ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~   作:天野空

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第18話 兎に角にも桜の元へ 後編

「どういうつもりぺこ?

返答次第じゃ、少し痛い目にあう事になる」

ぺこらはその手に持つ剣をわために向けた。

その隣でこよりも身構える。

「やっと追い付いた」

そんな時背後からそう声が聞こえた。

振り返る2人。

そこには町でまいたGMの5人が追い付いてきていた。

(しまった、忘れてました)

心の中でこよりは後悔しわためを見た。

(ここでのGM登場を今のわため先輩が利用しない訳がない)

こよりの思った通りわためはGM達を見てニヤリと笑っていた。

「ちょうどいいところに。

第六世代に操られたぺこら先輩を助けたいんです」

「!」

(声が出ない?)

わための言葉に反論しようと声をあげたが、こよりの口から声が出ていない。

隣のぺこらも同じようだ。

(これもわため先輩の力)

「操られている?」

小柄な赤色のスーツを纏ったGMが聞く。

(確かレッドライオン)

「はい、みこ先輩は先にクロヱちゃんに捕らえられてしまって、どうにかぺこら先輩だけでもと思ったら、こよりちゃんが怪しい薬でぺこら先輩を」

迫真の演技なのか、素なのかわためがGMに訴える。

(うう、私ならやりそうだからなぁ)

と自分を評価するこより。

「分かりました」

何やらレッドライオンは青色のスーツを着た女性、ブルードルフィンに何かを言った後、ゆっくりと銃を構えぺこら達に近づく。

残りのメンバー3人も銃をぺこら達に向けていた。

(このままでは)

こよりはGMに身構える。

ぺこらも剣をわために向けたまま、盾をGMに向かって構えた。

思惑通りにいっているのが嬉しいのか、わためはニヤリと笑う。

そして、そのままGMはぺこら達のところに来た。

「えっと?」

わためは不思議そうに呟く。

そう、GMは銃を構えたまま、ぺこら達のところに来ただけだった。

「分かった」

何やら通信を受けたのかレッドライオンはそう言うと、手元の銃を素早く片付けると、いつの間にか手に持っているスイッチを押す。

「くはぁ」

「あれ、声が?」

その途端、ぺこら達の声が出るようになった。

「な、ど、どういう事?」

その光景を見て驚くわため。

「どうもこうも、はなから怪しいので調べてもらったんです。

そしたら案の定、変な力が働いていたようなので解除させてもらいました」

そうレッドライオンはわために答えた。

「な、どうして」

「わためちゃんは自分の今の姿見たことありますか?」

そうレッドライオンはわために聞いた。

「今の姿?

見るわけないよ、ナルシストでもあるまいし」

「ま、自分の姿を確認するのがナルシストって訳ではないですが、1度は出掛ける前に確認しておいた方がいいですね。

今のあなたの鎧。

真っ黒ですよ」

「え?」

わためは自分の姿を見る。

確かに全身鎧は黒い。

「あなたの変身した姿は黄金騎士でしたよね?」

そう言ってレッドライオンは微笑んだ。

「そんなバレバレな怪しさ見逃すはずないですよ。

ま、うちの中の1人は分からなかったみたいですが」

そう言われて後ろで他の味方を見ながら自分を指差している緑の男性。

「それで、うちには優秀なサポート役がいますから調べてもらいました。

状況を手短にこちらの仲間に送ってもらえますか?」

レッドライオンはわためにそう言った後、こよりに言った。

こよりは頷き、すぐにデータをブルードルフィンに転送する。

「なるほど、黒い渦にですか」

「隊長、やはり例の力が使われた形跡があります」

ピンクスーツの女性。

ピンクウルフから通信が入る。

「了解、それではブルーとピンクはそのまま、消えた2人の探索を、残りは私と共にわためちゃんを押さえる」

『了解』

「例の力?」

レッドライオンの言葉に、ぺこらは不思議そうに聞く。

「まさか、コメント集の力?」

こよりがそう驚きながら聞くとレッドライオンは頷いた。

「な、あれはもうなくなったんじゃないぺこか?」

ぺこらも驚く。

「そのはずですが最近、またその力が出現しています。

そして、現時点で目の前にその力に支配されたホロメンがいる」

ぺこら達はわためを見た。

わためは腕組みをしてにやにや笑っている。

その笑いはいつもの笑顔ではなく、今まで見たこともないような邪悪な笑みだった。

「隊長」

合流するイエローコングとグリーンイーグル。

「5対1。

数では勝っているが」

レッドライオンは気を抜かず銃をわために向かって構える。

「そう、数で勝てる程、この世界は簡単じゃないよねぇ?」

そう笑うわための左右に黒い何かが盛り上がっていく。

それはわためを優に超え、倍近くの大きさになった後、形を成す。

それはいつかわためが変身を暴走させた時に見せた、羊の頭をした巨人だった。

「それくらいはしますか」

こよりは素早く巨人を索敵。

(やはり)

「あれもコメント集で作られた人型です」

「でしょうね」

「あの2つをどうにか抑える事はできるぺこか?」

わためを睨むぺこらがGMとこよりに言う。

「どうするんですか?」

こよりがぺこらに聞いた。

「あいつらを抑えている間に、ぺこらがわためにお灸をすえる」

ぺこらはそう言って剣を構える。

その横顔は真剣だ。

「分かりました、私達4人であの怪物は抑えます」

そう、レッドライオンは言った。

「今は一時休戦だ。

コメント集が出たとなっては他の事は後回しにせざる終えない。

そっちには優秀なグリーンを付ける」

「ええ、俺ですか?」

レッドライオンの言葉に驚くグリーンイーグル。

「分かりました。

では、羊狩りはぺこら先輩にお任せします」

こよりの言葉に頷くぺこら。

「では、行きます。

捕らわれた2人も気になります。

作戦開始です」

こよりの言葉で5人はわため達に突撃した。

 

「バカ正直に突っ込んで来るんですね。

いいでしょう、お望み通り相手してあげます」

わためは振り上げた手を自分に向かってくるぺこら達へと振り下ろす。

『ガァァァァァ』

2匹の羊巨人は5人に襲いかかる。

それを避けて前に出たのはぺこら。

『グガァァォ』

避けられ振り向こうとする羊巨人だが、レッドライオンとイエローコング組、こよりとグリーンイーグル組に攻撃されてそれは叶わなかった。

「よくやったぺこ」

ぺこらはわために向かって走る。

「へぇ、1対1ですか」

わためはニヤリと微笑む。

「1対1じゃ自信ないぺこか?」

わために対峙するぺこら。

「さっきの答え聞いてないぺこよね?

どうしてこんな真似をした?」

剣をわために向け問うぺこら。

「それはもちろん、みんなの意見を尊重したんです。

このわためぇの体に纏わりつく黒いコメント達の思いに。

みこ先輩達を堕とし仲間にしろって」

そう言ってわためは自身の鎧を抱くようにしながら、嬉しそうに言う。

「完全に取り込まれたぺこか」

そんなわためを見てぺこらは呟く。

「ぺこら先輩も身を委ねたら分かりますよ。

みんなの言う事を聞いて動けば、こんな楽な事はない。

そう、何も考えなくてもたくさんのファンが集まるんですよ」

「願い下げぺこ。

ぺこらは自分で考え、自分で何をしたいか決める。

操り人形にしようとしてくる相手なんか、ぺこらには必要ない」

吐き捨てるかのようにぺこらは言った。

「そうですか、残念です」

『助けてぺこら先輩』

「え?」

ぺこらには今、何か聞こえたような気がした。

「ま、いいですよ。

そんな事言ってもこの気持ちを受け止めたら、また考えも変わります」

『いや、わためぇはこんなのいや』

「そこにまだいるぺこか?」

「なに言ってるんですか?」

『助けて、まだ消えたくない』

確かにわためが喋っている言葉の裏で、もう1人わためが喋っている感じがした。

「そうか、まだそこにいるぺこな。

だったら」

ぺこらは剣を納める。

「へぇ、観念したんですか?」

わためはそう言って手をぺこらに向ける。

その手に黒く蠢く黒い文字列が集まってくる。

「観念する?

そんな言葉はぺこらは知らないぺこな!」

そう言ってぺこらは胸元から何かを取り出し空に掲げる。

「救ってやるぺこ。

この借りは高くつくぺこよ!」

「な、それは」

ぺこらが掲げた物を見てわためは一瞬驚いた。

「そう、勇者の紋章。

勇者の変身が一回だけとは限らないぺこよ」

そう言ったぺこらの目に、青白い炎が燃える。

「これこそ我が幸運眼をかけた最終変身。

絶対勇者ぺこ~!」

青白い炎がぺこら包む。

そして、その炎がまたぺこらの瞳に戻った時、そこには全身青と白の鎧兜を着けたぺこらが立っていた。

「な、な」

後ずさるわため。

ゆっくりと腰にある剣を抜くぺこら。

その抜いた剣も先程とは比べられない程の力を発していた。

「くぅ」

わためは手から黒い弾丸を放つ。

コメント集をまとめて打ち出したのだ。

ひゅん、ひゅん。

ぺこらが軽く剣を振る。

するとぺこらに迫ってきていた黒い弾丸は真っ二つに斬られて空に消えた。

「な、まさか侵食されないんですか?」

そう普通ならコメント集に触ればそこから、コメント集はその物に纏わりつき侵食していく。

しかし、今のぺこらは幸運眼の力をフル回転して変身している絶対勇者。

コメント集が侵食出来ないという、稀な確率をも自分のものにしてしまう。

「いくぺこよ」

剣を振りかぶるぺこら。

「ひ、ひぇ~」

頭を抱えるわため。

しかし、ぺこらのその手は微妙に震えていた。

それは幸運眼の力をフル回転さしているぺこらでさえ、わためをコメント集から救えるかどうか分からないからだ。

前に一度ぺこらは仲間をコメント集から守れなかった。

それが今でも彼女を躊躇させる。

「ふ、ふふふふ。

そうですよね。

ぺこら先輩には無理ですよね」

わためはその姿を見てゆっくりと下がる。

背後には黒い渦が現れていた。

 

「ぺこら先輩?」

羊巨人と戦いながらこよりは、ぺこらを見た。

剣を振りかぶるがその場から動けないぺこらの前に、ゆっくりと後ろにある黒い渦に下がるわため。

(このままじゃ、逃げられる)

そう感じてこよりは、ぺこらの方に向かおうとするが。

ドガァ!

目の前に巨大なパンチが振り下ろされる。

「邪魔です」

懐から試験管を数本取り出し、その腕に投げつける。

試験管は割れ大爆発を起こすが、その腕にはあまりダメージが入っていない。

(やはり、対コメント集の武器でないと)

そのまま掴もうとしてくる腕を避けてこよりは背後に跳ぶ。

(ぺこら先輩、どうかわため先輩を逃がさないで)

こよりはそう願いながら、目の前の羊巨人を睨み付けた。

 

「ふふ、今回は痛み分けって事にしましょう」

ゆっくりと下がる。

「まて!」

ぺこらも剣を振りかぶりながら前に出るが、その剣を振り下ろせない。

「ふふ、それじゃ、また。

今度は上手くいえばいいですね」 

わためはそう言って背後の渦へとダイブした。

「あ」

その姿を見てぺこらは後悔する。

自分が剣を振り下ろせず、みすみす仲間を助けられなかった事に。

しかし。

「まだ、諦めるのは早いよ、ウサギさん」

『え?』

ズバァ!

その言葉と同時にわための背後の渦が切り裂かれた。

背後の渦が斬られ、転移出来なかったわためは驚いた顔をして、その渦の消えた後にいる者を見る。

ぺこらも驚きながらその者を見た。

そこには全身真っ白な鎧を着て、真っ白な剣を携えた1人の騎士が立っていた。

 

「あれは」

羊巨人の攻撃を避けながらグリーンイーグルは見た。

前に見たことのあるあの姿は、間違いない。

あの時助けてくれた白の騎士だった。

 

「な、な、なんです?」

わためはその騎士を見ながら怯える。

なぜ怯えるのか分からない。

わためは蛇に睨まれた蛙、ライオンに目をつけられた羊のように動けなかった。

「自分を信じて、貴女なら出来ますよ」

白の騎士はそうぺこらに言った。

ぺこらはその言葉を何故か信じる事ができた。

いつの間にか手の震えは止まっている。

今度こそ救うんだという気持ちで、ぺこらは目の前のわために剣を振り下ろした。

 

 

「やりましたね」

あの黒い鎧は消え去り、普段着に戻って地面に横たわるわためを見ているぺこらの元にGMが、集まってきた。

いつの間にかあの白の騎士もいなくなっている。

「大丈夫です、データに異常ありません。

わためさんは元気ですよ」

ブルードルフィンの言葉に安堵する一同。

「これで、今回はおしまいですね」

そう言われてぺこら達は振り向いた。

少し離れたところに立つこより。

「行ってしまうぺこか?」

「こよ達は秘密結社ですから」

「仲間の行方は分からなくてもいいのか?」

レッドライオンがこよりに言う。

「そちらはこっちの仲間が探してくれています」

こよりはそう答える。

だから、ここに長居する必要はこよりにはなかった。

「そうか」

レッドライオンはそう呟き俯く。

「今回は特別です。

今度会った時は、完全な敵同士。

ラプちゃんの野望を止めたかったら、私達を捕まえるしかないですよ」

こよりはそう言って手元の機械でワープホールを発生させる。

「それでは、みなさん、おつこよ~」

そう言ってこよりはワープホールへと飛び込んだ。

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