私ーー
話をしようとしても怒鳴り声で遮られる。
逃げようにも出入り口が男達の後ろで難しい。
能力を使えば逃げられるかもしれないが一人は能力がパイロキネシスなので一面火の海にされると困る。
だがこのままここにいても状況は変わらないと思い能力を使おうとするとーー
「がっ!?」
「はぇ?」
男の片方が突然叫び声を上げて倒れる。
あまりの突然の事に思わず声が漏れてしまう。
背後の空間にはいつ現れたのか分からないが顔と腕に雷のような痣を付け両腕をポケットに入れた若い男性が立っていた。
横にいた二人目の男も気がつかなかったのか目を見開いていた。
けれどすぐに拳を構えて悪態を吐きながら前に突き出した。
「邪魔すんじゃn」
けれど男性は全く動かず肉薄する拳を一瞥した。
すると男は糸が切れた人形のようになり膝をついて前のめりに倒れた。
何が起こったのか理解できなかったが能力者ならば可能だと思い警戒する。
そして能力者ならば鈴音の情報を狙いに来たのだと思った。
男性はこちらに視線を戻す。
鈴音はここから逃げることだけを考え能力を使い次の行動を予測するーー
「っな‼︎」
ーーが気づくと目の前に立ちこちらを見下ろしていた。
自分の能力では目で捉えることができず逃げられないと理解して下唇を噛む。
どうしようもないので相手の出方を伺う。
「大丈夫だったか?」
予想していた言葉と違い呆気に取られたがすぐに男達のことだと理解し言葉を返す。
「は、はい。ありがとうございます」
それを聞くと男性は安心したように笑う。
その笑みからは敵意は全く感じられなかったので拍子抜けしてしまった。
けれど何かしらの能力は使っていたのでDゲーム参加者に違いないと思い名前を聞いた。
「えっと、何かお礼をしたいので名前を教えてくれませんか?」
そう言うと男性はいつの間にか消えていた痣のあった手を顎に当て空を仰ぐとたどたどしく答えた。
「…
▶︎▶︎▶︎
「えっと、何かお礼をしたいので名前を教えてくれませんか?」
男性はそう聞かれ言葉に詰まり即座に頭を回す。
(せっかく転生したならば別人という事にしたいなぁ)
(ならば名字は能力を頂いた日之影にするとして…問題は名前だな)
(なるべく似ている名前がいいが…うーむ)
(空洞と似てるとなると…空白?風穴?しっくりこない…)
(何もないということで虚無などはいいが名前にするとするなら…)
(能力だけを手に入れた偽物という意味も込めて[虚]にしよう)
「…
名前を言うと少女は一瞬訝しむような視線を向けてきた。
しかしすぐに戻り会話する。
「そうですか。私は柏木鈴音です」
「それでお礼はどうすればいいですか」
「いや、君みたいな小さい子にお礼されるようなことはしてないよ」
苦笑しながら答える。
「む、私はもう中学生です。失礼ですよ」
鈴音少し不快な表情を向ける。
「それは失敬。じゃあそうだなぁ…それくれるか?」
コートのポケットから出ているうまい棒を指差す。
「こんなモノでいいんですか?」
「ああ」
「ではどうぞ」
「ありがと」
そう言いながら鈴音は取り出して手渡す。
礼を言いながらそれを受け取ると手荒く仕舞う。
「ではこれで、本当に助かりました」
鈴音ペコリと頭を下げて去っていく。
虚はそれを見送ると倒れた男たちに目を向け状態を確認した。
生きていることを確認して二人を担ぎ上げながら戦闘の振り返る。
(結構上手く無力化できたな)
(
(まあ
(まあその辺も含め今後の課題かな)
(それにしても柏木鈴音か…どこかで聞いたことがあるってことはなんかの原作に関わるキャラってことだが思い出せんな)
考えをまとめながら二人を近くに偶然あったねじラーで縛って路地裏の奥に座らせる。
それを確認してやり切った感を出した後踵を返しその場を離れた。
レインの本名が柏木鈴音だと初めて知って驚きだよ!