虚は憤怒した。
かの邪智暴虐の神を除かなければならぬと決意した。
虚には原作が分からぬ。
虚は大学生であった。
勉学に励み、幾多の山を登って来た。
けれど不愉快に対しては、人一倍に敏感であった。
ーー虚,心の書より抜粋ーー
そんなことを考えながら走っているといつのまにか虚はジムに前に立っていた。
「おっとここだよなぁ」
「っとその前に気持ちを切り替えねぇとな」
両手を頬に打ち心を落ち着ける。
「よし、入るか」
歩みを進め自動ドアを潜る。
受付を手早く済ませ直ぐにサンドバッグに拳を打ち付け始めた。
運動しながら何を鍛えるかを考える。
するとふとしてみたいことが頭に浮かぶ。
(ん?待てよ、今の俺って前世では再現不可だった技とかもできるんじゃね)
(わくわくしてきたなぁオイ)
(なんか参考に出来る漫画とかアニメとかあったか?)
打ち付けるのを止めて獰猛な笑みを浮かべながら頭を捻る。
(格闘技ですぐ思いつくのは北斗の拳系列だが…)
(北斗神拳は秘孔とかわかんねぇし他の技は全力で拳を振ればそれっぽく爆散するだろうしどうすっかな)
(あ、南斗聖拳ならそれっぽいのできるかもしれねぇ!光の速度で手刀を
(まあ、切り口はスッパリとしたもんじゃなく潰し切りみたいになりそうだけど…)
(しかもこの技使えば高い確率で即死するな…やめるか?……いや、でも練習するのはいいよな万が一があるかもしんねぇしな)
(決して自分が使ってみたいとかとかじゃなくて不測の事態に備えてだよ、うんそうだよ)
(他だと…虚刀流とかFateの八極拳、リリカルなのはvividあたりか)
(虚刀流はまあ速度に物を言わせればそれっぽいのはできるかもしんねぇし、八極拳はそれ専門の道場にでも行って基礎を学ぶとこからだな圏境は
(だが…vividは魔力がこの世界に無いから型の練習だけってとこか)
(しっかしなんか出来るかもしれねぇ未来が見えてきたなぁ)
実現可能な未来を想像して声をころして笑ってしまう。
(まあでもこんなとこで能力使うわけにもいかんしここで出来んのは普通に筋トレと自分に合うように型を調節するぐらいか……)
(だが普通に筋トレするなら誰かに効果的な方法を聞いた方がいいかもな)
辺りを見回し職員らしき人を探す。
するとふと一人の男性に目が止まる。
その男性は金髪のポンパドールヘアで柔道着の両袖を引きちぎったような蛮族ファッションをしていた。
確かに頭のおかしい着方だと思ったが虚の目に止まったのは他のところである。
それは服の上からでも分かる鋭く引き締まった体と幾つもの戦争を生き延びてきた歴戦の戦士の眼光である。
(旧神に会った時との重圧比べればその辺の石ころぐらいにかけ離れているがこの世界に転生してからは一番重いな)
虚はスタスタと軽い足取りで近づいてゆく。
後ろから肩を叩き話しかける。
「少しーー」
するといきなり男性は虚の顔面に目がけて裏拳を放ってきた。
少し驚くがすぐさま裏拳に手を添えて逸らしながら上半身を傾けて避ける。
「ーーっとあっぶねぇ」
間一髪で避け後ろに飛んで距離を取る。
どうしていきなり攻撃されたのか疑問に思い文句の一つでも言ってやろうと視線を向ける。
するとそこには警戒心MAXの目を虚に向けた男性がいた。
空気がひりつきナイフを向けられているような鋭い視線に虚は困惑する。
「えーと、なんか誤解してない?」
気を抜けば飛びかかってきそうな雰囲気に虚は耐えきれず男性に問う。
すると虚に話の流れを無視した答えが返ってくる。
「お前何者ダ」
その言葉に虚は面食らいながら苦笑し、心の中で同意を示した。
▶︎▶︎▶︎
ダンジョウは警戒していた。
確かに気を抜いていた。
けれどそれは
幾つもの修羅場を越えてきたダンジョウにとって背後を取られるのは即ち死を意味するものだった。
だからそれが出来るのは自分より実力のある者だと思った。
警備員やボディーガード時代の復讐又はDゲーム関連の暗殺、敵の出処には困らなかった。
けれど目の前の男はどうにも殺意というものが感じられなかった。
(誤解?どういうことだ?やはり敵ではないのか?)
(だが私の裏拳を避けたということは実力は確かにある)
(ならば普通の奴ではないだろう)
「お前は何者ダ」
自分と同じかそれ以上実力が有ると感じ只者では無いだろうと疑問を投げかける。
すると男は苦笑しながら答えた。
「初めてこのジムに来て身体を鍛えに来た者だよ」
「なぜ私に声をかけタ?」
「あんたが凄い筋肉持ってたから鍛え方を聞こうと思って」
話したところ嘘では無さそうに感じ,少し警戒を緩める。
「そうだったのカ」
「いきなり殴ってしまってすまナイ」
「私で良ければ教えヨウ」
相手の力量を見極める目的も込めて握手をしようと手を出して謝る。
「まあ、当たらなかったしいいよ」
そして男はそれを握りながらあっけらかんと言い放った。
蹴られそうになったのにも関わらず気にもしない態度に心配になったが、握手をした瞬間考えていたそれらはすべて吹き飛んでしまった。
それは完成や完璧の見えない肉体だった。
正確に言えば今の肉体でも十二分に完成されていると頭では判断しているのだが、第六感というべきものがまだ上があると訴えているのだ。
得体が知れない強者の出現に口元がほころぶ。
「ところで名前はなんと言うんダ?」
「日之影虚だ」
「あんたは?」
「ダンジョウと呼んでクレ」
ダンジョウは自分の全てを振り絞っても底を見れるかわからないほどの強者との出会いに歓喜するとともに、教えられる事が有るか不安に思った。
次は多分イベント入るよ!