ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさい」
城に転移したこよりが急いで円卓の間に走った。
そこには疲れたように椅子にもたれかかるルイ、いろはが挨拶してくれた。
「それでクロたんの居場所は?」
「まぁ、そう焦るな。
まずは座れ」
「ラプちゃん」
違うドアから飲み物片手に入ってきたラプラスが、にこっと笑う。
こよりは一息ついた後、自分の椅子に座った。
「まずはお疲れ様と言っておこうか」
ラプラスは自分の席について3人に言った。
「ぺこらさんの絆はゲットできた。
みこさんのは無理だったが、あれは仕方ない」
「そんな事より」
ラプラスの言葉に被せるように椅子から立ち上がり言うこよりだったが、言葉を飲み込むようにしてまた椅子に座った。
「うむ、こちらも無傷とは行かなかった。
まさか、あそこでコメント集が出てくるとはな」
「あの力は『偽会』と第X世代が持つモノで終わりだったはず」
ルイは資料を表示しながら言う。
「そうだ、そのはずだった。
しかし、現に今回のようにホロメンに纏わりつき現れた。
一番最悪な形でだ。
そして、しんじんをどこかに連れ去ってしまった」
「そうでござる。
クロちゃんはどこに」
「やっぱりまだ」
いろはの言葉にこよりは肩を落とす。
「あれからあらゆる方法で探したけど見つからなかった」
ルイも悔しそうに言う。
「それなら心配ない。
場所は特定できた。
ある信頼できる人からの情報でな」
『ええ!』
ラプラスの言葉に驚く3人。
「本当でござるか」
「さすが総帥」
「それで場所は?」
3人の勢いに押されて少したじろいだラプラスであったが、ゆっくりとその場所を3人に答えた。
「場所は現在封鎖されているエリア【僻地闘技場】だ」
「まさか、ここに落とされるなんてね」
暗い牢屋の中、クロヱは周りを見渡しながら言った。
クロヱはこの場所に見覚えがある。
『樹海争闘戦』で自主練に来た闘技場の地下にある牢屋エリアだ。
ここはこのエリアが実装された時に、闘技場で戦うはずのモンスターを収容する場所。
そのせいかこの場所では力やスキルを思うように使う事が出来ない。
クロヱはその場に座り込み、ここに来た時の事を考える。
(確かみこ先輩達と戦っていたら、いきなりみこ先輩が黒い球体に吸い込まれて、その後私も球体に…)
体を動かす。
力は制限されているが、自由はきく。
武器を確認。
スキルで出す暗器は出せないが、いくつかの武器は使えそうだ。
(それじゃ、ここからの脱出してみようかな)
クロヱは立ち上がり鉄格子の側に向かう。
鉄格子から少し離れたところから、クロヱは鉄格子に向かってナイフを投げた。
カンと音が鳴り、ナイフは鉄格子に当たってその場に落ちた。
(電流とかは流れてないみたい)
クロヱは鉄格子を手に取り落ちたナイフを拾って当てる。
そして、シャンとナイフを手前に引いた。
「よし」
思わずガッツポーズを取りたくなるクロヱだが、そのまま持った鉄格子の上も同じようにナイフを当てて手前に引く。
こちらもシャンと音が鳴った。
カコっという音と共に外れる鉄格子。
(前にいろはちゃんから面白そうという理由で教わった、斬鉄の技がまさかこんなところで役にたつとは)
外れた鉄格子を見て微笑むクロヱ。
クロヱはそのまま何本かの鉄格子をナイフで切り落とした。
「よっと」
切った鉄格子を飛び越えるように牢屋から出るクロヱ。
(さて、どうしたものかな)
どこに続くか分からない長い通路を見ながらクロヱは考えた。
このまま外に出て城に帰るのは出来ない事もないだろう。
牢屋から出たことによって力とスキルは元に戻っていた。
しかし、それではあまりにも味気ない。
(だったら、もう1人捕らえられている人を助けておきますか)
クロヱは目を瞑り気配を探る。
(いた)
クロヱの検索スキルに、目的の人物が引っ掛かる。
ここからそう遠くはないようだ。
「では、行きましょうか」
クロヱはアイマスクを着けニヤリと笑う。
そして、その場に誰もいなくなった。
「大丈夫ですかぁ?」
「にぇ?」
牢屋の中で両手を吊るされたみこに向かって、牢屋の外から声をかける。
「誰?」
みこはゆっくりと顔を上げて声がした方を向いた。
そこには先程出会った人物が笑顔でみこを見ていた。
「クロヱたん?」
「はい」
名前を呼ばれたクロヱは手を軽くあげる。
「なんでここに?」
「みこ先輩が捕まった後すぐに、沙花叉も捕まったんです。
それよりなんでみこ先輩つながれてるんですかぁ?」
「さ、さぁ、気がついたらこんな状態だった」
訳が分からないと言うようにみこは答える。
(沙花叉は拘束なしで牢屋の中だったのに、なんでみこ先輩だけ?
やっぱり重要な役割を持つオリジナル世代だから?)
「それより早く助けてよぉ」
考えるクロヱに情けなくみこが言った。
「ええ、さっきまで敵同士だったじゃないですかぁ」
「それはいいから!」
冗談ぽく言うクロヱに少し怒りぎみでみこが言う。
「はぁ~い」
クロヱは隠しナイフを取り出し、先程と同じように斬鉄の技で鉄格子とみこの両手の拘束具を切り落とした。
「助かったにぇ。
ありがとう。
しかし、こんな事もできるんだ」
手首を回しながら感心した顔でみこはお礼を言う。
「ま、有能なインターン生ですから」
そう言うクロヱをジト目で見るみこ。
「何ですか?その目」
「なんでもないにぇ。
それよりここはどこか分かってるの?」
「はい。
ここは前回、運営が閉鎖したエリアですね。
普通なら入れないんですけど、抜け道はいろいろとあるので、そこに捕らえられたっぽいです」
「コメント集?」
「ですねぇ」
みこの言葉にクロヱは同意した。
クロヱにはあの黒い球体に見覚えがあった。
前回の事件でコメント集の力で第X世代が使っていた移動手段だ。
「さて、ここから出ましょう」
クロヱは軽くみこに言った。
「簡単に言うけど大丈夫?」
みこはそう言って暗い通路の奥を見る。
そちらの方からいくつかの大きな足音が聞こえてきている。
クロヱ達が牢屋から出たのが分かったのだろう。
何かがこちらに来ているのだ。
「ま、沙花叉とみこ先輩ならなんとかなりますよ」
そう言ってクロヱは逆刃の鎌を取り出す。
「本当に簡単に言うにぇ」
みこも鉾鈴を手に持ち、通路の先を睨んだ。
そして、そこから顔を出したのは通路全体を塞ぐように大きいオーガ。
「はぁ、脱出早々大変にぇ」
「ま、気楽に行きましょう」
ため息をつくみこにお気楽に答えたクロヱは、先陣を切りオーガへと突撃した。
「ここが目的の場所でござるか?」
闘技場の柱の上から、肩にマスコットサイズの黒い狼を乗せたいろはが聞いた。
「はい、久しぶりに来ましたよ」
マスコット狼はそう返事をする。
前回の戦いでここで戦ったベルフェが道案内として、いろはに付いてきていた。
「さて、どこに捕まっているのやら」
いろはがどこから中に入ろうかと闘技場を見渡していると突然すごい爆音がなり、闘技場に何かが現れた。
「な、なんでござるか!」
砂煙が上がるその闘技場で、ゆっくりと何かが起き上がる。
「あれはオーガっすね。
それもスターズ級の個体が数体」
ベルフェの言葉通り数体のオーガが闘技場にいる。
そして、その煙の先からオーガ達を吹き飛ばしたであろう影が現れた。
「あれは?
ぼたん先輩とわため先輩!
それにGM?」
いろはは姿を確認した後、闘技場に降り立った。
「よ」
ぼたんがいろはを確認し軽く手を上げて挨拶してくる。
「どうしてぼたん先輩達が?」
「ここにみこちゃん達が捕まってると分かったので」
そうGMのリィスが答える。
「やはりここに」
「ごめんねぇ」
「え?」
呟くいろはに手を合わせてわためが謝ってくる。
「操られていたとはいえ、みんなに迷惑かけちゃって」
わためは申し訳なさそうな顔で言った。
「大丈夫です、操られてたんだし、こうして仲間のいる場所も分かりましたから」
そういろはは答えた。
「え?
許してくれる?
もしかしてワンチャン、わため悪くない?」
「いや、悪いって」
「いたぁ」
ぼたんが軽くわための頭を叩く。
「ひどいよ、ぼたんちゃん」
「アホなことやってないで、こいつらどうにかしないと」
ぼたんは目の前にいる数体のオーガを見る。
いろはも背負うチャキ丸に手を掛けた。
「ここはあたし達に任せて、みこ先輩達を助けに行きなよ」
ぼたんは銃を構えいろはに言った。
「お願いします」
リィスも巨大な斧を構える。
「いいでごさるか?
かざま達は敵でござるよ」
「構わないさ。
もし何かしようとしたらその時、その場にはあたしがいるから」
いろはの言葉にぼたんはそう微笑みながら答えた。
(冗談に聞こえないでござるな)
その笑みを見ていろはは思った。
「あっと、行く前に」
そう言っていろはの手をとるわため。
「え?」
「ホロライブワールド第四世代組、角巻わためです。
よろしくねぇ~」
「え、え?」
いきなりの自己紹介に混乱するいろは。
「どうやって集めてるか分からないけど、集めてるんでしょ?
ホロメンの絆」
「あ」
「これはこの前のお詫びという事で」
「いいのでござるか?」
「内緒だよ」
そう言って口に人差し指を当てて微笑むわため。
「内緒、でござるな」
いろはも真似して指を口に当てて微笑む。
「ほら、何してるんだい?
さっさと助けに行ってきなよ」
オーガ達を攻撃しながらぼたんから声がかかる。
「かたじけない」
いろははそうぼたん達に伝えると、ぼたん達が出てきた入り口へと向かって走った。
この中のどこかにクロヱ達がいる。
そういろはは確信していた。
「おら!!」
ドコン!
何体目になるか分からないオーガを吹き飛ばす、人型形態のベルフェ。
「何体いるでござるか」
半分呆れながらいろはもオーガを斬り倒す。
しかし、仮にもスターズ。
いくらチート級のホロメンでも一撃では倒せない。
後から後から増えていくオーガにじり貧になってきていた。
「このままじゃ、クロちゃん達を探す暇もないよ」
「最後の封印も解いていいか、いろはさん」
ベルフェがオーガを睨み付けながら聞く。
「出来れば温存しておきたいでござるけど」
ガァァァァ
いろはが考えていたその時、オーガの群れの奥からオーガの断末魔が聞こえてきた。
その断末魔は徐々にいろは達に向かって近づいてくる。
そして、いろは達の目の前のオーガも断末魔を上げてゆっくりと前に倒れ込んだ。
「あれ?いろはちゃん」
「え?クロちゃん?」
オーガの倒れた先にはクロヱとみこが立っていた。
「なんでこんなとこに?」
「いや、牢を抜け出して出口探してて」
「自力で出れたの?」
「そう、前にいろはちゃんから教えてもらった斬鉄の技が役に立ったよ」
とクロヱは笑った。
「そうでござるか、よかった。
みこ先輩も」
「今回は助かったにぇ」
「ぼたん先輩とわため先輩、GMも助けに来てるので案内するでござる」
いろはの言葉に頷くみこ。
「では、元の場所に戻るでござるよ」
いろはは先頭に立って来た道を戻り始める。
途中出会うオーガはさすがにチート級4人揃っている為、相手にならずすんなりと元の場所に着く。
「あそこに」
いろはは闘技場で戦うぼたん達を指差した。
「ありがとう」
そう言ってみこはぼたん達の方へと走っていった。
みこがぼたん達と合流するのを確認した後、いろははワープ装置を取り出し起動した。
「帰ろっかクロちゃん」
「そうだね、いろはちゃん。
ベルフェもありがとうね」
「いやいや、こんな事ぐらい朝飯前っすよ」
そうして、3人はワープホールへと入っていった。