ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~   作:天野空

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第3話 ダンス大会を襲撃せよ

「今回はここかぁ」

きらびやか町の中を歩く黒服に深くフードを被った人物が歩く。

その周りを1匹の魚が空中をまるで水の中を泳ぐように回っていた。

「目的地まではもうすぐですね」

魚が黒服に喋りかける。

「はぁ、くじ引きで当たりなんて引くんじゃなかったよ、自分の運の良さが恨めしい」

黒服の言葉を聞いて魚が笑うように体を揺さぶった。

「もう、笑わないでくれる?レヴィ」

フードを少しあげて中から赤い瞳が魚を見つめる。

「ごめんなさい、クロヱ様。

あまりにもぼやきが面白かったので」

魚はそう言って体を揺らしながら謝る。

「笑いながら謝られてもなぁ」

そう言ってクロヱはまたフードを深く被った。

 

クロヱ達がいるこの町は【ゲーマーズ】にある第3の町。

全てがカジノのコインで取引されるカジノの町だった。

今回はここにいるアキ・ローゼンタールがターゲット。

クロヱは今回騒ぎを起こす役になった。

ロック役のルイはクロヱとは別にこの町に入っているはず。

今回は槍を使わずにアキには会える。

この町で行われるダンス大会にアキが出場するからだ。

ちなみにこのダンス大会はチケットを購入すれば誰でも観賞できる。

なので、ロック役はチケットを購入して会場に、クロヱ達はアキの出番が来てダンスが始まったら騒ぎを起こす。

そのどさくさにロック役はアキに接触して絆を作るという作戦だ。

 

「まだ、時間はあるよね?」

クロヱはレヴィに聞く。

「そうですね、作戦にはまだ少し早いです」

レヴィはミニ画面を出して調べて答えた。

「何か食べようか」

クロヱは周りを見る。

「あ、あそこなんていいんじゃない?」

クロヱが喫茶店を見つけて移動する。

「ゆっくりとお茶ですか?

余裕ですね、クロヱ様は」

レヴィは茶化すように言った。

「ま、沙花叉ぐらいになるとね、ふふん」

そう言ってクロヱは胸をはって鼻を鳴らした。

「どうせ、簡単にお茶を済ませた後にコインが余ったからスロットでも打つかとか言い始めるんでしょ」

「う」

レヴィの言葉に図星だったのかクロヱが唸る。

そんなやり取りをしていると前から男女3人のグループが歩いてくる。

クロヱは避けずにそのまま進んだ。

「ちょっと待ってくださいよ、先輩方」

「ほらほら、急がないと遅れるぞ」

「折角ゲットしたチケットなんだから、始まる前に会場に入るわよ」

(ダンス大会を見に行く人達か)

クロヱはそう思いながらその人にぶつかる。

しかし、その人達は何もなかったようにクロヱにぶつからず素通りした。

クロヱはホロメンだ。

ホロメンはイベントキャラ扱いの為、普段はプレイヤーに見えないし、触ることも出来ない。

その為、プレイヤーとぶつかる事はなかった。

「ま、便利と言えば便利なんですけどね」

クロヱはそう言いながら振り返りさっきの人達を見る。

(なんか寂しい気持ちになるね)

「どうかしましたか?

クロヱ様?」

クロヱの周りを回るレヴィは心配そうに声をかけた。

「ん?なんでもないよ。

さ、お茶しに行こう」

そう言ってクロヱは目的の喫茶店に向かった。

 

そこは巨大なイベントホール。

今日ここで大きなダンス大会が開催される。

何とか前の方の席を確保できた亜人の少年は応援団扇片手にイベントの始まりを待っていた。

彼の名はロック。

中の人はルイだった。

「はぁ、さすがに大きいイベントだけあって人は多いですね」

手元のパンフレットに見る。

「アキ先輩の出番は中盤あたり。

それまではイベントを楽しみましょうか」

そろそろイベントが始まる。

ルイはドキドキしながら1プレイヤーとして楽しもうと身を乗り出した。

 

「ああ、またぁ~」

何回目のチャンスだろうか?

またもスルーされてイライラがMAXに近いクロヱ。

レヴィの予想通り、クロヱは今、大会の会場に近いカジノでスロットを回していた。

「クロヱ様?

そろそろ持ち金が失くなりますよ?」

レヴィが財布を見ながらクロヱに言った。

「ええ!

あんなに持ってきたのに?」

当たりは引いているものの当たりで出るコインよりも多くのコインをスロットに入れているのでコインは減る一方だ。

「それにそろそろ時間じゃないですか?」

レヴィは手元に送られてきたルイからのメッセージを見る。

そこには作戦開始の時間もかかれていた。

「え?もうそんな時間?」

「はい、後20分程ですが?」

「うわ、やばい」

そう言ってレヴィを見たクロヱ。

その瞬間、打っていた台から良い音が鳴る。

「え?」

台を見たクロヱの目には画面いっぱいのWINの文字が。

「あ、当たった」

「ええ、もう時間ないんですよ」

「わ、分かってるってすぐに終わらすからぁ」

急いでレバーとボタンを押すクロヱ。

作戦の時は刻一刻と迫っていた。

 

「もう、何やってるのよ」

舞台ではアキの出番となり会場は大盛り上がりだった。

初めはアキのダンスを見ながらウキウキな気分のルイだったが、終わりに近づくにつれて焦り始める。

アキの出番が終わってしまえば、今度アキを捕まえるにはまた時間がかかってしまう。

今回が本当に良いチャンスなのだが。

「本当に何やってるの!?」

ルイは舞台と時計を見比べながら小声で唸った。

バン!

「な、なんだ?」

「どうした?」

「いきなり電気が消えたぞ!」

会場がざわめく。

「きた」

内心安堵しながらルイは作戦の為に前列に向かい進み始める。

 

「なに?」

舞台の上でアキは周囲を警戒する。

いきなり電源が落ち暗くなった会場。

ざわめく観客はまだ混乱までにはなっていなかったが、これは明らかにおかしい。

こんな演出はアキは聞いていなかった。

バン!

突然スポットライトが舞台に当たる。

アキから見て少し先に当たったそのスポットライトに立つのは真っ黒なフード付きのパーカーを着た人物。

「誰」

アキはアイテムボックスから湾曲刀を取り出す。

バン!

そして、もう1つのスポットライトがアキに当たった。

オオー!!

盛り上がる観客。

「お久しぶりです、アキロゼ先輩」

そう言って黒づくめの人物はフードを取る。

「クロヱちゃん」

オオー!!

突然のクロヱの乱入により一層に盛り上がる観客。

しかし、クロヱは観客達の方を冷たい目で見た。

「!!

危ない!」

アキの言葉に一瞬止まる観客。

その瞬間、舞台と観客との間の空間に下からシャチが鋭い牙を見せながら飛び出してきた。

う、うわぁ~!!

突然の事にパニックになる観客達。

「食べられぞ、逃げろー」

そう、ルイは大声で叫んだ。

「う、逃げろー!」

その言葉に観客の1人が叫ぶ。

それが瞬く間に広がり、観客が出口に殺到した。

しばらくすると会場には人が残っていなかった。

いや、若干4名人が残っている。

1人は言うまでもなくルイが動かしているロック。

そして、残り3人は。

「まさか、非番で遊びに来たらこんな事になるとはな」

「運が良いのかしら?」

「何言ってるんですか先輩方」

ため息をつきながら倒れているロックに手を貸している青年。

「ま、そう言うな、少しくらい愚痴っても良いだろヒーロ」

そう言って笑いながら舞台を見上げるその女性はさくやだった。

その隣で腕を組み立つ女性はレイム。

「まさか、GMだったとはね」

舞台からクロヱは3人を見ながら言う。

「君、もしかしてこの前の?」

ロックを見たヒーロが聞く。

「あ、はい、また助けてもらいました、ありがとうございます」

内心焦りながらロックは答える。

(まさか、GMが来てたなんて)

(どうするの?)

(このまま作戦は続行する)

(了解)

専用回線で話すクロヱとルイ。

ヒーロに何か言ってから舞台に上がる2人。

「手伝います」

そうさくやは言ってアキの側に寄る。

アキも頷いていた。

「3対1ですか?」

「不利だと思うなら退いたらどう?」

クロヱの言葉にレイムが答える。

「いえ、全然そう思わないです」

クロエはそう答え、周りを回るレヴィを見る。

「レヴィ、いいよ」

「分かりました、クロヱ様」

クロエの言葉にレヴィが前に出る。

そして「第1封印解除」

その言葉と同時に光る魚。

光が収まったそこには人型に変わったレヴィがいた。

「な、まさか歌魚レヴィ」

レイムはレヴィを見て言う。

「まさか、GMにも覚えてもらえるなんて光栄です」

そう言いながらレヴィはクロヱの横に立つ。

「これで3対2。

そして、出でよ、戦闘員の皆さん~」

クロヱは手を上げ振り下ろす。

「パクパク」「パクパク」

と地面から浮き上がるように出てくる全身タイツの戦闘員の皆さん。

全身タイツは変わらないが頭が魚のような形になっていた。

「さぁ、これでこっちが上だね。

戦おうか」

クロヱはそう言って号令を出す。

号令に応じ戦闘員の皆さんがGMとアキ、そして舞台下のロック達にも襲いかかる。

(あ、やばい?)

(何とかするから)

クロヱはルイに聞いたが、ルイはそう答えた。

クロヱはそれを聞いてから、アキ達を見る。

「一応、向こうも気にかけてフォローして」

「分かりました」

側にいるレヴィにそうクロヱは小声で伝えた。

 

「しかし、強すぎない?」

クロヱは戦闘員の皆さんと戦うGMを見て言った。

アキが強いのは分かる。

それはチートと呼ばれるホロメンだからだ。

しかし、いくらチートに近いGMだが、変身せずに戦闘員の皆さんをバッタバッタと倒していくのは、ちょっとおかしい。

クロヱは袖口から一瞬で投げ針を取り出す。

そして、GM2人に向かって投げた。

それをさくやは避け、レイムは持っている銃で防御した。

完全に死角だったんだけど。

そう思いながらクロヱは逆刃の鎌を出現させる。

「それの相手はこのままだと無理かな」

戦闘員の皆さんはクロヱとレヴィ、GM2人を取り囲むように集まった。

アキはもう1人のGMとルイの方に行き戦っている。

(あれなら大丈夫そうです。

お手伝いしましょうか?)

クロヱの横のレヴィが小声で言う。

(いや、今回は様子見)

クロヱの言葉に軽く頷き、レヴィは一歩下がった。

『GMチェンジ!!』

GM2人が胸元に右手を持ってくる。

そして、光に包まれた。

光が収まり現れたのは。

「レッドライオン」

頭がライオンのようななった赤い戦隊スーツを着た女性。

「ブルードルフィン」

頭がイルカのようななった青い戦隊スーツを着た女性。

先ほどの2人のGMが変身した。

「2対1だけどやる?」

レッドライオン、さくやが言った。

「もちろん」

そう言ってクロヱは攻撃を開始する。

暗殺スキルをデフォルトで持つクロヱはそのスキルと敏捷さでレッドライオンとの距離を一瞬で詰めた。

クロヱはそのまま鎌を振る。

ガキン!と音が鳴りレッドライオンは右腕で鎌を止めた。

クロヱは飛び退きながら長針を左手でレッドライオンに投げる。

レッドライオンはバックステップでその針を避けた。

針は地面に刺さり、その奥には銃を構えるブルードルフィン、レイムの姿が。

ブルードルフィンはすかさず銃を撃つ。

クロヱは鎌を勢い良く前で回し、銃の弾を弾きながらバックステップをした。

「やっぱり強い?

本当にGM?」

「もちろん。

だけど、只のGMじゃない。

自慢じゃないがGMの中でもトップクラスだ」

レッドライオンはにこっと微笑みながら答えた。

「トップクラスになると装備も違ってくるんですよ」

「く」

いつの間にか間合いを詰めているブルードルフィンが剣をクロヱに振り下ろす。

咄嗟に受けるクロヱ。

(早い)

「クロヱ様!」

「いい、見てて」

戦闘モードのクロヱは口数が少ない。

レヴィの心配そうな声にも短く答えた。

「!!」

力を込めクロヱは受けた剣をそのまま後ろに押し返す。

ブルードルフィンはバックステップで背後に飛んだ。

その横を交代するようにレッドライオンが飛び込んでくる。

クロヱは鎌を消し、拳を構えた。

その拳には鎌を消すと同時にカギ爪の付いた篭手を出して装備している。

それにも臆せずレッドライオンが拳でラッシュしてくる。

クロヱはそれを防御しながらレッドライオンの動きを観察した。

確かに普通のプレイヤーより一撃が重い。

スピードもパワーも元の数倍上がっているって事か。

(クロヱ、目的は達成しました。

撤退しますよ)

クロヱがそうGMを考察していると突然、専用回線でルイから連絡が入った。

(せっかくいいとこなのに)

(今は作戦が第1です)

(わかった)

クロヱは隙をつき、レッドライオンを蹴り飛ばす。

レッドライオンもきちんと防御していた。

「これくらいにしとく。

イベントもめちゃくちゃに出来たし」

「まて、目的は本当にイベントの妨害だけか」

レッドライオンはそうクロヱに聞いてきた。

「もちろん、それだけ」

(ひくよ)

クロヱは後ろに下がり隣のレヴィに言った。

(了解しました)

レヴィが地面に魔方陣を作り出す。

「それじゃぁね、ごちそうさまでした!」

そうしてクロヱとレヴィはholoX城へと帰還した。

 

少し時間は遡る。

ロックの中にいるルイはヒーロに守られながら戦闘員の皆さんと戦っていた。

「大丈夫ですか?」

「は、はい」

ヒーロに聞かれルイは慌てて答える。

ヒーロが戦闘員の皆さんに気をとられている時に、影からルイがヒーロに襲いかかる戦闘員の皆さんを攻撃していた。

(はぁ、こっちのGMはあまり強くないんですね。

私がフォローしないとやられそうです)

そう心の中でルイはため息をついていた。

「大丈夫?」

そこにアキが飛び込んでくる。

(あの人数を突破してこっちに来たんですか?)

アキを見てルイは驚く。

「あ、はい、大丈夫です」

ヒーロはそう答える。

(ま、私が手を貸してますし)

そう思うルイをアキがちらっと見た。

内心ヒヤッとするルイ。

「うん、そうみたいだね」

そう言ってアキが微笑む。

(気づかれてる?)

「さて、向こうは2人に任せてこっちは私達でどうにかしましょうか」

そう言ってアキが湾曲刀を構える。

「はい」

ヒーロも拳を構えた。

「キミは?」

アキがルイの方を見る。

「え?

あ、僕もやります」

ルイは装備にあった鉄の剣を構える。

「それじゃ、行くね」

アキの号令で3人は戦闘員の皆さんとの戦いを始めた。

一瞬だった。

アキの圧倒的な強さで周りの戦闘員の皆さんはほとんど光に変わった。

(今かな)

ルイはそう思い、アキに近づく。

「助かりました、ありがとうございます。

僕、ロックと言います」

そう言ってルイはアキの方に手を差し出した。

(怪しまれてなければいけるはず)

内心ドキドキのルイ。

「よく頑張ったね。

アキ・ローゼンタール。

よろしくね」

そう言ってアキは握手をしてくれた。

(よし)

ミッションクリアしたルイはすぐにクロヱに連絡。

「それでは、僕は先に脱出します」

「ええ、またどこかでね」

「気をつけて」

アキとヒーロに見送られながら、ルイは建物の出口へと急いだ。

 

holoX城に続くくねくね道。

2人の人物が話しながら歩いていた。

「どうして作戦開始時間遅れたんですか?」

冷ややかな目で相手を見ながらルイが聞いた。

あの後、すぐにログアウトしてこの場所に戻ってきたのだ。

「だって、当たったんだもん」

目をそらせながらボソッとクロヱが言った。

ルイとは作戦終了後、ここで待ち合わせしていたので来たのだが、会っていきなりそれを言われて少しすねぎみだった。

ま、自業自得なのだが。

「私は止めたんですけどね」

クロヱの周りを泳ぐレヴィが言う。

「はぁ~

ま、作戦は上手く行きましたからいいですけど。

次は気をつけてください」

半分諦めながらため息混じりにルイは言った。

「わかった」

と言いながら腕を組もうとするクロヱ。

「ちょ、ちょっと」

慌てるルイだったがさすがクロヱ、一瞬で腕を組む。

「はぁ~」

と言いながら額に手を当てるルイだが、まんざらでもなさそうだ。

ニコニコ笑顔のクロヱと半笑いのルイは仲良く城への道を歩く。

その後をふふっと笑いながらレヴィが続いた。

 

「おい、あのバカっプルどうにかしろ」

城のバルコニーから2人を見ていたラプラスは隣で一緒に見ているいろはに言った。

「まぁまぁ」

といろはは笑いながらポンポンとラプラスの頭を軽く叩く。

「子供扱いするな!

って、吾輩の出番これだけ!!」

ラプラスの叫びは今日も元気だった。

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