ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~   作:天野空

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第30話 姫と鷹と石と獅子

「今回は姫がお相手ですか」

ルイは目的の場所に向かいゆっくりと歩いていた。

絆も後3つとなり、野望ももう目の前まで来ている。

(作戦に必要な素材にも目星がつきました。

後は、絆を集めて願いを叶えるのみですね)

ルイがそう考えながら歩いていると、目的の場所が見えてきた。

そこは【ファンタジー】にある屋敷。

屋敷には主がいる証拠である旗がなびいていた。

「さて、どうやって入るかですが」

そこはルーナが主となるルーナの屋敷。

この屋敷内はイベント扱いになる為に、ホロメンであるルイもその姿が一般プレイヤーにも見えてしまう。

「さすがに私が屋敷の中を彷徨いていたら騒ぎになりますね」

そう考えていると、こよりから連絡が来た。

(もしも~し、聞こえますか?)

(こよりですか?

ええ、聞こえていますよ)

(中に入れなくて困ってないかなぁっと思って連絡しました)

グッドタイミングだが、グッドすぎる。

(ま、その通りですが、タイミング良すぎですね)

(はは、ロックの中から見ていましたので)

(そうですか。

で、対策は?)

(今から道具を転送するので、それを装備してください)

そして、送られてくる黒装束。

(えっとなんか忍者のような衣装ですが?)

(はい、いろはちゃんに試着頼んだら、怒られちゃいました)

それはそうだろう、本人は忍者扱いされるのを嫌っているのだから。

(それを着るとどこだろうと気配を消す事ができます。

ただし、着ている間は攻撃行動がとれなくなりますけど)

(それで十分です。

それでは、ルーナ先輩に会ってきます)

(は~い、検討を祈ります)

そして、こよりとの通信を切る。

素早くルイは忍者スーツへと着替えた。

(ぴったりですね。

私の体のサイズ測らした事ありましたっけ?)

ルイはそんな事を考えながら、屋敷の正面から堂々と中へと入った。

門番のプレイヤーや、屋敷の中を巡回しているプレイヤーには気づかれない。

(ん?)

ルイはさっと柱に隠れる。

廊下を歩いてくるのは、複数のメイドとその先頭を歩くあくあだった。

(さすがにホロメンであるあくあ先輩と鉢合わせはやめておきましょう)

ルイは別の道を探すべく、その場を後にした。

事前にルーナの部屋は知っている為、そちらに行けば高確率でルーナに会える。

ルイは辺りを伺いながら先に進んだ。

(ふぅ、あと少しですが)

この先に進めば、ルーナのいる部屋がある塔に入れる。

しかし、その前には巨大な扉と。

(ルーナイトの方々ですか…)

屋敷を巡回していたルーナイトとは明らかに違う装備。

レベルもそれなりにあるだろう。

ホロメンといえどもいきなりプレイヤーを攻撃する事は出来ない。(戦闘イベント以外は)

(さて、どうしたものでしょう)

ルイはふと窓から外を見る。

もうそこに塔は見えていた。

(だったら、せっかくこの衣装ですし、ね)

何かを思い付いたようにルイは次に行動を移した。

 

 

「はぁ~退屈なのら~」

自室でケーキを食べていたルーナは椅子の上で大きく伸びをした。

「最近、外出もしてないし、それに」

ふと部屋の壁に飾ってあるルーナの剣を見た。

「早くどうにかしないと…」

視線を机のケーキにうつし、手に持つフォークをケーキに突き刺した。

コンコン

「!?」

突然ルーナの部屋の窓に誰かがノックする。

しかし、部屋は塔の最上階、誰もこれる筈はない。

「誰?」

ちょうど日差しを背に受け、窓の外の来訪者は影のように黒くて誰か分からない。

「開けてくれませんか?」

影がそう言った。

「!!」

その声にルーナは聞き覚えがあった。

ルーナは窓にいき、窓の鍵を外して後ろに下がる。

するとゆっくりと窓が開き、その人物は部屋へと入ってきた。

全身真っ黒のその人物は覆面を取りルーナを見る。

「待っ鷹ね~」

とその人物は笑ってルーナに手を振った。

「やっぱりルイちゃん」

ルーナにそう呼ばれ、ルイはにこりと微笑んだ。

 

「なんで、窓から入ってきたのら?」

ルイに座るようにすすめ、自分も椅子に座るルーナ。

「いや、入り口に怖い人達がいたので」

「ルーナイト?」

「ええ、誰にも見つからず来たかったものですので」

「そうなのらね。

やっぱり噂の絆集め?」

「はは、もう先輩方には広まってしまっているんですね」

「当たり前なのら、あれだけ派手に動き回れば」

「確かに」

「それで今回はルーナの番なのらね」

「御意」

ルイは椅子から立ち、片ひざを床につけ頭を下げる。

さながらその姿は王族に謁見する騎士のようだ。

「わかったのら」

ルーナは席を立ちルイを見た後、部屋に立て掛けている剣をチラリと見た。

「では、ルーナについてきてほしいのら」

「仰せのままに」

ルーナにそう言われて、ルイはその格好のまま即答した。

 

 

「で、どこに行くんですか、ルーナ先輩」

「ちょっとそこまで」

「そこまでって」

今、ルーナとルイは巨大なアヒルに乗って飛んでいた。

このアヒルはアビッグルと呼ばれ、この【ホロライブワールド】の空を群れで飛んでいる環境生物だ。

捕まえて専用の騎乗装具を付ければ、立派な移動用のペットに出来る。

ただし、一人用。

「めちゃくちゃ、はぁはぁ言ってますけど」

ルイは乗っているアビッグルを見てルーナに言う。

「え?

ほら、頑張ってしゅば」

激励を飛ばすルーナ。

「いや、アビッグルにその名前はヤバイと思いますが」

「なんで?」

「いや、別に大丈夫です」

ルイの突っ込みに、くるりと後ろを振り向いたルーナの顔を見て、ルイはすぐに言葉を撤回した。

「あ、見えてきた」

しばらく飛んだ後、ルーナがある山を指差す。

それは前回クロヱ達が来た霊峰 封神山。

「ここですか?」

「うん、そうだよ」

ゆっくりと山の中腹へと降りていくルイ達。

「ありがとう、しゅば。

帰りもお願いね」

「しゅ、しゅば」

「しゅばって鳴くんですね」

はぁはぁ息が荒いアビッグルは片羽を上げた後、その場に座り込んだ。

さすがに定員オーバーでここまで飛ぶのは辛かったのだろう。

「ご苦労様です」

ルイはアビッグルに軽く頭を下げた。

「では、行くのらよ」

「は、はい」

先に中腹の洞窟に入っていくルーナの後を、ルイは慌てて追いかけた。

「案外暗いですね」

ルイは杖の先に光の魔法を灯し、辺りを明るくする。

「ここは特別な方法でしか普通は入れない場所だから」

ルーナは先頭を歩きながら答えた。

「ここに何が?」

「この奥でしか採掘できない素材に用事があるのら」

「素材ですか?」

「そう、この奥にしかない石【ホロライフルストーン】をゲットする事が目的なのらよ」

「【ホロライフルストーン】?」

「そう、ある加工を施すとすごい記憶媒体になる石になるらしいのだけど、そのままでも力を溜め込むアイテムになる」

「記憶媒体…」

「そうなのら。

ただし、その加工が出来るのはこの世界に1人だけと言われているのら」

「よくそんな情報知ってますね」

「ま、うちには優秀な情報収集家がいるから」

(あくあ先輩の事かな?)

「それで、ルーナ先輩はなぜその石を?」

「ルーナの必殺技はルーナの力を全て使ってしまうのら。

前回、それで回復アイテムがぶ飲みして戦ったのらけど、効率が悪すぎるのらよ。

だから、事前にルーナの力をその石に溜め込んでいれば、必要な時に取り出して技を、連続で撃つ事が出来るという事なのら」

「なるほど」

話していると目的の場所に着いた。

「ここですか」

そこは誰かが先に発掘した後があった。

「数ヵ月前に山を彷徨っていたプレイヤーが、偶然ここに入ってこの石を見つけ持ち帰ったらしいのら」

「そして、その石は運営も把握していなかった物だった」

「!誰?」

突然の背後からの声にルイ達は振り向く。

「まさか、holoXとルーナちゃんが共に行動しているとは」

「く、GMか!」

ルイはすぐに戦闘体勢をとった。

ルイの言う通り、そこには腕組みをしたルーナと同じくらいの身長の女性が立っていた。

「ルーナちゃんと会うのは初めてかな?

GM部隊所属さくやと言うものです。

よろしく」

さくやは腕組みを解き、ルーナ達に挨拶をする。

「こちらこそ、よろしくなのら」

ルーナは片手を軽く上げて挨拶した。

「それと、鷹嶺ルイ?

私はここで戦うつもりはないよ」

そう言ってさくやは両手を上にあげる。

しばらくさくやを見たルイはゆっくりと杖をおろした。

「その言葉信じましょう」

「ありがとう」

そう言ってさくやはルーナの横に来て、発掘場所を見る。

「さっきの話は本当なのら?」

ルーナは発掘場所を見ながらさくやに聞く。

「ええ、運営はこんなアイテムを実装した形跡はないと言っています。

なので、誰か他の者が密かにこのアイテムを実装したか、あるいは」

「あるいは?」

ルイも2人の側で聞き返した。

「超AIと呼ばれる存在が何らかの理由で、これをこの世界で作ったか」

(確かにあり得る。

超AIは素体を持たない情報体。

自分達をゲーム内で維持するには、自分の体を用意するか、もともとあったモノに入るしかない。

だが、入るにしても要領の限界がある。

だから、この石。

加工すればすごい記憶媒体になる石なら自分の全てを保存でき維持できる)

「さすがはholoX一の分析屋ですね。

私の言いたい事をほぼ把握しているようで」

「まぁ。

しかし、本当に超AIが?」

「それは分かりません」

「よいしょ」

2人が話している間にルーナは採掘されて落ちている石を拾う。

「ちょっとルーナ先輩」「ルーナちゃん?」

驚く2人。

「どうかしたのら?」

「いや、どうかしたのら?じゃなくて話聞いてました?」

「それは運営も把握していない物で、何があるか分かりませんよ」

ルイとさくやに勢い良く言われるルーナだが、当の本人は気にしないような顔をしていた。

「別にいいのらよ。

それにこの石の能力は間違いないなのらよね?」

「ええ、それはそうですが」

ルーナに聞かれて答えるさくや。

「なら、何も問題ないのら」

ルーナは自身のアイテムボックスに石を入れた。

「さ、戻るのらよ」

またも来た道を1人どんどん進もうとするルーナ。

「ちょちょっと」

慌ててルイがその後を追いかける。

さくやもその後に続いた。

「ふぅ、これで任務完了!」

外に出たルーナが伸びをする。

「はぁ、こんなに行動力ある人でしたっけ?」

ルーナの後を追い出てきたルイが呟く。

さくやも洞窟から出てきた。

「それじゃ、ルイちゃん」

ルーナがルイに手を差し出す。

「あ、はい」

ルイはその手をとった。

「【ホロライブワールド】第四世代組姫森ルーナなのら~

改めていうと照れるね」

ルーナ笑いぎゅっと手を握った後、アビッグルに乗り屋敷に帰っていった。

「いいんですか?

謎の石をホロメンに持たせたままで」

ルイは帰っていくルーナを見送りながら、隣に立つさくやに言った。

「構わないさ。

初めは運営も把握していない石だったが、今は持ち帰ったプレイヤーによって把握している物になったからね。

それに」

さくやはルイを見る。

「貴女はあの石を取っていないみたいだから」

「分かりませんよ、貴女が帰った後に取りに行くかもしれません」

ルイはさくや見て言う。

「それは心配ないさ。

何故なら私が来た理由がそれだからね」

ルイはその言葉を聞きすぐに背後を見る。

そこにはもう洞窟はなかった。

「通路を隠した?

いや、これは洞窟自体の存在を切り離した」

「ご名答。

総司令の指示なのでね」

さくやはそう言ってルイから離れる。

「帰るのですか?」

「もちろん、今回の任務はあの洞窟の処理でしたから。

holoXとの戦いは任務に入っていないよ」

さくやがGMバイクを召喚し跨ぐ。

「そういえば、彼女は元気にされていますか」

ふと、ルイは近未来都市での事を思いだし、さくやに聞いた。

確かあの戦いにGM部隊が参戦していた。

後で知った事だがあの時に確か1人仲間を庇ってやられたGMがいると聞いた。

「…彼女はもうこの世界にはいませんよ」

「いない?」

「ええ、退職しましたから」

それだけ言うとさくやはGMバイクを走らせ、空へと消えていった。

「あのチームは1人欠けたのか」

ふぅと息をはいた後、ルイは消えた洞窟を見る。

(あの石は確かにもったいなかった。

もしかしたら、最悪の場合の切り札になったかもしれないが…)

「手癖が悪ければ良かったですけどね」

ルイはそう言って機械でワープホールを作り出す。

そして、ルイは静かにその場から消えた。

 

 

「ア ト ふたり」

 

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