演算演算演算…塩酸?   作:檜山俊彦

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幕間って…難しいですね…


幕間 時過ぎて、彼方から此方へ異なる虹に

 

 

 

 

 

USJで(ヴィラン)の襲撃を受け、撃退した。

捜査の邪魔にならないよう言い渡された教室待機が終わってすぐ、俺はリカバリーガールのもとを訪ねた。

 

 

 

 

 

「リカバリーガール。梓澤の様子は…」

 

 

「見ての通り、ぐっすりさね。」

 

 

そう言う彼女の視線の先で梓澤がベッドに横たわっていた。

聞かねばならないことを、聞いた。

 

 

「…損耗率は、どうなってますか。」

 

 

室内を暫しの間沈黙が支配した。

 

 

「今の時点で12%。もう日常生活に支障のある障害が出始める頃さね。」

 

 

「具体的には…?」

 

 

「わたしにもまだ分からない。この子が自分で気づくしかないだろうね…ただ、自覚にそう時間はかからないだろうね。」

 

 

「そう、ですか…」

 

 

「事情が事情だったとはいえ…任された患者に無理させるなんて、わたしも耄碌したね…」

 

 

その言葉に俺は何も返せなかった。

改めて、梓澤の姿を見る。

 

 

灰色の髪と、今は閉じていて見えない紫水晶(アメジスト)の如き目。そんなコイツと俺の出会いは、3年前まで遡る。

 

 

 

 

 

3年前、俺が中一の冬。

 

 

クソ親父が引き合わせたのが初対面だった。

何故かその時既に婚約まで話が進んでおり、それを聞いた梓澤が辟易とした顔をしていて、そこで俺が話しかけてからの付き合いになる。

 

 

梓澤本人の希望で元々通っていた学校に続けて通学するために、クソ親父から金を引き出して元の家に住むまでの間に姉さんや夏雄(にい)と仲良くなっていた。

 

 

当時の俺からすれば“いつも眠そうにしてるやつ”という認識だったが向こうはどう思っていたのだろう。

聞いた事がないから分からないが。

 

 

 

 

 

そこまで考えたところでリカバリーガールに声をかけてから部屋を出た。下の階にある保健室ではオールマイトと緑谷が治療中らしい。梓澤を2人から隔離したかったのか、それとも…

 

 

そこで考えを打ち切る。その事について考えてもしょうがない。

 

 

しかし、今回の一件ではっきりした。

認めたくは無いが、クソ親父が梓澤を籠の鳥にしようとしたのは梓澤の命を守るという観点では正解だった。

 

 

もうこれ以上、梓澤に越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)は使わせられない。

 

 

あの黄金の瞳は、いずれ、梓澤(アイツ)の命を燃やし尽くす。

 

 

 

でも、それでも止まらないんだろうな、アイツは。

 

 

 

 

 

 

前に「なんでヒーローになりたいのか」。そう聞いた時、梓澤はこんな話をしていた。

 

 

 

「ときに轟、生存者罪積感(サバイバーズギルト)って知ってるかい?」

 

 

「いや、初めて聞いた。」

 

 

「そうかそうか、ならば私が教えてしんぜよう。

…周りの人が死んでいく中、自分だけ生き残って“何故生き残ってしまったのか”って罪悪感を覚える精神疾患の事だね。」

 

 

話の流れ、そして今の言葉と梓澤の表情。

これだけ揃って察せない筈もなかった。

 

 

「お前も…そうなのか?」

 

 

「自覚したのは君を庇って(ヴィラン)と戦った時だね。今でも思うが私の命は物事の優先順位において最後尾に位置してる。異常なのは分かってるけど、それでもやめられない辺り、“性”、なんだろうね。私の。」

 

 

そう話す梓澤の顔はさも当然かのように淡々としていた。

 

 

抑揚もない。機械然とすらしている。

 

 

「じゃ、また今度。」そう言って帰っていく梓澤に声を掛ける事もできず、また、アイツが何を考えていたのか、それを聞く事も、出来なかった。

 

 

 

 

 

荷物を纏めて、教室まで戻ってきた。ふと窓の外を見つめる。

これから夏に近づくにつれて日が出る時間は長くなる。

でもまだ冬から抜けきらぬ春の今はこの時間に夕暮れが見える。

その光景に目を細めて、1つ思い出した事があった。

 

 

 

 

 

「轟、私の“個性”、どう思う?」

 

 

「どう…?強え個性だとは思うが…」

 

 

「いや、そうじゃ………やっぱりやめた。この話はナシにしよう。……冬美さん!夕飯作るの手伝います!」

 

 

 

梓澤、お前は、何を言いたかったんだ?

今でも俺には分からないままだ。

 

 

 

 

 

 

校舎を出て最寄り駅で電車で乗った。

席に座り、帰る間に日は沈みきっていた。

 

 

梓澤の“眼”の秘密をクソ親父に知らされた日…珍しく早く帰ってきたアイツは居間に俺を呼び出した。

 

 

入学式の日、唐突に行われた“個性把握テスト”。

梓澤は俺を抑えて2位。

 

 

でも、『調律』を、そうでなくても“眼”を使っていれば1位になっていた筈だと、俺は梓澤に言った。

 

 

そうじゃなかった。

梓澤はまだ制御できないと言っていた。

半分正解で、半分間違いだった。

 

 

クソ親父が話した梓澤の“個性”の詳細を聞いて、俺は愕然とした。

 

 

「梓澤は…知ってんのか?この事を。」

 

 

「知らない訳がないだろう。自らの身体だぞ。本人が最も理解していて当然だろう。医者への診療費も俺が出している。だから言ったのだ。“ヒーローになるなぞやめておけ”、と。」

 

 

「だとしても、梓澤を籠の鳥にしていい訳ねぇだろ!」

 

 

「あの“個性”は!俺とて“託された”のだ!焦凍!奴に心を砕く暇があるのなら修練をしていろ!お前にはオールマイトを越える義務があるんだぞ!」

 

 

「お前の言いなりにはならねぇ!」

 

 

そのまま襖を開いて居間から出た。

俺はだれに対して怒りを顕にしているのか分からなかった。

 

 

クソ親父に対する憎悪なのか、それとも梓澤への別の“ナニカ”なのか。

結局、分からなかった。

 

 

 

 

 

そして今日も、俺はこの家に帰る。

明日は臨時休校になった。雄英への(ヴィラン)襲撃など前代未聞。無理もない。

 

 

先程メッセージアプリからの通知で、梓澤が目を覚ました事はわかった。

 

 

 

 

 

梓澤は恐らくこれからも、“誰かのためにならねば”と進み続けるのだと思う。

その隣に果たして俺はいるのだろうか?

 

 





む、難しい…轟の口調ってこれで合ってますかね…?

幕間は話数カウントはしませんが…どうだったでしょうか?

不穏(にしたつもり)な今回は轟目線での幕間でした。
今後の展開の伏線を貼り付けましたので期待はそこまでせずにお待ちいただけると幸いです。


リカバリーガール、エンデヴァー、焦凍の知る梓の個性の秘密。一体何なんだ…!?(すっとぼけ)


次回からは体育祭編に入りたいと思います。


最後に、ご精読ありがとうございました。
よろしければ評価、感想よろしくお願いします。
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