皆さんガンプラ作ってて一度は自分専用機とか作って設定とか書いたりしません?僕はめっちゃします。
今回はちょっぴりそんなお話です。
βテストをした日から1年が経過していた。
新作ガンプラは作っておらず、バイトをして資金稼ぎをしていた。
「いらっしゃいませー」
商店街の小さな本屋さん。
たまたま、ガンプラを買いに模型店へ向かう途中にアルバイトの募集をしてるのを発見し、今はそこで働かしてもらっているのだ。
「1100円になります。どうもー」
お金を受け取り、袋に本を入れて手渡す。
土日は朝早くから商店街が閉まるまで店で働かしてもらっているが、10人来るかどうか。
「さっきの人すごい綺麗な人だったけど…あんな人でもガンプラ作るのかな」
買って行かれた本は月刊ホビージャパンで、主にプラモデルの作例などが掲載されている物だ。
ガンダム、ガンプラは男のものだけじゃない。
大人から子供まで、老若男女問わず愛されるコンテンツだ。
見た目で判断なんてのはこれに限らず、するべきではない。
「アオノくんや、今日はそろそろ店じまいするっぺから帰んな」
「まだ定時じゃ…。わかりました」
レジから離れて、散らかってる部分を直し…直すほどのものもない。
「今日は食べに行くからな、早めに閉めちまうんじゃ、人こんしの!はっは!」
と、言うわけでいつも商店街の光が少なくなってバイト終わりに通うことができなかった模型店へ行くことが出来る。
ドアを開けて、模型店へ入ると今にも崩れそうなプラモタワーのビル群がリュウザキを迎える。
行きつけの模型店は一般販売されてる物以外にもネット通販限定(プレミアムバンダイの)商品も置いている。少々お高いけども。
「溜に溜めたお金はこのために!」
プレバン品は棚に並べられており、カラーの箱以外は商品ページの写真が貼られてなんのガンプラか一眼でわかる工夫がされていた。
宇宙世紀系、アナザー系……中にはガンプラ以外のプラモもいくつか置いてある。
「大部分はプレバン品使おう」
ぼそりとつぶやいてはピクシー、ガンダム4号機、マドロックを積み重ねてレジへと進む。
「んーー、全部で1万300円だね、まいど」
少々お高い買い物ではあったが、一般販売に比べて再販率が少ないプレバン品は倍の値で販売されてる事が多い。
リュウザキはすぐに帰宅して、買ってきたガンプラを開封して説明書を並べる。
「おりゅうさん何をしてるの?」
少女が顔を覗かせて、少年の手元を見ている。
「いろんなガンプラ作って気づいたことあるんだ〜!」
ジムガードカスタムの四肢を外して、オリジン版のガンダムの四肢に付け替えて尚且つ頭もガンダムに変えてみせた。
「違うガンプラなのにくっついちゃった!」
「同じ大きさのパーツならなんでも付けられるんだよ!武器だって!」
陸戦型ガンダムの100㎜マシンガンを右手に、左手にはオリジン版のジムの盾を持たせてみせた。
「武器も違うの!すごい!」
「こういうのをニコイチとかミキシングっていうんだって!本に書いてた!」
机の上に置かれてる本を少女に手渡す。
やや大きめのホビー雑誌の為、まだ小学生の2人には大きすぎるサイズだった。
「とってもかっこいい!おりゅうさんのガンプラ!」
本を抱きかかえながら、いろんなものが組み合わされたガンプラを、目を輝かせながら少女は見つめてる。
褒めてもらえる。
それは幸福だった。
とっても、嬉しいしもっとすごいものを作りたいという向上心を与えてくれてた。
はずだった……。
——棚に並ぶ完成品のプラモを眺めて、使えそうなパーツを探す。
「ストライクと、ガンダム…いけるかも」
棚からストライクガンダムとオリジン版のガンダムを取り出して、机に並べる。
「また作ってやるからな…お前達は一緒にスタートラインに立つんだ…!」
ストライクからは肩から下の両腕を、ガンダムからはヘリウムコアを外した。
「乾いてるかなぁ」
トコトコと窓際へ向かい、塗装していたピクシーの胴体を確認する。
まだ、乾いてなさそうだった。
「ガンダムマーカーでも数分じゃ無理か」
そう言い放ち、マドロック未完成の肩と先ほどのストライクの腕をくっつける。
マドロックの前掛けにガンダムのヘリウムコアを接着する。
4号機の脚にピクシーの靴を取り付けて、バックパックは4号機の物に白いビームサーベルの筒を装着させる。
頭部はマドロックをそのまま使うつもりだったが…。
「への字はいるよなぁ」
マドロックは一年戦争系では珍しいダクトレスのマスクをしている。
自分でモールドを彫るか、他のキットからマスクを持ってくることで、いつものガンダム顔になるが。
「ストライク、お前に決めた」
頭を分解して、目と顎の赤いパーツとマスクのパーツだけ抜き取って、ピンを切り落とす。
マドロックのヘルメットの中もそれに合わせて中を切り、パテを少し盛って接着させる。
「くっせぇ…!!」
扇風機を窓の方へ向け、付ける。
無理やりそれで換気を行うのだ。
「あとは乾いたら組み付けるだけだし、武器も作るか」
そう言って手につけたのは、ジャンク品と書かれた箱だった。
そこには、作ったガンプラで余った武器類がごちゃ混ぜに入っている。
当然種類は分けられていないので、適当に手に取っては蓋の中に入れるを繰り返していた。
「お、これ使えそう」
サンダーボルトの連邦系フルアーマー用のラージシールドだ。
「オリジンのあまりも確か…あった!」
ジャラジャラと音を立ててながら箱を漁り掴んだのはオリジン版ガンダムの前期型ビームライフル。
先ほどパーツを抜き取られたガンダムは中期型だったので不要な物ではあるが、こうして別の箱で保管しておく事で、使える時が来るのだ。
「ライフルはまぁ、手を加える必要ないとしてシールドは少しいじるか」
オリジンシールドのジョイントを取って、接着剤でFAのラージシールド裏に接着させる。
「オリジンみたいに上下を好きなタイミングで反転させるのは出来ないけど、かわりにグリップを掴むことができる!」
扇風機を消して、窓を閉め、パーツ類を机の上に置き、ベッドへ寝転ぶ。
「完成は明日のバイトが終わってから」
朝目が覚めて商店街の本屋へ向かう。
いつものように裏口から入り、荷物を下ろしたところで、店主がやってきて不思議そうな顔をしていう。
「あ、この店昨日で店じまいするって言わなかったっかの?」
「店じまいって、え、廃業ですか?!」
リュウザキはそうとは聞かされていなくて驚いた声を出す。
「給料はちゃんと昨日の分もつけてあるから、安心せいな」
「は、はいぃ」
バイトのつもりでいた気分だったので、途端にやることがなくなったために、予定がガラ空き。
そんな時にふと、作りかけのガンプラのことが脳裏によぎり、それだ!と言わんばかりにそそくさと家に帰る。
机に置かれたバラバラのパーツ。
それを胴体に両腕、腰、脚と付けていき、最後に頭をかぶせる。
「完成…と」
78-2に似たガンダムが机に立つ。
リュウザキのオリジナルガンプラの誕生だ。
「よし!我慢してたGBNをやるぞー!」
さっそく名もなきガンプラをケースに入れて家を飛び出す。机に矛と盾を置いて。
GBNが正式サービスを開始して、初めてログインしてから、次に来るのはオリジナルのガンプラを作ってからと決めていた。
「お、リュウザキくん。久しぶりだねえ」
ゲーセンの店員さんは明るい笑顔で出迎えてくれた。
「ガンプラ、完成したのかい?」
「ええ、一応ですけどね」
少し恥ずかしそうに答え、筐体が置いてあるスペースへと入る。
10個の個室があり、その中にはGBNを遊ぶための設備が整っているのだ。
「一応予約制だったりお金取るんだけど、βテスト協力してくれたおかげで…まぁ助かったから今回は特別にね」
前と同じように座り、スマホをセットして、筐体にオリジナルガンプラをセットする。
筒状のそれは、扉を閉じてガンプラを読み込む。
VRゴーグルをかぶって、楽な姿勢で椅子にもたれる。
さぁ、ビルドネットワークへ。
目が覚めた場所は、見覚えがない施設。
「試作機のテストパイロットだな?」
「え、試作…?」
状況が把握できない。
声をかけてきた男も何者かもわからない。
自分に声をかけてきてるのは確かだし、テストパイロットというのもおそらく自分なのだろう。
「そう、です……?」
「試作機のテストを行う、こい」
無愛想な男の後ろについていき、格納庫らしき場所へと辿り着く。
赤い装甲のペイルライダー、ヘビーアームズ、ドートレスなどが立ち並んでいた。
そんな中、トレーラーの上に乗った白いMSがいた。
自分のガンプラだ。
「あの白いのを動かしてもらう」
「わ、わかりました!」
よいしょよいしょと、登ってコックピットに入る。
「同じだ」
操作レバーは、β時代に動かしたガンダムと同じ物だった。
プレイヤーの乗るものは全部共通してるものなのかは定かではないが、リュウザキが扱うMSは前も今も連邦系だったので、変わりがないのかもしれない。
「動かしますよ」
腕を大地につけ、立ち上がる。
「左手に曲がり、訓練エリアへ迎え」
がしん、がしんと歩いて指示通り行動する。
コンクリートで整地された場所。
凹凸があり、的のような物も置いてある。
「使えるかどうかを試すだけだ、動かして見せろ」
足が動いたのなら問題ないのでは?と疑問。
それを言って仕舞えばおしまいではと思いつつもレバーを操作を行う。
「第一挙動」
両腕を上げ、腕に異常がないかの確認をした。
しっかり動く。
「問題はなさそうだな、走ってみてくれ」
大地を蹴り、走る。
道に沿って走るために、スピードを調節して曲がったり、段差はしっかり乗り越えるようジャンプしたりもする。
「前のMSよりも動きがいい。
次は……」
男が次の課題を伝えようとした時、通信に障害が生じた。
「ミノフスキー粒子か…!」
基地から警報音が鳴り響く。
「なんだ?!通信が繋がらない!」
辺りを見渡していると、上空から何かが降り、目の前に立つ。
AEUイナクトだ。
「新型の情報は確かみたいだな、ガンダムタイプか」
リニアガンを背中にマウントして、ソニックブレイドを展開させる。
「機体は、頂く!」
「来るのか?!」
突き刺さんとする腕をいなし、後方へ下がるガンダム。
決して逃さないイナクトは何度も何度も突きを加える。
「観念しろ!」
コックピットを捉えられたその腕は、勢いよく向かってくる。
「うおおおお!!」
手首を掴み、空いてるてでビームサーベルを抜き取って。
「ビームサーベル?!」
逃げるイナクトの手を離さず、斬り落として見せた。
右腕を失い、撤退しようと飛行モードへ変形するが。
「逃がすものか!」
走り、段差を蹴って、イナクトをビームサーベルで両断。
地面に着地すると、イナクトは爆散した。
「チュートリアルなら、僕にだって…!」
立ちあがろうとした瞬間に別方向からビームが飛んできて、右肩を掠める。
「な?!別のがいるのか?!」
「……ますか!…聞こえますか?!ハロロ3型です!この世界ではプレイヤーがたくさんいて、チュートリアル中に乱入される時もあるのです!」
ノイズ混じりの声から、しっかり聞き取れる音声になる。
「でも安心してください!味方もすぐにきてくれます!」
「ビームを撃ってきたのは…」
カメラを拡大して視認する。
金色のガルバルディβがいた。
かなり目立つその黄金のボディは、太陽の光を反射させて、その存在感をアピールしている。
「こいつで26機目だ!」
ビームライフルを構えるそれは、ガンダムに照準をあわせる。
「やるって言うのか?!」
ビームサーベルを振って威嚇し、相手を睨む。
今にも撃ってきそうな、金色のMSは……。
ガコンッ!と鈍い音と共に機体がよろける。
「ちっ!もう増援か?!」
狙撃用ライフルから、煙を吹いていた。
それを捨てて、ガンダムの方へ近づく機体、それはヘビーアームズであった。
「金色のギル!初心者狩りもそこまでだ!」
背中からビームガトリングを取り、ガルバルディへと狙いを定める。
「蜂の巣にしてやる!!」
ガガガガガガ!と音を立て、強い光を発して金に輝くMSを襲う。
しかし、逃げるも防ぐもしない。
正面からまともにそれを全て受け流してしまう。
「金を装甲にしてるんだから効くわけないだろがよォ!!」
反撃と言わんばかりに、ヘビーアームズへビームを放つ。
「まずっ?!」
「みえた!!」
2人の攻防を見てるだけだったガンダムが、ビームを、ビームサーベルで弾いてみせた。
「今何を?!」
「接触回線、聞こえますね!?」
驚くヘビーアームズのパイロットへそのまま言葉を続ける。
「敵は”絶対に攻撃を避けない”のが今のでわかりました。ガトリングで足止めしつつミサイルで……。」
「なるほど!よし、やるよ!!」
ガトリングをもう一度、胴体を狙って放つと同時に、両肩と脚部に装備されているミサイルのハッチが開きミサイルが飛び出す。
「実弾混じりだろうと!!」
ガルバルティは避けない。
ガトリングのビームの雨に混ざるミサイルが、全弾命中し、煙が立ち上る。
「効くわけないだろ!!
……なっ?!」
煙から見える発光、緑の目はヘビーアームズだが黄色の目をしたガンダムの姿がいない。
「僕はここだ!!」
ガシリと背中から、手を伸ばして顎を掴む。
そして、左手に持ったビームサーベルを展開させる。
「アイツの攻撃は囮だったのか!!」
そう、ガンダムから注意を逸らすための囮で、初めからダメージを与えることは考えていなかった。
「確かに装甲の強度はすごいし、集中砲火し続ければ熱をもって柔らかくなるとも一瞬考えたけど…ここなら!!」
左腕を上げ、サーベルを逆手持ちにして顎を上げられたガルバルティの首に突き入れられる。
「いくら表面が硬くても、稼働部まで同じ加工は無理だったようだな!!」
火花を散らし、ガルバルティはその手に持っていたビームライフルを落とした。
「オマエ…そのガンプラの名前は、なんて言うんだ?」
「名前……。」
目を閉じて、思い返す。
作った時に、名前なんて考えていなかった。
オリジナルなんだから、自分がつけなきゃいけない。
自分のなのだから。
少女がガンプラを指差して聞いてきた。
「名前なんて言うのにするの?」
少年はポカンとした表情をして、なんで?と言いたげだったため、少女が言葉を続ける。
「自分の子に名前をつけない親なんていないよ!おりゅうさん、名前つけよ!」
うーーんと、顎に手を当て考える。
「新しいガンダムが始まっても、被らない名前!!」
その言葉を聞き、あっと思いつき口を開いて答える。
それは……。
「ネームガンダム……。」
「へ……いい名じゃねぇか…覚えとくぜ」
ビームサーベルを引っこ抜いて急いで離れると、ガルバルティは爆発してしまった。
動力部に触れてしまったのか、または自爆したのかはわからない。
「すごいな君!あんなの倒しちゃうなんてさ!」
肩を叩いて、褒める。
「ま、まぐれですよ!
関節とかってABSでも動かすの大変な時あるしそれと同じかなって」
たいしたことはしてないと言わんばかりに答えるリュウザキは、基地の格納庫の方へと戻る。
それを追って、横並びでヘビーアームズも歩く。
「俺、ユウキって言うんだ。よかったらフレンドなってくれない?」
「リュウザキです、僕でよかったら…いいですよ」
操作パネルでフレンド交換をして、MSをハンガーに戻す。
コックピットから降りてお互いに顔を合わせる。
「よろしく、リュウザキくん!」
「こちらこそ、よろしくです!ユウキさん!」
拳と拳を軽くぶつけて、別れを告げる。
こうしてリュウザキは正式にGBNデビューを果たしたのだった。
—次回「初めてのミッション」
対人ゲームで初心者狩りはやめようね!