ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~ラプラスの野望~ 作:天野空
「なんで今回は吾輩1人なんだ?」
ラプラスは1人【学園】の廊下を歩きながらぼやく。
いや、今はラプラスではなくロックだった。
今回の作戦は【学園】にいる赤井はあとと絆を作る事だ。
しかし、現在ラプラス側で【学園】に怪しまれず入れるのは封印を解いた規格外の力を持つラプラスだけだった。
と言うわけで、その力を使いラプラスはロックとなってこの【学園】に侵入したのだった。
「ま、別にいいけど」
「ねぇ、君。
見ない顔だけど新人さん?」
廊下でいきなり背後から声をかけられビクッとなるラプラス。
「え、いや、新人というか、なんというか」
そう言いながらラプラスは振り返った。
そこには1人の男子学生が立っていた。
「じゃ、迷子かい?
ここの【学園】は広いからね。
よし、このエリトアに任せて案内してあげるよ」
そう言うとエリトアはにかっと笑った。
(なんだこのぐいぐいくるやつは?)
そうは思ったがこの【学園】は確かに広い。
ラプラスはこのぐいぐいくる男子学生を使ってやろうと思った。
「お、お願いします」
そうラプラスは半笑いで言った。
「任せなよ。
これでも、俺はこの学園を卒業生第一号を影から支えた男だぜ。
っとこれは秘密だった。
内緒な」
(別に聞いてないが、誰かに自慢したいんだろうな)
「まずは話を聞くなら食堂だ。
いこうぜ」
ラプラスはエリトアに連れられて食堂に向かった。
もうすぐお昼なのか、食堂は混んでいた。
なんとか食堂の端に空いていた席を確保して、ラプラスはエリトアと向い合わせで座る。
「そういやぁ、そっちの名前聞いてなかったな」
メニューを見るラプラスにエリトアが聞く。
「ん、吾輩…」
「吾輩?」
「え?あ、じゃない、僕はロック、そうロックって言うんだ」
「ロックか分かった、よろしくな」
慌てて答えるラプラスに少し疑問に思いながらエリトアは頷く。
「で、注文は決まったか?」
「ん?種類が多すぎる」
エリトアに聞かれてラプラスは答えた。
「じゃ、俺のおすすめ。
ねねちゃんの原液をラミィ水で…」
「ちょっと待て!」
「ん?どうした?」
「いや、聞き違いだといいんだが、なんかねねさんのなんとかって聞こえたんだが?」
「ああ、ねねちゃんの原液か?」
「それ!
どう聞いても飲み物じゃないだろ!」
ラプラスは声を大きくしながら言う。
「いや、れっきとした飲み物だ。
ま、知らないのも無理ないか。
最近販売され始めた物だしな。
正式名称は、桃鈴ねねちゃんの管理する果樹園で採れた桃を生搾りして取れた原液を加工した桃ジュースで略してねねちゃんの原液だ」
「いや、略し方おかしい」
「いや、納品した人がそう略してたって言うしな」
「誰だよそんな略し方して納品したの」
「本人らしい」
エリトアは静かに語る。
「そっか」
ラプラスもそう答えるしかなかった。
「と言うわけですいません」
エリトアは気を取り直してウェイトレスを呼ぶ。
ここは【学園】の食堂だが、ウェイトレスさんがいるのだ。
「はい、こ注文ですか?」
「はい、まがまがてぇてぃ2つで」
「はい、分かりました」
「ってもう略した文字も入ってねぇ」
エリトアとウェイトレスのやり取りにラプラスは突っ込みをいれるのであった。
「で、何か目的の場所はあるのか?」
やってきた飲み物を飲み、エリトアがラプラスに聞く。
ラプラスも飲み物に口を付け(上手いわこれ)と思いながらストローを咥えながらエリトアを見た。
「ああ、赤井はあとさんに会いたい」
ラプラスの言葉にエリトアはしばしの沈黙。
そして、「そっか」と一言呟いた。
「まだ、この学園にいるんだろ?」
そう、今はこの【学園】は春休みで、生徒も【学園】にいるホロメンも【学園】外に出ている。
前までは外には出れなかったらしいが、今はかなり自由になったようだ。
「ああ、はあとちゃんなら多分ある場所に行けば会えるだろうな」
「どこだ?」
エリトアの言葉にラプラスは身を乗り出して聞いた。
「調理実習室だ」
エリトアは重々しく答える。
「調理実習室?」
「そうだ、そこで赤井はあとちゃん。
いや、はあちゃまは今日も料理の研究をしているはずだ」
「分かった。
場所を教えてくれ」
「な、まて、おまえ、死ぬ気か!」
いや、死地に赴く人にかける言葉みたいになってる。
「いや、死ぬ気はないけど」
「なら、今はその時ではない事ぐらい分かるだろう」
「いや、だから大丈夫だって」
(一応、中身はホロメンだしな)
「分かった。
なら、もう俺は止めんが何が起きても知らないぞ
あと、1つだけ忠告だ。」
そう言うとエリトアは調理実習室の場所をラプラスに教えた。
「ありがとうな」
ラプラスはそう言って飲み物を飲み干す。
そして、ゆっくりと席をたった。
「おい」
行こうとするラプラスに声をかけるエリトア。
「ん?」
ラプラスは振り向き、エリトアを見た。
「生きて帰ってこいよ」
その言葉にラプラスは「ばぁか」と笑って答えた。
「ここが調理実習室か」
調理実習室の扉には何故か放射能マークが貼られていた。
「ん~?」
コンコン
ラプラスは扉をノックする。
「は~い」
中から返事がする。
「失礼します」
そう言ってラプラスはドアを開けて中に入った。
「ん?」
こちらに背を向けて料理していたのか、女性がこちらを振り向く。
「いらっしゃい」
そう言って笑ったのは間違いなく赤井はあと。
「えっと、はあちゃまさん?」
「ん?
わたしは赤井はあとだけど?」
ラプラスの問いに不思議そうに答えるはあと。
「そ、そうですか、すいません」
慌てて謝るラプラス。
「もしかして入部希望?」
「え?」
はあとに聞かれてラプラスは辺りを見る。
前の黒板に大きく料理同好会の文字が可愛らしく書かれている。
「あ、そのう、見学に」
「そっか」
ラプラスの言葉にはあとは笑顔で答える。
「うんうん、なら、そこに座って。
今からちょうど料理するところだったんだ。
せっかくだし食べてみて」
「は、はぃ」
はあとに言われてラプラスは席についた。
トントンとリズミカルになる包丁。
料理の途中だったのか、部屋には美味しそうな匂いが漂っている。
「なかなか新人さん来なくて寂しかったんだ。
久しぶりの入部見学者だし美味しいもの作るね」
トントンの音といい匂いのせいで何故か眠くなってくるラプラス。
(ああ、朝のまどろみの中聞こえる朝御飯を作る、包丁の音と落ち着く味噌の香りが…)
ラプラスはどうしても睡魔に勝てない。
今の覚醒ラプラスに状態異常なんて効きはしないはずなのに。
(なんで?
眠たくなるんだ?)
その時、エリトアの言葉がふと脳裏にかすめる。
彼は言っていた。
「眠たくなってどうしても寝たいと思っても、決して寝るなよ。
そこが天国と地獄の分かれ道だ」
しかし、ラプラスはその眠気に勝てず、居眠りをしてしまった。
ダン!ダン!
「んあ?」
ラプラスは頭を振り、居眠りから起きた。
はあとの前の窓からはさっきまで青空が広がった景色が見えていたが、今は夕方なのか少し薄暗く、夕焼けの光が中に差し込んできていた。
まだ、明るいからか教室の電気は付いていない。
そのせいで教室の中は夕焼け色に染まっていた。
「ごめんね、またせちゃって」
そう言ってはあとはお皿を持って振り向いた。
そこにはさっきまで可愛らしい赤色のエプロンを着けていたはあとではなく。
ハートマークの眼帯を付け、黒いエプロンを着けたはあとが立っていた。
(え?)
ラプラスは恐怖を一瞬覚えて立ち上がろうとするが、何故か席から立つことが出来ない。
慌てて椅子を見るラプラス。
しかし、椅子には何もされてない。
(なんで?
なんで、椅子から立てないんだ?)
ラプラスは少しパニックになる。
「どうしたの?」
はあとがお皿を持ってラプラスの横に来る。
「はい、お待たせしました」
そして、ラプラスの前に置かれるお皿。
そこには真っ黒になった謎の物体が乗っていた。
「え、えっとこれは?」
ラプラスは怖々とその皿を見ながら聞く。
「これ?
生きのいいタランチュラが手に入ったからぶつ切りにして揚げてみたの。
ちょっとこげちゃったけどねぇ」
「ええ~」
震えるラプラス。
しかし、手はラプラスの言う事を効かず勝手にフォークを持とうとする。
「ヤバイヤバイ」
ラプラスのフォークを持つ手がゆっくりと料理を突き刺した。
そして、ゆっくりと料理が口元に。
「ん~ん~」
なんとか食べないように口を塞ぐラプラス。
しかし。
「ほら、きちんと食べないと」
とはあとが口を無理やり開けようとする。
「ま、待って」
すごい力で口を開けられるラプラス。
「さぁ、召し上がれ。
はあちゃま特製タランチュラの丸焼きだよ。
キャハハハハハハハハハハ!」
そう、耳元ではあちゃまの言葉が聞こえたところでラプラスは今度は寝るのではなく気を失った。
「うわぁー!」
がばっと起き上がるラプラス。
「ここは?」
ラプラスは周りを見る。
そこはさっきの調理実習室ではなかった。
空が見え、星がたくさん光っている。
「起きたんだ」
「え?」
その声の方をラプラスは見る。
そこには立って星空を見上げるはあちゃま?
「はあちゃまさん?」
そう呼ばれはあちゃまはラプラスの方を向く。
(その姿ははあちゃまさんじゃない。
だけどはあとさんでもない気がする)
「ほら、ラプちゃんも立って見上げてみたら星空綺麗だよ」
そう言われ立ち上がるラプラス。
(え?
ラプちゃん?)
ラプラスは慌てて自分の体を見る。
そこには確かにロックではなくラプラス自身の体だった。
「なんで?」
「さぁ、何ででしょう」
ラプラスの方を向くはあと。
「あなたは誰なんだ?」
ラプラスは目の前の誰かに聞く。
「わたし?
わたしは赤井はあとであってはあちゃまでもある。
だけど赤井はあとでもはあちゃまでもない」
その言葉にラプラスは【学園】に来る前に見た赤井はあとの資料で見た項目を思い出す。
「第3人格」
「そう、ラプちゃん。
いや、ラプちゃんと共にいるわたしと同じ超AIと言えばいいのかな?」
はあとの言葉にラプラスはふぅと息を吐く。
「やっぱり分かるんですね。
同じ存在だと」
「まぁね」
さっきまでおどおどしていたラプラスは、まるでスイッチを切り替えたように落ち着いた。
「それで、どうするのですか?
他のホロメンに報告しますか?」
ラプラスははあとに聞く。
「ん?
そんな事しないよ。
わたしはあくまではあとちゃんの予備人格。
表だって動くのはこの世界が危ない時だけだから」
そうはあとは笑う。
「では、私達が行っている事はこの世界に影響ないとでも?
私いや、ラプラスが目指しているのはこの世界の征服ですよ?」
「ええ、なんの影響もないわ。
むしろ、それはこの物語には必然の事だから」
「物語?」
はあとの言葉にラプラスは聞き返した。
「ええ、この章の最後の物語にはね」
「何を知っているんですか?」
「何も?
ただ、わたしは成り行きを見守るだけ」
ラプラスの言葉にはあとはまた星空を見上げる。
「分かりました。
あなたが何もしてこないなら問題ありません。
私達はこのまま作戦を続けますので」
ラプラスはそう言って周りを見る。
ここは学校の屋上のように見えるが、柵の外は全てが星空。
(特殊な空間か)
屋上の出入り口の扉がラプラスの背後に見える。
そこの扉に違和感がある。
(あれがここからの出口)
ラプラスはそう感じて出口にゆっくりと歩く。
「そうそう、1つだけ」
出口に向かうラプラスの背後からはあとが声をかけてくる。
「なんですか?」
「わたし以外にもホロメンの中には3人、あなたと同じ超AIがいるわ。
その3人はわたしと同じ考えとは限らないから」
「ご忠告どうも」
ラプラスはそう言うと出口の扉に手をかける。
「わたしは応援してるよ」
その声を聞きラプラスは屋上?を出た。
そこは廊下だった。
窓から外を見るとまだお昼少し過ぎた頃か?
背後を見ると調理実習室。
ラプラスは普通に調理実習室から出た感じになる。
姿を確認する。
(ロックの姿だ)
ステータス画面の推し一覧を確認すると赤井はあとのマークが点灯していた。
(ミッションは終わったみたいですね)
ラプラスはそう思い、周りを見る。
誰もいない。
ラプラスは目の前にワープホールを作り出してその中に入った。
ワープホールを出た先は真っ暗な通路だった。
今はもうロックの姿ではなくラプラス本来の姿だ。
ラプラスはまっすぐ歩く。
目の前に黒い扉が見える。
ゆっくりと開けるラプラス。
部屋は暗かったが目の前には大きなソファがあり、その奥ではテレビが付いていた。
「また、真っ暗な部屋でテレビ見て」
そう言ってラプラスは部屋の電気をつける。
「いいだろ?
たまにはのんびりしたいんだ」
そう言ってソファに寝ていた人物が起き上がる。
大きいソファのせいで誰が寝ていたのか分からないが、明らかにソファから大きな2本の角が見える。
バサ
ラプラスの頭からカラスが飛び立つ。
するとまるで操り人形の紐が切られたようにラプラスがその場に倒れた。
カラスはソファを越えその大きな2本の角を持つ人物の頭に乗る。
「ごくろうさん」
頭にカラスを乗せたその人物は上を見ながら言った。
その人物は紛れもなくラプラスだった。
「ふぅ、危なかったですよ。
まさか同類がいるとは思いませんでしたからね」
「はは、吾輩もびっくりした」
テレビには【学園】が映っていた。
「あと、3人いるって言ってたね」
「ええ」
「邪魔しないでくれるといいんたけど」
そう言ってラプラスは手に持つポテトチップスの袋から取り出し食べる。
「邪魔された時はその時です。
私とラプラスがいれば負けません。
例え相手がオリジナルだとしても」
「はは、強気だね。
吾輩そう言うの嫌いじゃないよ」
そう言って笑うラプラス。
頭のカラスはふんと横を向く。
それを見て笑うラプラス。
そして立ち上がる。
手を横に振ると部屋着のラプラスの服は一瞬でいつもの服へと変わった。
「さ、幹部達に報告に行きますか。
なかなか帰ってこないと思われると嫌だし」
そう言ってラプラスは部屋のドアの方に向かう。
「ま、今回動いたのは私ですけど」
「分かってるってありがとうな」
ラプラスは頭の上のカラスにお礼をいいながら、部屋の扉を開け外に出る。
そして、ゆっくりと誰も知らない秘密の部屋の扉は閉まった。