朝の明るみが果てしない遠方からにじむように広がってくる頃、虚は肌寒い空気を感じ目が覚めた。
うつ伏せに倒れた上体を起こしなぜ床で寝ていたのかを思案する。
視線を彷徨わせると自分の近くにスマホが転がっていた。
スマホを手に取り起動する。
画面にダーウィンズゲームの画面が映し出され昨日の記憶が呼び起こされる。
その刹那虚の表情は信号機のように苦り切った表情に切り替えられた。
「…チッ」
思わず舌打ちが溢れ頭を掻く。
けれどどうしようもないので怒りを落ち着けようと大きく息を吐いた。
すると自分でも驚くほど簡単に怒りが収まる。
頭を切り替え画面を操作して情報を集める。
(このゲーム画面やっぱダーウィンズゲームか)
(やべぇな殺し合いとかできねえぞ)
(まずは自分自身の理解からだな)
(能力は【
(抑止…動きを止めるってことか?)
虚は立ち上がりキッチンに向かう。
棚からグラスを出し水を注ぐ。
そのまま能力を意識しながらグラスを持ったままひっくり返すと水がグラスに対して固定されているようになっており溢れることはなかった。
(なるほどなぁ)
(使い勝手は良さそうだが…効果範囲がどの程度かが重要になるな)
手に持っているグラスに目を向けるが依然として動きはない。
(効果時間はあるのか?まだわからねぇな)
頭を捻っていると存在を知らせるようにお腹が鳴る。
(そうだった昨日飯抜きだったんだ)
昨日を思い出し少し殺意が湧きそうになるのを抑える。
キッチンに備え付けてある電子レンジの中を見ると昨日温めた弁当が入っている。
もう一度あたためを押しリビングに戻る。
テーブルの下にあった座布団を引っ張り出して腰を落ち着け昨日から今までの情報を整理する。
(主人公の名前がカナメだっけ)
(苗字は…思い出せねぇな)
(確かクランを作っててメンバーが七、八人だったか?)
(くそ、もっとしっかり読んどけばよかった)
悪態を吐きながら思考を回転させる。
(俺の手札が三枚で一枚が謎札か…)
(当面の目標は謎札の能力解明と使いこなせるように練習だな)
(あれ?そういえば原作でのイベントっていつから始まるんだ?)
(えーと、渋谷のモアイ像の事件のーー
眉を顰めながら前世の記憶を辿っていると不意に携帯が鳴った。
明らかにLINEではない通知音に首を傾け開く。
するとそこにはダーウィンズゲーム運営からメールが来ていた。
『ダーウィンズゲーム参加者の中から資格を得られた特別な方のみご参加できる特別イベントのお知らせです』
『↓詳しくはこちらをクリック!』
『https://darwinsgame.com/?a=de41426cfac1ba84fe16f』
虚メールを読み終わると額には冷や汗を掻き腕は麻薬の禁断症状の様に震えていた。
震える手で必死に狙いを定めURLを押す。
すると画面は代わり蛇と宝箱になり中心にはデカデカと【宝探しゲーム】という文字と約三日と四分の一日分のカウントダウンが始まっていた。
「うそ、だろ」
「え、あと三日?」
「マジで?」
全くの予想外の出来事にスマホが手から滑り落ちる。
すると虚は突然体を振動させ額に青筋を浮かべ、血が滲み出そうなほど拳を握ると天井を見上げて吠えた。
「ふ、ふざっっっっけんなぁ‼︎」
「圧倒的に時間が足りねぇ」
「まだ全然能力について理解してねぇんだぞ」
「クッソが!」
一通り吠え終えると焦る気持ちを落ち着かせ三日でどうするかを考える。
(能力の解明より他二つの能力の練度を上げた方がいいかもしんねぇな)
(
(体の動かし方を理解すれば手加減だって上手くできて殺さなくて済むかもなぁ)
少し考え結論を出す。
(ああそうだな、これが今出来る最善策だな)
ポケットに入っていたうまい棒を出し食べながらスマホを拾う。
(クソ、弁当食べる時間が惜しい)
スマホで近くの評価の高いジムを調べる。
(柔道とかじゃなくて蹴りや殴りに特化したほうがいいよなぁ)
(今からやっても技術はそこまで上がらねぇだろうから威力の底上げだな)
(ん?ここの格闘ジム評価たけぇな)
(新宿なら近いしいいかもな)
(料金的にも…大丈夫だな)
(よし、ここにすっか)
調べ終えると虚は残っていたうまい棒を口の中に押し込み財布とスマホを持って家を飛び出した。
すみませんテストと面接で書けんかったのです許してくれよな!
また弁当はお預けです。