ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~   作:天野空

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第31話 戌神神社に出る妖怪

「ふう、久々の外ですねぇ」

こよりは一旦立ち止まり大きく伸びをした。

「とうとう絆も後2つ。

1つは未だにどこにいるのか分からないけど、1人はやっと居場所掴めました」

にこっと笑ったこよりは手元のディスプレイを見る。

そこには笑顔でピースする、特殊世代組の戌神ころねが映っていた。

こよりが今向かっているのは、特殊世代組各々が管理する神社の1つ戌神神社。

だだっ広いすすき野原の真ん中に、その神社はポツンとある。

「あれですかね」

道無きすすき野原を進みこよりは、その神社を見つけた。

神社と言っても、ここには少し傾いた鳥居とご神体が入れられている小さな本殿があるだけだった。

ゆっくりと鳥居をくぐるこより。

しかし、またすぐに鳥居を戻る。

その後鳥居の外側を回りまた、本殿側から鳥居をくぐった。

今度は鳥居に向かって柏を3回打つ。

そして、こよりは後ろを向いて後ろ向きで鳥居をくぐった。

「まさか、その方法を知ってる人がいるなんてね」

鳥居の奥にある大きな本殿の階段に座るころねが、笑顔でこよりを見た。

「いや、ホロメンかぁ。

いらっしゃい、戌神神社にようこそ」

そう言ってころねはにこっと笑った。

「初めこの情報を知った時はびっくりしました」

こよりは階段の方に歩きながらころねに言った。

「あの小さな本殿は本当の本殿ではなく、特殊な方法で鳥居をくぐった際に繋がる別空間にある、この立派な建物が本当の本殿だったとは」

「ん、ころねこれでもなかなか忙しくて。

パン屋さんしたり、【学園】で学園長したり、なので神社の管理がなかなか出来ないから、運営さんに言って本殿隠してもらってる」

ころねも立てって階段をゆっくりと降りる。

「でも、あの小さな本殿も本物には代わり無いよ。

月一でころねすきーのみんなが掃除してくれてるから、ありがたいよ」

「なるほど」

背後を見るこより。

空間が歪んでいるがそこには、ちゃんと外に通じる部分があった。

「さて、それじゃ、殺ろっか」

「なんか言葉、物騒な感じがするんですけど」

「そう?」

階段を降りきったころねの全身を、いつの間にか黄色の輝く神気が包み込んでいた。

「戌神の力…」

「そうだよ。

わざわざ他の誰にも邪魔されないこの場所を選んだんだから、楽しませてよ」

頭覆う部分は他の特殊世代同様、戌神は犬の形になっている。

手を覆う神気は長い爪のような形で伸びていた。

「さすがにその姿のころね先輩を相手に、このままだと部が悪いです」

こよりは胸元からカプセルを取り出す。

「待ってあげるよ」

ころねは微笑み構えたままこよりを見る。

「ありがとうございます。

その待ってもらった時間、後悔させませんので」

こよりは勢い良くそのカプセルを地面に投げつけた。

ポンと小さな音がして煙が吹き出す。

煙はこよりを覆い、そして煙が晴れた。

「へぇ~」

煙から現れたこよりを見てころねは嬉しそうに声をあげる。

煙から現れたこよりの全身をころねと同じように、全身機械が覆っていた。

「ロボットみたい」

「そこに喜んでいたんですか」

「いいなぁ」

羨ましそうに見るころね。

「もう、戦うんでしょ」

「あ、そうだった」

こよりに言われて構えるころね。

「はぁ、変なところに気を取られ過ぎ…」

「おらよ~」

「ってわぁ!」

突然間合いを詰め攻撃され、慌てて防御するこより。

そのまま後ろに下がらされた。

「案外固いね~」

「いきなりですか」

「いや、始めるって言ったから」

「そうですけど!」

こよりは今度はきちんと構えころねを見る。

(さすがにこのこよりアーマー着てなかったら追い付いていなかったですね。

さすがはころね先輩)

「次はこちらから!」

こよりは手のアーマーから爪を出す。

このアーマーはミオの神気装甲を参考に製作した物だ。

強度も申し分ないはず。

しかし。

(避けられた)

間合いを詰めての最速の攻撃をこよりは外した。

目の前にいないころね。

「ほらよ~」

背後から声。

「ぐぁ」

ころねの蹴りがこよりの背中を直撃し階段へと飛ばされる。

勢い良く階段に突っ込むこより。

「早い」

階段に直撃したダメージは無いが、ころねからの攻撃にはダメージがある。

(攻撃も想定していたより強い)

「これが本気じゃないよね?」

神気を纏ったころねがニヤリと笑う。

「もし、そうだったらがっかりで撃っちゃうよ?」

ころねが手で鉄砲の形を作り、こよりを狙う。

「く」

(さすがにあれを撃たれたらどうにもなりません)

ころねの放つ最終技。

どんなものもこちらに帰れない場所に連れていかれる黒い穴。

(もう、使う事になるとは)

こよりは自らのアーマーのリミットを外す準備をした。

しかし、思わぬ邪魔がそこに入った。

ギャァァァ~

この空間に響く悲鳴。

そして、それは現れた。

「な、なんで」

ころねとこよりから少し離れたその場所にそれは現れた。

黒い渦が巻くその黒い穴は、中からこじ開けるようにこの空間にゆっくりと開く。

初めは指だった。

5本の指、10本の指、15本の指、20本の指…

指が増えて幾度に広がる穴。

そして、その指の円の真ん中からそれは顔を出した。

老婆だ。

白いぼさぼさの髪で所々黒く染まっている。

良く見ればその顔も所々黒い。

「嘘つきいねぇかぁ~」

その老婆が穴から這い出してくる。

「あれは何ですか」

こよりは後退りしながらころねに聞く。

ころねはじっと老婆を見ていた。

「指切りするやついねぇかぁ~」

穴から腕が這い出る。

それは明らかに長い腕。

人の腕だが蜘蛛のようだった。

「妖怪ゆびきり」

1本1本穴から腕を這い出し、それはやがて全身穴から現れた。

ソレが出た瞬間、穴はあっという間に閉じて消える。

「妖怪ゆびきりって何ですかぁ?」

こよりはころねの横に来て聞く。

「前に穴に落としたエネミーなんだけど、まさか出てくるなんて」

「ええ、あれって出れない穴じゃないんですか?」

「そうなんだけどね」

こより達は妖怪ゆびきりを見る。

その姿はまさに蜘蛛だった。

足はない。

人間の顔と体で体の部分から8本の腕が生えていた。

こよりは素早く相手を分析する。

「!!」

(まさか、こんな能力もあるなんて)

「ころね先輩、アレの中にコメント核があります」

こよりは驚きころねに伝える。

「コメント核…」

コメント集の中にはコメントが集まる切っ掛けとなる始まりのコメントがある。

それがコメント核と呼ばれ、それを処理すればコメント集は崩れ、無害な1つのコメントに代わりいづれは消えていく。

「まさか、穴の中にあったコメント集がアレに引っ付いて新たなエネミーになって自力で出てきたってわけ?」

「たぶんそうです」

(ころね先輩の絶対の力さえも越えてくるなんて、コメント集はやはり…)

「どうします?」

「もちろんぶっ潰すよ。

ここから出て暴れられたら困る」

「確かに」

こよりところねは妖怪ゆびきりに向かって構える。

辺りを見ていた妖怪ゆびきりは、2人の方に目を向ける。

「嘘つきいねぇかぁ~

指切りするやついねぇかぁ~」

「逆にあんたの指全部もらってやるよ~」

ころねがゆびきりに向かって飛び出す。

ガン

ころねの攻撃に相手の腕はあり得ない音を発する。

「なにあの腕?

骨みたいなんだけど」

ころねは素早くこよりのところに戻る。

腕を切り落とす勢いで攻撃したが、切る事ができなかったのだ。

(装甲の高さはぼくのアーマーと同様…

いや、それ以上ですね。

これもコメント集で強化されている)

「だめです、全身コメント集で強化されてます」

分析結果を伝えるこより。

「どうすればいい?」

穴の中で長い間がたち、コメントが集まりすぎたのだろう。

あの状態になってしまえば攻撃を通すのは、なかなか難しい。

ころねに聞かれたこよりだが策はない。

「こよのアーマーのリミットを解除しても、ころね先輩の攻撃が通じないなら、攻撃通りません」

「打つ手無し?」

「です」

「どうにか穴にもう一度落とせれば」

「でも、コメント核があるかぎりそれも…」

こよりの言う通り、また穴に落としても自力で出てくる可能性があった。

「コメント核はどこ」

「え?あ、ちょっと待ってください」

ころねに言われ急いで分析を開始するこより。

「胸です。

心臓の部分に核があります」

「わがった。

今からある事をするから。

後は任せた。

もし、おがゆに会ったらごめんって伝えといて」

「え?」

ころねはそう言ってこよりの手を取る。

「戌神ころねのいいところ見といてね」

こよりにころねとの絆が結ばれた通知がきた。

そして、ころねは手を鉄砲の形にして妖怪ゆびきりに向けた。

「ばん!」

言葉と同時にゆびきりの背後に黒い渦が現れる。

渦はすごい勢いでゆびきりを吸い込もうとする。

しかし、ゆびきりは穴の端を8本の手で掴み、吸い込まれまいと踏ん張る。

「やっぱり」

それを見たこよりから落胆した声が出た。

「じゃ、任せたよ」

そう言ってころねはゆびきりの方に走った。

「え?ころね先輩?」

何が何やら分からないこより。

ころねは一瞬でゆびきりの背後に回り込む。

そして、手をゆびきりの背中に当てた。

ドン!

鈍い音の後、ゆびきりから何かが押し出されるように飛び出す。

そして、ゆびきりは静かにころねと共に黒い穴へと消えていった。

「え?」

残されたこよりの前に黒い塊が浮かんでいる。

それは黒いダイヤモンドの様だった。

「え?」

こよりは起こった事が理解出来ない。

(なんで?

核がここに?

ころね先輩は?

え?え?)

「早く破壊しろ!」

「ひぇぇ」

背後から突然声をかけられ驚くこより。

「破壊しないなら俺がやる」

状況を掴めないこよりの横を真っ白い鎧を着た騎士が通る。

そして、真っ白い剣を核に突き刺した。

パキ

乾いた音と共に砕けて消えるコメント核。

「え?あなたは」

「誰でもいい。

それより、突然の事で驚き狼狽えるのは分かるが、先輩から頼まれた事はきちんとしろよ」

そう言って白騎士はこよりの頭をポンと叩く。

「いた」

「そんなに強く叩いてないだろ」

そう言って白騎士は外へと出ていき消えた。

「な、なんだったんですかぁ。

そ、それよりころね先輩」

こよりは我に帰ったように黒い穴が消えた方を見る。

しかし、そこには何もない。

「ころね先輩ぃ」

こよりはその場に座り込む。

「悲しんでいるとこ悪いけど。

ころさんは死んでないよ」

「へ?」

涙目のこよりは声の聞こえた方を見る。

そこには気を失っているころねをお姫様抱っこしたおかゆが立っていた。

 

「何が何だか分かりません」

こよりとおかゆ、そして気の失ったころねは本殿の中に入っていた。

ころねをゆっくりと布団に寝かすおかゆ。

「ま、座りなよ」

おかゆはそう言って自分も座る。

大人しく座るこより。

「どうしておかゆ先輩が?」

「ん?

何か嫌な予感がしてさ。

そしたら、突然GMから戌神神社にコメント集の反応が出たと連絡がきて、本人達も駆けつけたけど、反応があるのにコメント集が見つからない。

ころさんに連絡したけど、繋がらないからぼくに連絡したんだって。

それでもしかしてと思ってここに来たら、ころさんがあの状態だったからね。

間に合って良かったよ」

穴に吸い込まれる直前、おかゆがころねを助け出した。

「そうだったんですかぁ」

はぁと息を吐くこより。

そんなこよりを見ておかゆは優しく微笑む。

「こよちゃんは大丈夫?」

「え?こよですか?

はい、大丈夫ですよ」

おかゆに聞かれてガッツポーズを取りアピールするこより。

「それじゃ、こよはこれで。

早く戻らないとラプちゃんがうるさいので」

そう言って立ち上がるこより。

「分かった。

ころさんはぼくが見ておくよ」

「お願いします」

こよりは機械で背後にワープホールを作る。

そんなこよりの後ろ姿を見て、おかゆはある事に気づいた。

「そっか、もう先手はうったんだね」

「はい?」

おかゆの方に振り返るこより。

「ん?

なんでもないよ。

また、会おうね」

「はい、おつこよでした~」

こよりは元気良くワープホールへ入っていった。

 

 

「アトヒトリ」

 

 

 

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