「な、なにぺこあれは!」
ぺこらがこより達に向かって叫ぶ。
しかし、こより達にも分からない。
「こよ達も分からな…」
「こよちゃん?」
「え?」
こよりは名前を呼ばれた方を向く。
そこには黒い球体に、まさに飲み込まれようとしているクロヱの姿があった。
「クロ…たん?」
こよりの言葉が終わると同時にクロヱは黒い球体に飲まれ消えた。
「え?な?なに?」
慌てて辺りを見渡すこより。
しかし、そこにいるのはぺこらとロックだけだった。
ぺこらも警戒したように周りを見ている。
(こよちゃん、落ち着いて。
クロちゃんは今このエリアから離脱してる)
ロック(いろは)からの専用通信。
(エリアから移動?)
(そうでござる。
何者かが強制的に移動させたみたいでござるな)
(移動させられた場所は分かる?)
(ここではちょっと)
(分かった。
ごめんね、いろはちゃんは先に城に戻ってルイルイと一緒にクロたんを探索して)
(分かったでござる)
(絆は?)
(ぺこら先輩の絆はゲットできてるでござるよ)
(分かった、後は任せて)
(了解)
通信が終わった後、ロックは茶屋から旅立つ。
「ぺこら先輩」
「何ぺこか?」
こよりへの警戒を解いていないぺこらが返事をする。
「何者かがクロたん達をこのエリアから移動させたみたいです」
「それがそっちの仕業でないという証拠は?」
確かに証拠はないが。
「証拠はありませんが今は信じてもらうしか」
こよりは真剣な顔でぺこらを見る。
ぺこらはその顔を見て短くため息。
「分かったぺこ。
でも誰がみこ先輩達を」
「犯人はここにいますよぉ」
『え?』
いきなり声をかけられ2人は街道横の林を見た。
そこから1人の女性がゆっくりと現れる。
「あなたは?」
「わため?」
「はい、漁夫の利を狙ったわための仕業です。
でも、わためは悪くないよねぇ?」
そう言ってわためはにやりと笑った。