モンスターハンターRebellion   作:ガルバディス

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この話は前回の続きとなっています。まだ慣れないため誤字脱字はご容赦ください。それでは、メルティアの旅をお楽しみください。


メルティア調査記録2「異竜ビレテクリエpart2」

今日メルティア中央ハンターズギルドより早急に追加報告を行うようにとの通達が来た。中央の連中は人使いが荒いと見える。とは言えギルドのお抱え学者として派遣されている身として役目は果たさなければならない、そんな訳で今回も調査報告の傍らモンスターの生態調査記録をここに綴ろうと思う。ただ今回は生態調査記録と言うより、事件簿とでも呼んだ方が良いと言える様な記録となっている。しかし、この様な最期を向かえる調査員や学者も多い事を認知して貰いたいためこの記録を残す。

以前話したように私は腐食林を中心にモンスターの生態調査を行っている。前回はビレテクリエとの遭遇を語ったと思うが、今回は2度目の遭遇時に観察することができた行動について記していく。

 

それは比較的浅層の小動物や小型モンスターについてフィールド調査を行っていた時の話。私は以前の事件があって以降、危険なモンスターに遭う確率が低い表層から中層の調査に志願するようになった。今になってみて分かるが、危険から遠ざかろうと浅い所に逃げてもこの地において表層も深層も危険性の違いだけでどちらにせよ命の保証はないことに変わりは無い。しかし当時の私はあの化け物を目の当たりにして完全に萎縮してしまい、とにかくモンスターと遭わない方向に行きたくなってしまったのだろう。事実浅層では大型モンスターが現れることはそう多くはなく、出会うにしても小型の肉食モンスター、大規模な群れでもない限り集団で立ち向かえば撃退は可能だろう。深層に比べれば滑落の危険性は高いが、逆に言えばそれだけに注意すれば良いのである。

かくして私は計5人の研究チームの一員となり、表層に生息する生物の行動調査を行う事になった。その日は雪が風に混じった半ば吹雪に近い天候で、こんな日は特に滑落事故が多い日ともあり防寒着にスパイク靴を履いた完全防備で歩いていた。この表層には先日捕食されたガボスチルスや小型肉食モンスターのシーラブネス、最も大きいものでもフィロヴォースという甲虫種が迷い込むかといった程度で、どれも近付かなければ攻撃をしてこないため何の心配もいらない、このまま安全に調査をして帰ろう、そう思っていた。

 

しかし、悲劇は突然に起こった。

 

チームの1人が暇に任せて大穴に向けて携帯食料の余りを投げ捨てたのである。その男はその場でチームリーダーからこっぴどく叱られることとなった。30分程は経っただろうか、そう考えていると叱責の最中私は嫌な音を聴いてしまった。

 

ぬちゃり…

 

奈落に流れ込む滝の水音とは違う、何かヌメったものが蠢く音。

 

ぬちゃり

 

その音は遠くに、しかしこちらに近付いてくる

 

ぬちゃりぬちゃり

 

今度はハッキリと聴こえた、私は咄嗟に隣のメンバー達の肩を揺さぶりながら声を掛ける。「おい、何か近付いてないか?」すると不審そうな顔で「小型モンスターか何かでしょ?」と返す。

 

ぬちゃりぬちゃりぬちゃり

 

近付く音が早くなる。何かが奈落の底から這い上がる。確実にこちらを認識して向かってくる。今度の音は隣のメンバーも聴こえたようで、引きつった顔で危機感を顕にしながら「リーダー、何かモンスターが近付いてます!撤退の準備を!」と大声で警告した。かく言うリーダーと叱られていたメンバーはポカンとした顔をしながら普段では有り得ない状況を理解するのに暫し時間が掛かったようで、数秒後にリーダーは「来る方向はどちらだ」と状況を把握し始めた。「穴です!大穴の底から何かが近付く音が!」私達は荷物を抱え撤退準備をしながらその大穴を指さした。リーダーはその方向に足を運び、崖際から大穴の底を見た。

 

ジュルん

 

それは一瞬の出来事だった。崖の下から現れた巨大な袋状の何かがリーダーの上半身を包み、数メートルも上の高さに持ち上げたのだ。包み込まれた部分からくぐもった悲鳴が聴こえ、足を苦しさと痛みに任せて死にかけの虫の様にジタバタと振っていたが、閉じていた袋が再び開くとその中へと全てが消えていった。あぁ、この音は、獲物の悲鳴が断末魔へと変わるこの光景は…デジャブではなく、ついこの間見た自然の摂理。それはぬらりと崖から体を乗り上げて私達と相対した。そして今日は見逃さんと言わんばかりにその大口を開けて威圧した。

 

先日私はこの竜がガボスチルスを食べる様子を蛇のようだと比喩したが、今日は私達が餌となる番のようだ、言うなれば蛇に睨まれた蛙の状態となってしまっていた。「ビレテクリエだ…」メンバーの一人がか細く声を上げる。それを合図に竜はのそりのそりとその巨体を左右に揺らしながらこちらににじり寄って来る。それに合わせて私達も一歩一歩逃げ道の方向へと後退し始めた。寄ってくるに従い、飛竜をも凌駕するその巨大さをヒシヒシと感じる。しかし、ここで恐怖に任せて逃げればこいつを刺激してしまい、全滅は必至だろう。そう考えた私達は息を止め、極力音を立てずに撤退を始めた、ただ一人を除いて。

 

「来るなぁ!!この化け物が!!」先程大穴に携帯食料を投げ捨てたメンバーだ。逃げ遅れたのか、荷物も持たず寒さか恐怖かも分からず震える手でナイフをビレテクリエに向ける。その声に反応し、こちらに向かっていた竜は踵を返して蛮勇な挑戦者を睨みつける。しめた!奴の視線は完全に逸れた、今なら走って逃げられる!「走れ!!」その言葉を皮切りに一目散に走ろうとしたその時である。

 

「待って!!」

 

残された3人のメンバーの内の一人が声を上げた。私達が足を止めて振り返ると、そこには宙に浮いた状態で目に涙を浮かべるメンバーの姿があった。何故だ、竜の頭は完全に別の方向を向いている。どうして、こちらに干渉が…その時、尻尾の先端が捕まったメンバーのリュックに張り付いていることに気付いた。吸盤だ、こいつ尻尾の先端に吸盤があるんだ。「ねぇ、どうして私浮いてるの?これってもしかして助からないの?」震える声でこちらに助けを求める。「リュックを捨てろ!!そいつはリュックを掴んでる!」私達の声を聴いて一瞬安堵の表情を見せ、リュックを外そうとした次の瞬間。「あ…え…?」ふわりと一層高い所へと体が舞い上がったかと思うと地面に顔面から叩き付けられた。

 

ペキョッ

 

命乞いをする時間は与えられなかった、木の枝を折る音に近いその嫌な音は、目の前にある元同僚から鳴っている。即死だった。その首や腕、足はあらぬ方へと曲がっており、誰が見ても既に亡くなっているのことは明白だった。

 

ベキョッ、ベチャッ

 

それは亡くなっているにも関わらず何度も何度も上げては叩き付け、上げては叩き付ける行為を繰り返し、もはやどこまでが肉でどこまでが衣服であるのか分からない肉雑巾としか表現出来ないような惨たらしい状態と成り果てていた。飛び散る血は私の頬をなぞり、辺りには鉄臭い異臭が漂う。

一方ナイフを向けていた逃げ遅れたメンバーは果敢にもビレテクリエの前足にナイフを突き刺していた。「化け物がぁ!!くたばれ!!」私達はハンターではない、巨大な武器や銃器も持ち合わせない。そんな中で助かる方法は逃げるしか無いと言えるが、彼は錯乱してしまっていた。いや、目の前で既に顔見知りが二人亡くなっている状況で錯乱せずにいられる人間はそういないだろう。考えてみれば彼の行動はある種正しい反応だったのかもしれない。しかし、突き刺した現実はそう甘くなかった。垂れた首を上に上げ、大口を開け始めたのだ。先日見た捕食行動…その後どうなったかは言わずもがな、その男は上に広がる絶望を見てしまい腰を抜かして蛙のように地面を這うことしかできなくなり、そして容赦なく丸呑みにされてしまった。

 

ギアァァァァァ!!!!

 

耳を劈く絶叫、白い雪を赤く染める血飛沫、もはや目も耳も何もかもを遮断したくなる地獄絵図。私達はもう振り返らなかった。息を切らし、恐怖に動かない足を無理やりにでも動かして走った。背後からは私達に助けを求める声がする。男の絶叫によるものか、刺されたことによる怒りか、竜は先程にも増して体を動かし、暴れているのかこちらを追ってきているのかは分からなかったが、その地響きが足を伝わって体に恐怖を甦らせる。動け、動け、動け、動け!ここで足を止めれば自分も同じく腐食林のシミにでもなってしまう、動け!!

死にものぐるいで走っていると研究基地に辿り着いていた。他の研究員からはその場で何があったのかを聞かれなかった。自分達の状況を見て何があったのかを察してくれたのだろう。そしてその日は風呂に入って全てを忘れるかのように眠りについたのだった。

 

今になって考えてみれば、全ての元凶はあの携帯食料だったのではと私は思う。ビレテクリエは耳と鼻が利くモンスターであることは以前から別報告にて判明している。大方投げ捨てた携帯食料の匂いを嗅いで付着した人の匂いを覚えて餌にできるかを確認しに這い上がって来たのだろう。事実、この事件以降ビレテクリエが表層付近に出現する頻度が激増したことから他の個体も今回の個体の行動から人間を新たな餌の候補として学習してしまった可能性は高いと言える。

とは言え、元々ビレテクリエは腐食林の深層付近に生息するモンスター、携帯食料を投げ捨てたとしてもそこまで深い所に落ちるとは考え辛い。私はこの携帯食料が元凶であると考えるのと同時に”元々ビレテクリエが表層付近に登って来ていたのではないか”とも考えている。その原因が何であるかはまだ定かではないが、深層付近で生活しにくい環境になったと考えるのが自然だろう。

 

私は今現在、ビレテクリエの活動範囲と行動調査を行いながらその生活しづらくなった原因についての研究を行っている。また研究が進むか、中央ギルド様が報告を送ってこいと命令されればまた綴ることになるかもしれない。いつか来るその日まで私は筆を置き、研究に励もうと思う。

 

それではまたいつの日か。

 

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