モンスターハンターRebellion   作:ガルバディス

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私がインターネット上に公開する小説の処女作となっています。誤字脱字や読みにくい箇所も多いかもしれませんがよろしくお願いします。
それではメルティアでの旅をお楽しみください。


メルティア調査記録1「異竜ビレテクリエ」

奈落、それは世間一般では底が見えない深い穴を指す言葉であるが実際に奈落と呼ぶべき穴を目の当たりにした者は少ないだろう。しかしメルティア公国の管轄区域の中にはあらゆる物、生物が見えない底に流れ落ち続ける奈落「腐食林」が存在する。

 

私はこの腐食林に立ち入り、生息するモンスターの生態行動を研究するしがない一学者であり、この度はギルドへの調査報告も兼ねて調査したモンスターの記録をここに綴ることにした。

 

腐食林は位置する地域の気候上、乾季と雨季に分かれており、乾季は文字通り雨が降らない期間であり、比較的温暖な気候となるが雨季になると話は別で雨や雪が降り頻る極寒の地と化す。ここに生息する木々は雨季に入るとエネルギーの消耗を避けるため一斉に葉を落とすのだが、前述した大量の雨や雪によって増水した河川や湖の水が腐食林に流れ込むと帯水層に溜まり、その水の上に落ち葉の層が形成されてほとんど同じ位置に陸上と水中の生物が生息できるようになるという奇妙な特徴を持っている。

 

この特徴が腐食林における奇妙な生物を生む大きな要因となっており、私が心惹かれこの地に研究に赴いた理由にもなっている。ここに生息する生物は基本的に奇妙な外見、生態を持つものがほとんどだがその中でも私が特に奇妙だと思い、中心的に生態調査を行ったのは異竜ビレテクリエである。

 

【挿絵表示】

 

名前に「竜」とあるがその前に異なるという意味がついている通り本種は竜盤目に属する生物ではなく、有尾目に属する列記とした両生類である。両生種と言えばザボアザギルやテツカブラといったモンスターが想起されるが、あちらは形態的にはカエルに近く、こちらはイモリやサンショウウオに近い形態を有している。

 

私がこのモンスターと出会ったのは初めて深部の立ち入り調査を行った際のことである。雨季の気温が低い中、防寒着を動ける限界まで着込んだ私は滑る足元に注意を払いながら仄暗い穴の底へ向かって降りていた。私達調査員は降りていく際に来た道を見失わないよう定期的に赤い旗を立てて目印をつけるという決まりがあり、私が何度目かの旗を設置しようとした時、背後から荒い鼻息を吹かしながら何かが近付いてくるのを感じた。しまった、こんなに近くに野生動物がいたのに気付かず背を見せてしまった。私はバクバクと鳴る心臓を落ち着かせながら恐る恐る背後を振り返るとそこには、大人しい草食種のガボスチルスがいた。ホッと胸を撫で下ろした私は手で払うようなジェスチャーをしつつ旗立てに下ろした荷物の方へと向かうとガボスチルスも興味を失ったのかそっぽを向いて歩き出した。

その時、ザザザと水が動く音が別の方向から鳴る。明らかにガボスチルスのものではないと気付いた私は刹那、近くの岩壁を背に荷物を前に背負って急所を守る警戒態勢をとった。ガボスチルスもまた場の空気が変わったことを察知して足を止めて周りを警戒し始める。ザザザザ…水音が先程より近くなっているのを感じる。この音の出処はと辺りを観察した時私は異変に気付いた、水音が近付いてくるのに自分達の周囲には水辺が一切無いのである。周りに私達以外の生物が近付いてくる姿も見受けられず、見えない生物の襲撃に私は思わず唾を飲み込んだ。ザザザザッ、水音がついに私達の目の前まで来たかと感じた瞬間、その音はピタッと止まった。先程まで響いていた迫る音が嘘の様に静寂が辺りを包み、私は息も吸えない緊張感に襲われた。その静寂を破ったのはガボスチルス、何を感じたのか荒い鼻息を上げ全力で走り始めたのである。しかし私は気付いた、不自然な地面の隆起があれを後ろから追っていることに。そう、私達が地面だと思っていたものは水上に溜まった落ち葉だったのだ。それを知った私はこれ幸いと元来た道をかけ登り、安全な位置からその終始を見守った。

 

私達がいた場所から100m程離れた所だろうか、ガボスチルスはついに背後の隆起に追いつかれてしまった。せり上がったその隆起はガボスチルスを転倒させると落ち葉を裂いて水場の主の威容を顕にした。頭部は平たく、まるで肉でできた葉のようでユラユラと左右に黒いヘドロを滴らせながら揺れている。体は全体的にぬらりと取っ掛りが無い滑らかな肌を有し、そこから長く先端が仄かに光が点滅する奇妙な尾を携えていた。しかし、そんな特徴より私が真っ先に感じた印象は「大きい…」と口から漏れてしまう程の巨大さである。ここから距離があるにも関わらずその大きさは私の動きを止めるには充分な恐怖を与えた。あれは優に20mは越えるだろうか、並の飛竜であれば凌駕するこの体躯はガボスチルスがまるで今朝食べたパンかと錯覚するかのようであった。いや、この竜にとってはパンのような軽食に等しかったのだろう。先程まで項垂れていた首を持ち上げると口をぐわり、と開いたのだが様子がおかしい、開いたその口は明らかにその頭部からは想像が出来ない程大きかったのだ。それはまるで袋が口を開き、中に物を入れるかの如くガボスチルスに覆い被さった。

 

ぶえぇぇぇぇ!!

 

被食者の絶叫が静寂に包まれていた水辺を狩り場へと変え、隠れていたウロコウモリ、昆虫達も一斉にその場からけたたましい羽音を放ちながら飛び立ち逃げ始めた。依然絶叫を上げながらガボスチルスは抵抗しているが水辺の主が逃げるのを許すはずもなく、覆い被せたその口をゆっくりと閉ざしていく。その光景は蛇が鳥を丸呑みにするものと近く、逃げようとする悲鳴は次第にくぐもり、そして最後には微かな断末魔となって竜の腹の中に収まった。口からはもはや獲物の血か濁った水か分からない赤黒い液体をボタボタと漏らしている。それはこちらを一瞥すると今日は見逃すと言うかのように再び水の中へと帰っていった。私はこれ以上の深入りは命に関わると判断し、上層にある研究基地へと駆け戻った。

 

ビレテクリエとの出会いはこれで終わりとなるが、私はその後何度もこのモンスターと遭遇することになった。しかし、それはまた次の機会に綴るものとしよう。

 

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