ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
そこは倒されたモンスターの魂が集う場所。
次にポップする為にとどまる場所。
その場所の名は【大霊園】。
その【大霊園】には可愛らしい主がいる。
そして今、その主を狙い影が動き出す。
果たして影の正体は。
【ファンタジー】の奥にある【大霊園】に1人の侍と人形のようなゴブリンが訪れた。
と言ってもまだ広大な【大霊園】の入り口に入ったばかりだ。
「ここに目的の人物がいるでござるな」
「はい、基本うろつかない人のはずですからね」
侍いろはに聞かれ、ゴブリン人形みたいな姿になっているマモリは答えた。
「しかし、話には聞いてたけど、すごい場所でござる」
いろはは辺りを見回した。
そこは【大霊園】の名に恥じないくらい見渡す限りに、墓が綺麗に並んでいた。
墓が並んでいるのだが、怖い感じはなく何か神聖な感じがするのは、綺麗に掃除され、規則正しく並べられているからだろうか。
「奥に進もうか」
いろはの言葉にマモリは頷いた。
しばらく歩くと、墓の間で何かが動いた。
いろはは止まり、背中のチャキ丸に手をかける。
マモリも隣で拳を構えた。
カシャン。
何かが擦り合う音だろうか?
カシャン、カシャン。
さらに近づいてくる。
チャキ丸を持つ手に力が入る。
そして、それは墓の間から現れた。
三角巾を頭に被り、木のバケツに、はたきを持ったガイコツだ。
ガイコツはいろはの方を向いた。
予想外の相手にいろはとマモリは固まった。
ガイコツはそのまま何事もなかったように、墓の方に向き直り進んでいった。
「えっと、あれは?」
状況の分からないいろはが独り言のように呟く。
「さ、さぁ」
マモリもそう答えるしかなかった。
「この【大霊園】で墓の掃除をしているガイコツですよ」
「な!」
答えは意外な事に背後から返ってきた。
直ぐ様振り向くいろはとマモリ。
そこには懐かしくも意外な人物が、意外な姿で立っていた。
「キミは」
「お久しぶりですでいいのかな?」
その人物、世界の答えと呼ばれたプレイヤーは、掃除用具を持ってにこやかに笑っていた。
「久しぶりでいいでござるよ」
そう言ってチャキ丸から手を放しいろはも笑った。
マモリも拳を下げている。
「よかった。
やっぱりホロメンのみんなは、記憶残ってるんですね」
そう言ってプレイヤーは胸を撫で下ろす。
「では、改めましてよろしくお願いします」
そう言ってプレイヤーは手をいろはの方に差し出した。
それを見ていろはは微笑む。
(そうでこざるな。
今度は裏表なしに)
前回、このプレイヤーと絆が出来た。
しかしそれはラプラスの封印を解く為に使われてしまった。
いろははあまりその作戦には賛同したくなかったが、あの時は1番に絆を結んでしまった為にどうする事も出来なかった。
(今は絆をプレイヤーから奪う事は出来ない。
なら純粋に絆を結べる)
いろはは差し出された手を握る。
「改めて。
【ホロライブワールド】第六世代組、holoXの用心棒、風真いろはでござる」
いろはの言葉にプレイヤーのステータス画面が開き、推し一覧が現れる。
その一覧の一番下の欄にあるいろはのアイコンが光った。
「本当にかざま達、第六世代組以外の絆を集めきってるのでござるな」
ちらっと見えた推し一覧からいろはが少し驚いたように言った。
「はい。
俺も初めこんなに早く、また集められるとは思ってなかったんですけど、最初にラミィちゃんに出会って、それからあれよあれよとホロメン達に数珠繋ぎのように会わせてくれて、それでこの状態です」
そう言ってプレイヤーは笑った。
「さすが雪民さんでござるな」
「え、いや、それが」
いろはの言葉に、言葉を詰まらせるプレイヤー
「まさか、違うホロメンの推しになったでござるか?」
「いえ、そのう、まだ、誰を推すか決まってないです」
「はぁ、そういうところはキミ殿でござるな」
相変わらず変なところで優柔不断なプレイヤーを見て、いろはなぜか微笑ましかった。
「それで、いろはちゃんはどうしてここに?」
横のマモリに挨拶した後、プレイヤーはいろはに聞いてきた。
「ここの主殿に用事があるでござるよ」
「なるほど、第六世代組が絆集めをしている噂は、本当だったんですね」
「…」
プレイヤーの言葉にいろは答えなかった。
「分かりました。
今、るしあちゃんは作業が終わって、この奥で一休みしてますから案内しますよ」
そう言ってプレイヤーは歩き出す。
その後をついていくいろは達。
「そう言えば、キミ殿はここで何をしてるでござるか?」
「え?俺ですか?」
いろはに聞かれて、プレイヤーは振り向き、掃除道具を見せる。
「バイトです」
そう言ってプレイヤーはにかっと笑った。
「るしあちゃん、お客さん連れてきたよ」
大きな半円の建物の前で、お茶を飲んでいたるしあがこちらを向く。
「お帰りなのです。
誰ですか?」
るしあは立ち上がりこちらに来た。
「あ、第六世代組のいろはちゃん」
「はい、あれ以来ご無沙汰してます。
るしあ先輩」
いろはが頭を下げる。
「な、そんなかしこまらなくてもいいですよ。
お茶でも飲みますか?」
頭を下げられ慌てて胸の前で手を振るるしあ。
「はい、いただくでござる」
テーブルを挟んで向かい合ういろはとるしあ。
プレイヤーは気を利かせたのか、少し離れた場所でマモリと手合わせしていた。
出されたお茶を一口飲むいろは。
「美味しいです」
「それはよかったです。
この大霊園で作っているハーブを使ったハーブティーなのです」
るしあも一口飲みながら嬉しそうに言った。
「それで、目的はるしあの絆ですよね?」
「はい」
「分かったのです。
絆を結びますけど、簡単にはあげないのですよ」
るしあの笑顔にいろはは頷いた。
「それじゃ、お使いを頼まれて欲しいのです。
持ってくるのは【ファンタジー】の第三の町で頼んでいるケーキなのです。
今日は第三世代組のメンバーが遊びに来てくれる事になっているので、頼んでいるのです」
「え?
先輩達がここに?」
るしあの言葉に驚くいろは。
「そうなのですよ」
そう言ってるしあは微笑んだ。
「行ってくるでござる」
見送ってくれるるしあに手を振るいろは。
その横にはマモリとプレイヤーがいた。
行く前にるしあから、荷物が多くなるからプレイヤーにもついていってもらうように言われたのだ。
「前回より段違いに強くなってる」
「ま、いろいろと装備も揃えたし、レベルも上がったからね」
マモリはプレイヤーと手合わせの感想を語り合っていた。
(なんか仲良しになってるでござるな)
そんな2人を見て微笑むいろは。
まだ、手を振るるしあに手を振り返しながら、
いろは達は【ファンタジー】の第三の町へと向かった。
「なんだ。この感じ」
しかし、向かおうとした時にプレイヤーが何かを感じたのか立ち止まる。
「こ、これは」
マモリは体を押さえて震えている。
「どうしたでござる?」
2人を交互に見て焦るいろは。
「やばい、これは」
振り返るプレイヤー
それにつられていろはもそちらを見た。
その先には笑顔で手を振るるしあ。
そして背後に、何か大きな影が立ち上がっていた。
「きゃぁぁぁ~」
影はあっという間に目の前のるしあを飲み込んだ。
「な、るしあちゃん!」
「るしあ先輩!」
いろはとプレイヤーは各々の武器を抜き、るしあの方に走り出す。
「危ない!」
マモリの言葉に振り向く2人。
その背後にもあの影が立ち上がっていた。
しかし、すぐさま砕け散る。
その後ろから封印解除したマモリが立っていた。
「ごめん、いろはさん。
第2封印まで解除した」
黒いスーツ姿で背の高くなったマモリが謝る。
「いや、かまわないでござる。
それよりこれはまさか」
どんどん立ち上がる真っ黒い影。
「いろはちゃんが考えているので正解だよ。
あれはコメント集だ!」
いろはの横で黒い影を睨みながらプレイヤーが叫んだ。
「早くるしあちゃんを助けないと手遅れになる」
プレイヤーは複数の影の奥にいる一際大きい影を睨みながら言った。
「どうするでござるか。
あそこまでたどり着くには、人数が少なすぎる」
襲いかかってくる影を切り捨てながらいろは答える。
「道は作れる」
2人の背後を守るように立つマモリがそう言った。
「やれるか?」
プレイヤーが聞く。
「ああ、全力で2つの波動レーザーを放つから、その間を駆け抜けて、るしあさんを飲み込んだやつのところまではいけるはず」
いろははプレイヤーを見る。
プレイヤーは力強く頷いた。
「では、マモリお願いするでござる」
「分かりました」
マモリを挟むように、いろはとプレイヤーが立ち回り影からマモリを守る。
マモリはその間に両手に力を溜めている。
しばらくして「いけるぞ、いろはさん」
マモリがそう言った。
「行くでござる」
「分かった!」
マモリの前にプレイヤーといろはが順に並んだ。
「それじゃ、頼んだよ」
マモリは2人を挟むように巨大なレーザーを手から放った。
マモリの言うように、あの影との間に道が出来た。
「行く!」
プレイヤーが影に向かって走る。
それを追っていろはも走った。
ふといろははいやな予感がした。
走りながらマモリの方に振り向くいろは。
マモリの後ろに大きな影が立ち上がっていた。
「マモリ!」
「前を向いて行け、いろはさん」
いろはの声にそうマモリが叫ぶ。
「く」
いろはは下唇を噛み前を向く。
「そっちは大丈夫。
るしあをお願い」
そんないろはの横でそう声が聞こえた。
「え?」
いろはは通りすぎたその声の主の後ろ姿を見た。
オレンジ色の長い髪が揺れ、手に持った銃でマモリの背後の影を撃ってくれていた。
「行けます!」
前のプレイヤーはそう言った。
いろはも頷き全速力で前へと走った。
「うちらのるーちゃんに、何してくれてるぺこかぁ!」
凄まじい声と共にいろは達の目の前の影が、頭から真っ二つに斬れる。
斬った本人の横に到着するいろはとプレイヤー
「ぺこら先輩!」
いろははその主に声をかけた。
勇者姿のぺこらは、いろはを見て頷く。
「くそ、まだか」
プレイヤーは2つに別れた影を見て言う。
2つに別れた影の中から黒くて丸い球体が現れた。
その中には目を閉じ座り込む、るしあの姿があった。
「あれでもダメぺこか!」
うずくまりぺこらが胸を押さえる。
「やめなさいぺこら!
今それをやったらあなたが戻れなくなる!」
少し離れたところからマモリの方に援護射撃をしているフレアが叫ぶ。
「で、でも」
「出てきたばっかりでしょ!」
何か言おうとしたぺこらにそうフレアが悔しいそうに言った。
自分にるしあを助ける力がないのをフレアは知っていたのだ。
「ぺこらさん、俺が行きます」
ぺこらの肩に軽く手を置いた後、プレイヤーがその球体に向かって走った。
「ま、待つぺこ!」
その手にはプレイヤー愛用の刀鬼切丸。
鬼切丸に魔力が集まるのを、いろはは視た。
「紫電」
紫の雷が刀からプレイヤーに伝い覆う。
「一突!」
ドォーン!
プレイヤーから放たれた刀は紫の雷を纏ったまま、黒い球体を突く。
しかし、黒い球体は破壊される事なく、揺らぎもしなかった。
「うおぁぁぁ~!」
プレイヤーは負けじと押し続ける。
しかし、まだ足りない。
「こうでござるな」
プレイヤーの耳に後ろからそう聞こえた。
「風真流 模倣真眼」
ドォーン!
プレイヤーと全く同じ場所にもう1本の刀チャキ丸がぶつかる。
「いろはちゃん」
プレイヤーの言葉にいろはは微笑んでから、黒い球体を睨み、力を込めた。
先程視ていたプレイヤーの技を、いろはは専用技で真似たのだった。
2人の刀が黒い球体を押す。
球体が揺らぎ、少しだがヒビが入っているように見える。
(く、後一撃でござるが)
そう、いろはが思った時、それは後ろから現れた。
「プレイヤーばっかりにやらせてたら俺達の出番がなくなるだろうが!
こい、イーグルブレード」
その言葉に呼応するように、空から鷲が舞い降りてくる。
それは鷲から剣へと姿を変えて、呼んだ人物の手に収まった。
「おら~!」
ドォーン!
3度目の爆音。
いろは達の刀と同じ場所に剣がぶつかった。
「GM!」
いろはがその人物に言うと、戦隊スーツを身に付けたヒーロがそこにいた。
新武器イーグルブレードが攻撃に加わり3人は全力で攻撃する。
ピシ、ピシとひび割れていく球体。
3人は最後の力を振り絞り武器を押し通そうとした。
『うりゃーー!』
3人の声が重なる。
パリン!!
高い音をたてて砕かれる黒い球体。
「やった」
誰かが破壊された球体から、外に出るるしあを見て言った。
みんなが安堵したその時に、地面から黒い柱が立ち上る。
るしあはまたしてもコメント集に飲み込まれた。
『うわぁぁぁ!』
黒い柱に弾かれて吹き飛ばされるいろは達。
「なんなんだよ!」
イーグルが地面を叩く。
黒い柱は先程の黒い球体と同じような光を放ち、中のるしあを閉じ込めるように立っている。
「やるしかないぺこ」
ぺこらは前に立ついろは達の間を抜け前に出る。
「ダメだ、ぺこらちゃん。
フレアさんが言ってた」
背後で影の残党を倒しているフレアとマモリ。
そんなフレアの言葉をプレイヤーがぺこらにかける。
「でも、キミのその刀じゃ、さっきみたいな攻撃は出来ない」
ぺこらは影の柱を睨みながら言う。
プレイヤーの持つ鬼切丸は折れていた。
あの球体を破壊した後に、現れた柱に飲み込まれ折れたのだ。
「しかし、フレア先輩が言ってたでござる。
戻れないって」
いろはも心配そうにぺこらに言った。
「もう、失いたくないぺこ」
ぺこらはポツリと呟く。
「くそう、みんなが揃っていれば」
救援を呼んだイーグルだったが、この近くで現れているコメント集を他のメンバーとノエル、マリンで討伐している。
すぐにはこれそうにない。
胸に手を当てるぺこら。
その手の隙間から光が漏れ始めた。
「まだ、それはここで使う時ではないですよ」
そう、いろは達の後ろから声が聞こえた。
そして、辺りを激しい光が包み込み消えた。
光が消えた後、黒い柱以外の黒い影が消えている。
「な、なんだ」
イーグルがそう言って周りを見る。
プレイヤーやぺこらも驚いて辺りを見回していた。
いろはだけは背後から歩いてくる、この現象を起こしたであろう人物を見ていた。
(白騎士)
ルイが言っていた気を付けないといけない人物の1人。
それが歩いてくる。
「すいません、先に向こうのコメント集を殲滅していたので」
そう言いながら、白騎士はいろはの横を通りすぎ、ぺこらの前に出た。
「すぐに終わらせます」
白騎士がその纏う鎧と全く同じ白い剣を抜いた。
そして、下から上へと剣を振り上げる姿をいろはは視た。
(技が登録できない…)
いろはは魔眼で視た技を使う事が出来るが、白騎士が使ったこの技は登録されなかった。
白騎士の剣は黒い柱に当たってはいない。
しかし、黒い柱はその剣の軌跡が通った場所から光を放ち始める。
そして、黒い柱は光に飲まれて消え去った。
ゆっくりと落下してくるるしあ。
ぺこらはるしあの方に走る。
いろは達もその後を追った。
「るーちゃん、るーちゃん」
ぺこらが受け止めたるしあに声をかける。
「う、あ…れ?」
ゆっくりと目を開けるるしあ。
「よかったぺこ~」
「大丈夫だった、るしあ」
フレアも駆けつけ声をかける。
「おお~い」
遠くからマリンやノエル、GMがこちらに向かっているのが見えた。
ふと、いろははあの白騎士を探す。
しかし、白騎士はもうどこにもいなかった。
「本当に助かったのです」
パーティーの準備をしている第三世代組を後ろに、るしあは笑顔でそういろはに言った。
あの後、各メンバーに抱きしめられたるしあは、苦しそうながら嬉しそうに笑っていた。
GMがるしあにコメント集の影響がないか調べたところ、特に異常が見当たらなかった。
今回の報告をする為にGMは基地へと戻った。
るしあはすっといろはに向かって手を差し出す。
いろははその小さくも可愛い手を握った。
ルイからるしあと絆を結んだと連絡がくる。
「こちらこそ、ありがとうでござる」
いろははるしあにお礼を言った。
「キミもありがとう」
るしあはそういろはの隣にいるプレイヤーに声をかけた。
「いえ、肝心な時に何も出来なかった」
プレイヤーはそう言って折れた鬼切丸を見る。
「ごめんなさい、るしあにはそれを直す方法は分からなくて」
るしあはすまなさそうに言った。
「いえ、ちょうど師匠のところに行こうと思ってましたから、その時に聞いてみます」
プレイヤーはそう答えた。
「師匠?」
いろはは不思議そうにプレイヤーに聞く。
「あ、勝手に俺が言ってるだけなんですが、シオン師匠です」
プレイヤーは鬼切丸をアイテムボックスにしまいながら言った。
「なら、かざまも付き合うでござるよ」
そういろははプレイヤーに言う。
「え?」
プレイヤーはいろはの言葉に驚いていた。
「今回るしあ先輩を助けられたのも、キミ殿のお陰でもあるでござるからな。
お供させてもらうでござる」
(いろはさん。
いいんですか、勝手に?)
専用通信でマモリがいろはに言ってくる。
(マモリは先に戻ってみんなには上手く伝えてくれでござる)
(もう、普通に報告するしか出来ませんからね)
いろはにマモリは呆れたように返事をした。
「それじゃ、お別れなのですね」
「はい、また来ます」
「かざまも」
「その時は船長の相手してくださいね」
「そうだよ、絶対だからね」
「気をつけて行ってらっしゃいね、るしあの事ありがとう」
「また会おうぺこ」
いつの間にか、るしあの後ろに来ていた第三世代組がいろは達に声をかけた。
『はい』
2人は元気よく返事をした後、【大霊園】を後にした。
次は黒魔術師シオンの元へ。