ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
普段なら流され消えていくような言葉。
何も力を持たないその言葉に、ふと誰かがコメントした。
冗談から生まれたそのコメントは、誰かがそれに反応する事で力を得た。
だんだんそのコメントに、言葉が集まる。
いつしかそれは世界を揺るがす程のコメントになり、世界を覆い始めた。
しかし、そのコメントを制する者が現れる。
コメントは力を失いゆっくりと消えていく。
はずだった。
しかし、そのコメントは運が良かったのか?
それとも何か別の力が、そのコメントを拾ったのか?
そのコメントはある場所で眠りについた。
そして、そのコメントはまた眠りから覚め、誰かの目にとまる。
そして、そのコメントに言葉が続いた。
そのコメントはまた力を得、今度は意思を持つ。
次こそはもっと上手くこの世界を覆い潰そうと、コメントは集まり静かに広がっていった。
「ようやくすべての絆が集まったぞ!」
holoX城の大広間。
いつものように集まった4人の前でラプラスは両手を上げて喜ぶ。
「はぁ、長かったでござるよ」
「いろいろあったね」
いろはとクロヱは喜ぶラプラスを見ながら苦笑いをして呟いた。
ルイとこよりは静かにラプラスを見ている。
「よし、それではさっそく吾輩の願いを叶えるとするか。
はかせ準備は?」
「いつでもいけるよ」
ラプラスに言われて、こよりは普通に答える。
「?」
そんなこよりにいろはは何か違和感を感じた。
「では、さっそくここに」
「待ってください」
ノリノリのラプラスをルイが止める。
「ん?」
「この城にロックを呼ぼうとしていませんか?」
「そうだが?」
ルイの言葉にきょとんとなりながら答えるラプラス。
はぁとため息をつくルイ。
「そんな事をしたら、この場所がGMにばれるじゃないですか」
「あ」
「そうならない為に。
ラプラス、異空間を作ってそこでロックを呼び出しましょう」
「確かに」
ルイの言葉に頷くラプラス。
「では、さっそく行くぞ、お前たち!」
パチンとラプラスが指を鳴らすと、5人はholoX城から姿を消した。
「ラプラス様!」
バン!
その後すぐに大広間に慌てて飛び込んでくるアスモ。
「いない」
大広間を見渡したアスモは落胆した声で呟く。
「ラプラス様は?」
その後ろからレヴィが声をかける。
「皆さんいなくなってる」
「こんな時に」
アスモの言葉にレヴィが焦る。
「おい、どうする?
もうそこまで来てるぞ!」
ベランダから外を見るベルフェが焦った声を出す。
「こうなれば私達でどうにかするしかありません」
レヴィが近くにいる第X世代の4人に声をかける。
頷く4人。
ベランダから外を見る。
そこには、ユラユラ揺らめきながら真っ黒な影が、このholoX城に大量に向かっていた。
それは第X世代もよく知るモノ。
コメント集の大群だった。
そこは何もない白い空間。
そこに5人は立っていた。
「ここなら誰も邪魔は入らない。
吾輩の許可無しでは入れない場所だからな」
ラプラスは腕組みをしてうんうんと頷く。
「では、ロックを召喚するか」
そう言ってラプラスが手を上げる。
しかし。
「あれ?」
いつの間にか、5人から少しはなれた場所に亜人の少年ロックが立っていた。
「なんで?」
そのロックに近づくルイとこより。
「おい、なんでそいつがいるんだ?」
ラプラスもロックに近づこうとしたが「待つでござる」いろはに止められた。
「な、なんだ?」
止められたラプラスは困惑した顔でいろはの顔を見た。
その顔は真剣そのもの。
制した手と反対の手はチャキ丸を握っている。
ラプラスを挟んでいろはと反対の場所には、いつの間にかアイマスクを着けたクロエが無言で鎌を構えていた。
「どうした2人とも」
「何者でござるか?」
ラプラスの言葉より、いろはは目の前に立つ3人に声をかける。
こより、ロック、ルイの順で並んだ3人はラプラス達を見ていた。
「ふ、ふは、ふふ、フハハハハハハハハハ!」
突然大声で笑い出すロック。
その口は亜人といえ口が裂ける程大きく開いていた。
驚くラプラス。
今はロックには誰にも入っていない。
いわば人形のようなもののはず。
なのに目の前のロックは大きな声で笑っている。
「は、あは、はは、ゴクロウサン。
ラプラスサマァ」
ロックは今まで聞いたことのないような声でラプラスに喋りかける。
「お前は誰だ!」
ラプラスもロックを睨みながら聞く。
「ハへ?オレ?
オレは誰でもナイ。
俺ハそうだな、オマエラの言うトコロだとコメント集カ?」
「コメント集だと!
あれはもうこの世界にはないはず」
ロックの言葉にラプラスが強く言う。
「ソウダな。
あンタらの先輩方ガ、おれタチをケシタ。
だがな、俺はノコッタ。
ソシテ、こいつの中でネムってタノサ」
そう言ってロックは自分を指差した。
「おい、幹部にはかせ、こっちにこい」
しかし、ラプラスの言葉は2人には届かない。
2人は虚ろな目で立ったままだった。
「ムリムリ無理ムリムリ、こいツラハもう俺が中まで侵食してヤッタヨ。
全部オカシテやったぁぁぁぁはアへキドラ!」
「お、おまえぇぇぇ!」
ロックの言葉にラプラスが怒る。
しかし、いろはは力強くラプラスを手で押さえていた。
「いろは!」
そんないろはをラプラスは睨む。
「ここは抑えるでござるラプ殿」
「ヘェ、冷静ダナァ、アンタ」
「こっちだってすぐさまお前を切り裂きたいよ。
でも、あんたコメント集でしょ?
下手に近づいて取り込まれたらアホらしい」
表情はよめないが、我慢しているであろうクロヱが答える。
「コドモ総帥よりヨッポドたよりニナルな」
「おま」
「バカにするな!でござる。
ラプ殿は希望でござるからな」
ラプラスの言葉を止めるように、いろはが大きな声で言いはなった。
「フゥン、まぁ、いいや、こっからはオレタチのたーんだ」
そう言ってロックは口を大きく広げて上を向く。
ゴポ、ゴポと音を立てながらロックの口から黒い泥のような塊が現れる。
それはどんどん口から溢れ、ロックの顔体を覆いながら現れてきた。
「ぐ」
目を背けるラプラス。
いろはやクロヱはその光景を見ているが、顔をしかめていた。
そして、ソレはロックを覆いつくした。
「ははあはあはあはあはあはあはあ。
やっと出られた。
さぁ、これからオレの願いを叶えるやるぞぉぉぁ」
そして、ソレは床にドロッと溶け込んでいった。
『さて、せっかくオレの為に絆を集めてくれたんだ、お礼をしないとなぁ。
ラプラス、お前の大事な部下と殺しあえよ。
ははあはあはえはえはえは』
どこからか聞こえるコメント集の声。
その声で虚ろな目だったルイとこよりの目に光が戻る。
「ルイ、こより!」
ラプラスが声をかける。
「あは、ラプちゃん」
返事をするこより。
「気がついたか?」
「気がついてるよ、さっきからずっと」
そう言うこよりの手にはいつの間にかたくさんの試験管が握られている。
「やっと、動ける。
これでやっとラプちゃんを
殺せるよぉ~」
そう言ってこよりがラプラスに飛び付こうとした瞬間。
「なにするの、やめてよ。
ルイルイ!」
ルイが背後からこよりを羽交い締めしていた。
「ルイ!」
「すいません、ラプ。
私が気づいた時には、こよりは手遅れでした。
そして、私も多くの部分が侵食されていた。
だから、どうにか3人には行かないように、ロックの中に入らないようにしました」
途中からロックの中にラプラス、いろは、クロヱが入らないようにしたのはルイの作戦でもあった。
「どうか、私達はもう手遅れだ。
ラプラス、こうやって私が自分の意思で体を動かせている間に。
私達を」
「放せ!放せよ!ルイルイ!」
暴れるこより。
それを必死でルイが抑えていた。
「ラプ殿」
「ラプラス」
いろはとクロヱが自分の武器を構える。
2人は覚悟を決めている。
「ラプ、早く!」
叫ぶルイ。
しかし、ラプラスは…
「どうして、どうして吾輩がお前たちを見捨てろと命令できる!」
泣いていた。
(どうすればいい、吾輩はどうすれば)
そこにそれは現れた。
どこからか飛んできたそれは、ラプラスの頭の上にとまる。
(カラス)
頭に止まったカラスにラプラスは、意思を送る。
(思い出して、あの時、AZKiさんは答えを教えてくれていた)
ラプラスにカラスから声が届く。
(答え?)
ラプラスはAZKiとの対話を思い出した。
ルイの成り立ち。
そう、ルイは誰を元に形成されていたか?
「そうか!」
「ラプ殿?」
「お前たちは手を出すな」
ラプラスはいろはとクロヱにそう伝える。
(カラス、頼めるか?
ルイを乗っ取ってこい!)
(了解!)
カラスはそう返事をすると、ラプラスの頭から飛び立ちルイに向かっていった。
『おいおい、何をするんだ?
ルイが自我を保てたのは面白かったが、それももうすぐ終わる。
お前たちは殺し合うしかないんだよ!』
また、コメント集の声がどこからか聞こえる。
「うるさい、黙れ!」
ラプラスの声が響く。
そして、カラスはルイの頭にとまり、そして消えた。
「うぁ」
苦しそうなルイ。
「我慢しろルイ!
今助けてやる」
その姿を見て、ラプラスがルイに叫ぶ。
その声にルイは苦しそうだが、優しく微笑んだ。
(よし、乗っ取ったぞ)
(よくやった)
カラスからの言葉にラプラスはにかっと笑う。
「いろは、沙花叉」
『は、はい』
突然ラプラスに呼ばれて驚く2人。
「しばらく2人でこよりを傷つけず、足止めしてくれ」
「それでいいのでござるな」
「大丈夫だ」
「任せて」
ラプラスの自信に満ちた言葉に、いろはとクロヱは頷いた。
(よし、こっちに戻ってこい)
(了解)
カラスに意思を送るラプラス。
すると、ルイはこよりを解放してラプラスの方に跳んだ。
「あは、やっと放してくれたぁ」
「おっと」
「しばらくは沙花叉達の相手をしてもらうよ」
「こよちゃん、ラプ殿がどうにかしてくれる。
しばらくの辛抱でござる」
そうして2人はこよりの前に立ちはだかる。
「大丈夫か?」
「なぜ、私は」
ラプラスの言葉に、ルイは自分の体を不思議そうに見る。
「ちょっとした手品だ」
(ルイの中のコメント集は除去したぞ)
(よくやった。
出てきていいぞ)
カラスにそう伝えると、ルイの頭にいつの間にかラプラスのカラスがとまっていた。
そして、ラプラスの頭に移動する。
「もう大丈夫だ、ルイの中のコメント集は除去した」
「え?」
ラプラスの言葉にルイは目を閉じる。
そして。
「本当だ」
目を開け驚くルイ。
「自分の体をスキャンしたのか?」
「ええ、本当にコメント集の影響がなくなってる。
どうやって?」
「さっきも言っただろ手品だ」
そう言って胸をはるラプラスを見てルイはクスッと笑った。
「だが、まだ終わりじゃない。
ルイ。
こよりをスキャンして何かないか調べてくれ」
「分かりました」
ラプラスに言われて、ルイはいろは達と戦うこよりを視た。
「!!」
「何か見つけたか」
目を見開いたルイに声をかけるラプラス。
「はい、こよりの後頭部に何か白い糸のような物がついています」
「糸?」
(こちらでも確認した。
それはこよりの中、中枢に繋がってる)
カラスからの声にラプラスはニヤリと笑う。
(なら、いけそうか)
(ああ、ルイの時のようにすぐには無理だが、しばらく私が中で補助すれば)
(頼む)
(わかった)
ラプラスの意思に応じてカラスは飛ぶ。
その先はこよりの後頭部。
ころねとの絆を紡いだあの時に、白騎士がぽんと叩いた場所だった。
糸に触れると同時にカラスはデータに変わりはこよりの中に入り込む。
動きの止まるこより。
「もう大丈夫だ、2人とも」
ラプラスはいろは達に声をかける。
そして、4人はこよりの方に駆け寄った。
『ほう、まさか、オレを体から追い出すとわなぁ』
「ふん、1度消された相手にholoXが手間取るはずがないだろう」
『はは、言ってろぉ』
「ラプちゃん?」
「こより」
こよりに呼ばれてラプラスはこよりを見る。
顔は疲れているが、こよりの意識は感じる。
(なんとか抑えた。
しかし、ルイと違ってやはり全除去には時間がかかるよ)
(かまわない、除去してくれ)
(わかった)
「こより、もう大丈夫だからな」
ラプラスの言葉ににこっと笑うこより。
「これでお前の作戦とやらは終わりだ。
さっさと姿を表して、吾輩にやられろ!」
『はははへはははははははは
おめでたいなぁ、俺は絆を集めたんだぞ。
そして、願ったのは世界征服だ!』
「!!」
『さぁ、見ろこれが俺たちだぁ!!!!』
その叫びと共に床から立ち上がる巨大な影。
それはラプラス達の数十倍は優に越えていた。
「な、に」
そして、その影はどんどん増えていく。
まるで黒い木のように立ち上がり、森のようになっていく。
「多すぎる」
その圧倒的な数にルイが言った。
「何を言ってるんだ幹部!
たかが百や千、万が相手だろうと、吾輩達holoXが揃っていて負けるはずがないだろう」
「さっきまで泣いてたくせに」
胸を張っていうラプラスの横からクロヱが茶々をいれる。
「う、うるさい」
「そうだよね、こよ達が揃ってるんだもん」
いろはに肩を借りて立ち上がるこより。
「負けるはずがないでござるな」
いろはもそう言って微笑む。
「さぁ、やるぞ。
ルイ!」
ルイに手を伸ばすラプラス。
ルイはその手を握る。
そして、はぁとため息。
「子守りは親の仕事ですからね」
「誰が子どもだ!」
ルイはラプラスを見ながら言った。
そして、5人は揃って敵を見る。
それはけして簡単に倒せる量ではなかった。
しかし、5人は1人も負ける事を考えていない。
『我らholoXに敗北はない!』
最終章突入しました。
ここから、ラプラス達の最終決戦が始まります。
【ホロライブワールド】に広がるコメント集。
果たして世界はコメント集に打ち勝てるのか?
それとも本当に世界征服されるのか?
次回をお楽しみに