「はぁー」
最後に不吉な加護をつけられて有無を言わせず転生させられた男性は深いため息をついた。
「まあ仕方ねぇ動くか」
転生時に放られたことで頭を打ち仰向けになっていた上体を起こす。
周囲を見渡すと割れた窓ガラスやボコボコに四角く穴が空いている壁が目に入る。
どうやらここは空き家のようで人の気配はない。
次に持ち物や自分の状態を確認する。
服装はTシャツとジーンズだが、Tシャツは前面がミニキャラのノーデンスがトライデントを構えていて後面が蝙蝠の羽と牛の角、長い尻尾を持った全身真っ黒の人型で顔がない化け物が描かれていた。
持ち物はスマホと財布だけがあり、どちらにも同様のミニキャラがあった。
「なんだこれぇ」
Tシャツとスマホと財布を見て最初に出た感情は困惑だった。
スマホを起動するとパスワードを求められる。
どこかに数字が無いかと探すとTシャツのトライデントに「9111」とあったのでまさか、と思いつつも入力すると開く。
苦虫を噛み潰したような表情をしているのが自分でも分かった。
スマホは転生する前とほとんどが同じだったがLINEを開くと連絡先が全てなくなっており代わりに『のーでんす』というアイコンがイルカの“友達”がいた。
それを見た男性はもう苦笑するしかなかった。
そしてメールが来ていたのでとりあえず開いた。
『わしの転生アフターケア』
『優しいわしはお主のために授けた能力の説明をするぞい!』
『まずはスキルじゃお主には二つとも授けた』
『一つ目は
これはお主が知っておる通り目にも留まらぬ光速での移動・攻撃を可能とする異常性じゃ。
使うときは体中に雷のような痣が広がるようにしておいたぞい。』
『二つ目は
これは自身の存在を他人に一切認識させず、時が経つにつれて人の記憶から存在した事実や接触した経緯が消えていくという異常性じゃ。
意識して使えば一瞬で消すことも可能じゃがな。
じゃがもう一度関わりを持てば相手も思い出すことが出来るぞい。
そしてこれはON/OFFの切り替えが無く常時展開型だからそこを頭に置いておくんじゃぞ。
もう一つ言えば記憶には残らぬが記録には残るから気をつけるんじゃぞ』
『最後に加護についてじゃ。
これはお主が原作から離脱できぬようにする為のものじゃ。
効果は苦労する事や面倒な事に高確率で直面するというモノじゃよ。
これは
まあ、お主からすると祝福というより呪いかもしれんがな(笑)』
『連絡先はそのままにしておくから頑張るんじゃぞ!』
『それじゃあ幸運を祈っておるぞい!』
メールを読み終わった男性は前回とのあまりのギャップにFXで有り金を全部溶かした顔をしながら思考停止していた。
少し経ち思考を再開させる。
別人では、と考えても能力について説明しているから本人に違いないと答えが出る。
そしていくら考えても本人であることを否定できないので思考を放棄した。
頭を切り替えこれからを考える。
そして結論としてはこの世界がどんな物なのかを突き止めることを目標に建物の外へ出た。
▶︎▶︎▶︎
「特に目ぼしいもんはないなぁ」
男性はスマホでニュースを見ながら街を歩く。
『きらっとファンタジーサービス終了へ』『渋谷のモアイに像悪質な悪戯』『東都ベイカリータワーで狙撃、重傷者一名』『海響市で震度四弱の地震』『驚愕池袋で空飛ぶ自販機』などの見出しを飛ばしながら目につくものを探す。
そして何もないのを確認して次はマップを開く。
「ほーん、今俺渋谷にいるのか」
マップを拡大したりして周囲を調べる。
「前の世界と違うところはねぇなあ」
けれど地図上でも分かるような大きな違いは見当たらない。
自分のスマホの電源を落としポケットに入れる。
「無駄だと思うが俺が住んでたとこにでも行ってみっか」
男性はすることが何もないのでとりあえず思い浮かんだ所に行くことにした。
しばらくぼーっとして歩いていると路地裏の方から怒鳴り散らす声が聞こえ、何があるのかをこっそり見ると男二人が小柄な女の子に声を荒げて話をしていた。
話はよくわからないがとりあえず何かの情報が間違っていたらく男達は激しく興奮している。
無視することも出来たが能力の確認もしたかったのでいい機会だと思い助けに行くために歩を進めた。
前回のノーデンスは営業モードってことで許してね!
酔っ払い卓で知識の王がLINEやってたからノーデンスがやっててもいいよね!
9111は9匹の犬(11月1日犬の日)を示してるよ!
建物の四角い穴は持ち物のインパクトにより頭から抜けたよ!